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後に伝説となる英雄たち  作者: 航柊
第1章 出会い編
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第十三幕 騒がしい日々

やっと暇になりました。


______魔法演習場


「何を感傷に浸っている。構えろ、貴様に休むは暇などない。貴様の剣技、私に見せてみろ。」



アシュレイがレギに剣を向ける。そして常に纏っていたオーラを抑えた。魔力を切ったのだ。

純粋な剣技のみという無言の圧力にレギもまたアルカディアをアシュレイに向ける。対峙するだけで伝わってくるアシュレイの剣気にレギは少し身震いをした。だが深く深呼吸を一つ入れ、技を放つ。


一の型 月蝕


幾千、幾万と振るってきた半月を描く縦切りから突きへの派生。レギの剣術の基礎となる型。


レギの剣術、それは唯一の親の手がかりである指南書に記されていたヒイラギ(柊)流剣術。書には本来刀で扱う技を剣で行使するために生み出された剣術と記述されていた。本来は魔法も同時に使用することで真価を発揮するらしいのだが詳しい方法は記述されていなかった。レギは使い手次第であると解釈している。

レギは続けて


二の型 日蝕

三の型 叢雲

四の型 荒天の相

五の型 鴉

六の型 紅無(くない)


と習得済の型を渾身の力を持ってアシュレイにぶつけていく。だがアシュレイはそれを一つ一つ丁寧かつ完璧に受け流す。


「悪くない。次は貴様が受けてみろ。」


レギの剣を全て受け切り、一転してアシュレイから仕掛ける。


レギはアシュレイの剣を完璧とまではいかないが受け切ってみせた。そしてそのまま2人は言葉も無くただ剣を交える。

初めて見るアシュレイの剣技を受けながらレギはそれに見蕩れていた。

剣を振り続けてきたレギに分かってしまう。この剣技を身に付けるためにアシュレイがどれだけの研鑽を積み重ねてきたのかが。

レギはアシュレイと撃ち合う剣戟の最中に確かな高揚と更なる高みへ至れるという確信を得ていた。


アシュレイもまた魔力を切っているとはいえ自らの剣と撃ち合えるレギに僅かながらに頬を緩める。


「すげえじゃねえか。あいつ。魔力無しとはいえアシュレイの剣とまともに撃ち合ってるぜ」


「むぅぅ このままだと後輩がアシュレイに取られてしまうではないか!先輩として我の威厳を見してやらねばな!」


シェイドとメルヴィがそれぞれ口にする。


「ふふ、アシュレイと撃ち合えることがどれだけ凄いのかレギは理解していないだろうね。


メルヴィ?この部屋は壊さないように頼むよ?」


メルヴィの一言に頭痛がするアルフェニスだったが

レギとアシュレイの剣をぶつけ合う音を聴きながら

未来に想いを馳せていた。


「多少楽しめた礼だ。力の一端を見せてやろう。」


その一言にレギはさらに剣を強く握った。


"我が名において命ずる 来たれ 夜闇の蝶 その名はノート 我が身、我が剣に宿り 全てを黒に染め上げろ"


【ノワール グラディウス】


アシュレイの詠唱と共に黒い蝶たちが現れる。

そしてその蝶は徐々に形を成し黒い羽根の妖精となった。その妖精はアシュレイにキスをすると再び蝶になりアシュレイを包み込む。

美しい銀の輝きを放っていたアシュレイの剣が漆黒の闇に染まる、そしてアシュレイも黒を基調とした戦闘衣(バトルクロス)に換装していた。


凄まじい魔力のようなプレッシャーのようなものがレギを襲う。レギにはそれがどういうものなのか理解することすら叶わなかった。それ程までの常軌を逸した力を対峙するアシュレイからレギは感じていた。


そしてアシュレイはその場でそっと剣を振るった。

先程までの剣戟とは比較にならないほどゆっくりと。

距離は離れている。...はずだったがその瞬間レギの第六感が最大級の警告を発しレギはほぼ反射に近い形で防御の形をとった。


アシュレイが剣を振り下ろす瞬間に空間がねじ曲がり気がつけばアシュレイの剣がレギの目前に迫っていた。


レギが防御していなかったらアシュレイの剣は間違いなくレギを切り裂いていた。その事実にレギは身体から汗が吹き出す。何が起きたのかも理解が出来ていない。


「私の剣は空間を超越する。間合いは意味を持たない。これが能力の一つ "次元超越斬(シュライデン)"」


アシュレイがそう説明するが当然言葉としては分かっても到底レギの理解が及ばない魔法であった。


「闇精霊魔法 【ノワール グラディウス】


魔力の少ないアシュレイが導き出した答えの一つ。

魔力が足りないのなら友から借りればいい。

アシュレイ・ブラックは精霊"ノート"と契約し、共に末席から今に至った。レギ君、精霊魔法は君に示せる道の一つだ。あくまで精霊の魔力を借りるだけでメルヴィが言っていた魔法力を上げる方法とはまた違うよ。それはまだ教えられないからね。」


