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後に伝説となる英雄たち  作者: 航柊
第3章 魔導士編
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第百八幕 ドキドキ夏休み〜プライベートビーチ編〜part1

お待たせしました



美しい青、燦然と輝く太陽。


白く煌めく砂浜。そう...ここは



「う〜〜〜〜〜〜〜〜みだぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」



陽に映える緋の髪を結い、気合いを入れて選んだ水着を身に纏いう。彼女、エルフィニアが誇るうら若き太陽テレジアは一直線に走り出し、目前に広がる群青へと飛び込んだ。


「あはっ!冷た〜い!!! 気持ちい〜〜〜〜!!!生きてて良かったぁぁぁあ!!!」


そして全てから解放されたが故の、魂の叫びを上げる。


「全く調子のいいやつだぜ。けどま、流石に今日まで大変だったからな!思いっきり遊ばなきゃ損ってやつだ。ってことでウチもいくぜ!!!」


緑を基調とした水着を身に付けヨルハがテレジアの後に続く。


49期生が誇る(笑)元気印の二人である。


______________


時は少々遡り


「プライベートビーチですか?」


「ああ、本来は王族専用なんだけどね。君たちにも"夏休み"ってやつを楽しんで欲しいというわけさ。」


10日間丸々の休暇を告げられての翌日。

リオナたち49期生は王宮に呼ばれていた。


「あは〜!イルドラード様ってば分かってるじゃ〜〜〜ん!夏といえば海だよ海!?


なのにさぁ!なぁんかジメジメした地下に閉じ込められて?何日も何日も頭おかしくなっちゃったよ!そろそろお日様浴びながら海かな〜なんて毎日夢に見るぐらいにはね!?!?」


誰よりも早く地下を踏破したはずなのに結果誰よりも長く地下にいたテレジアの言葉はそれはそれは重みが違っていた。


「はははっ!それはすまなかったねテレジア。だからこそ流した血と涙の数だけ最高のおもてなしを約束しよう。但し全員同時にとなると大変だからね、何組かに分けて貰えると助かるよ。」


______________


そんなこんなで今日を迎える訳だが

今プライベートビーチに居るのは11名の生徒たち。


いつも通りのレギとシン。

そして当然のように兄と一緒じゃなければ嫌だと駄々を捏ねたテレジア。

彼女に巻き込まれる形でヨルハ、リオナ、カレン。


加えて手合わせを重ねたことですっかり意気投合したグランとリンドール。

そしてグランに誘われる形でエイル、ユウリ、ライリ。推しであるテレジアとリオナについて語り合い親睦を深めまくった三人を合わせた計11名だった。


彼ら彼女らは事前に用意した、或いは王宮付きの職人たちによって見繕われた水着に身を包み麗しき青、そして美しい砂浜を堪能すべく太陽の元へと駆け出していた。


______________


「ほほう、実に素晴らしいな。これほどまでに見事な砂浜は中々拝めぬと言うものだ。

それにこの際だからな、我はこのサーフボードとやらに挑んでみるとしよう!おいリンドール、ここはひと勝負といこうではないか!」


やたらと海と砂浜が似合う男、グランは用意されていたサーフボードを小脇に抱え、隣に並ぶリンドールに勝負を仕掛けていた。


「はっ!結果の見え透いた勝負に興味はねえが喧嘩を売られちゃしょうがねえ、やってやるよ。」


売り言葉に買い言葉とはよく言ったもので当然のようにリンドールもまたサーフボードを抱え後に続く。


そんな二人をまるで狩りをするかのごとき目で見詰める者が一人。


「お!お二人さんボードに目を付けるとはお目が高いっすね〜!お姉さんが手とり足とり教えてあげるっすよ!」


騒ぎを聞きつけたデルフィによって二人は瞬く間に拉致られることになる。そして骨の髄までボードの技術を叩き込まれることになるのはまた別のお話。


______________


「ん〜〜引っ掛かったぁ〜助けてハイドラぁ〜〜〜!」


「ヒヒっ...だから言ったでは無いですか。髪を結わうのは着替えが終わってからにしましょうと...。ほら脱がせますよ、バンザイしてくださいお嬢。」


「あは〜ハイドラやっさし〜!」


晴れてテレジアの侍女として皆に周知されたハイドラだがその甘やかしっぷりは目に余る所ではなかった。


「相変わらず慣れねえぜ。けどまぁテレジアなら許せるかってなるのが不思議だよなぁ。」


豪快に服を脱ぎ捨てながらヨルハは笑う。


「なになにヨルハちゃん!私が子供っぽいって言いたいわけ〜?」


そんなヨルハの小言を聞き逃さないテレジアはプク〜っと頬を膨らませて反応を見せる。


「貴様のその顔が答えじゃろうに...。まあそこが貴様の愛いところではあるがのう。」


呆れながらも笑みを浮かべ口を挟むのはワンピース型の水着を見事に着こなすリオナ。


「はわわ...リオナ様の水着姿...美