呆気に取られるレギにアルフェニスが説明してくれた。


「精霊魔法は道の一つにすぎん。選ぶかどうかは貴様次第だ。」


魔法を解き、ノートと呼ばれた精霊を肩に乗せたアシュレイがそう言い放つ。


「とても洗練された美しい魔法でした...。それだけしか分からなかったですけど...。」


レギはなんとか口を開いてそう答える。


「未知の魔法などそういうものだぞ後輩。

お前の知らないものがここには溢れている。だが安心しろ、気がついていないだろうがお前は今の魔法をみて自然と笑っている。お前は強くなれるぞ。」


メルヴィがどこか嬉しそうにそう言う。


レギは無意識に笑みをこぼしていたらしい。


「さて次は俺の番かな。おいレギ、今から俺がお前に攻撃し続ける。もちろん威力は抑えてやるよ、一度でも俺の攻撃を防げたら今日のとこは終わりだ。」


「む!ずるいぞ!次は我の威厳を見せるはずだったのに!」


「お前の後だとレギ動けないだろ...多分。」


「むむ?そんなことないぞ? 多分。」


そんなシェイドとメルヴィのやり取りに若干の不安と恐怖を覚えつつもレギは再び笑みがこぼれていた。

触れることすら叶わない強者たちが目の前にいる。

そんな強者たちが才能のない自分を後継者と言い修行をつけてくれると言うのだ。

レギは今一度決意を新たにする。


「先輩方、未熟な自分ですが指導のほどよろしくお願いします。我が剣に誓います、強くなると。手加減は要りません。人より劣っているなら人より積み重ねるしかないので。」


そのレギの一言に三人の強者たちは笑った。


だが手加減はいらないと言ったのをレギはすぐその後多少後悔することになる。


影魔法を駆使するシェイドに翻弄され続けなんとか一撃防げたのが数時間後。ほぼ情けに近い形であった。

そして数時間も待たされ、我慢の限界が近かったであろうメルヴィが披露した


闇より暗き双頭蛇(ザ・ハーク)


という魔法は魔法演習場を半壊させるとんでもない威力でありレギはひっくり返ってしまった。

アルフェニスは危惧通りに破壊された演習場を泣く泣く修復していた。


「お前の出番は次の魔導聖誕祭、通称魔導大祭だ。それまでに我々が貴様を叩き上げる。死なぬよう努力することだ。」


アシュレイの一言をレギは噛み締める。


指一本動かせなくなったレギの元にアルフェニスに呼ばれたノーチェが現れた。


「は〜い 癒し系お姉さんの登場よ〜。初日から随分ボロボロね。けど安心して、お姉さんが全部治してあげる。」


"治癒の園 慈愛の棘 かの傷を吸い花開け"


【セレフィア ローズ】


ノーチェは詠唱とともにレギの胸に薔薇の蕾を刺した。そして


「その薔薇はあなたの疲労や傷を養分として育つわ。五分ぐらいして花が咲いたら抜いて動いていいわよ。それまで安静にしてなさい。」


レギが礼を言うとウインクをしてノーチェはアルフェニスとメルヴィのほうへ歩いて行って2人に説教を始めていた。

あのメルヴィがシュンとして大人しくノーチェに叱られていたのをみてレギはノーチェを怒らせるのはやめようとそっと心に誓った。


気がついたら薔薇が咲いており身体が動くようになっていた。外を見るとしっかりと日が暮れていた。

そしてアシュレイから寮のレギの部屋にマーキングしてあると伝えられ、ギルドの転移部屋から寮に飛べるという。

去り際に


「明日は午前に図書館の整理、午後は修行だ。」


とアシュレイに告げられギルドを後にした。


部屋に戻ると


「お疲れ様。ギルドは楽しかったかい?」


シンがお茶を淹れて待っていた。


「ああ、とても素晴らしい場所だったよ。」


そう答えお茶を受け取る。


「そういえばアルカディアをアシュレイ先輩に渡してくれたんだろ?ありがとな。」


「君には剣が必要だろ?当たり前のことをしたまでだよ。」


「そうだな。実際に剣を交えたよ、遥かな高みだった。とても手が届きそうにない。」


「そう言う割には嬉しそうだけど?」


シンが笑いながらそう指摘する。


「お前の洞察眼には叶わないな。

シン、俺は強くなるぞ。追いつかなきゃ行けない人達が出来たからな。」


「僕も負けられないよ。"魔導十傑"に名を連ねるのが僕の目標だからね。」


その一言にレギは驚く。


「隠していてごめんね。まだ正式に発表されていないから。」


そう言いながらシンは紋章を取り出す。


「それは...ギルドの。」


「僕は水属性を司るギルド サルドメリクの一員だよ。僕らも君をスカウトする気だったんだ。アルフェニス様に先を越されてしまったけどね。

これからはライバルだ。魔導大祭が楽しみだよ。レギ、改めてよろしく。」


魔導大祭 別名ギルド対抗戦


各ギルドの精鋭たちが魔法を用いて鎬を削る学院が誇る一大行事だ。


「そうかシン、お前もギルドに...。末席なのにずるくね?俺だけ特別感あってやっぱ俺って凄いやつかもとか思ってたのに。」


「ははは、君が凄いのは間違いないよ。僕の姉上も君を認めていたからね。けど僕も君に負けているとは思っていないからね。」


「まあそれもそうか。」


「今年の生徒は異例づくしだと姉上は仰られていた。多分他の生徒にも秘密裏にスカウトがいってると思うよ。当然、君の妹や鋼鉄の氷姫にも。」


それからレギはシンと夜が耽けるまで今日の出来事について話しが弾んでしまった。シンもシンでとんでもない魔導士たちに出会ったらしい。


そして始業までの一週間1日中ギルドに入り浸り仕事と同級生達からのギルドについての質問、それに修行に追われる騒がしい日々を過ごしいよいよ始業式を迎える。






1ヶ月ぶりの更新です。


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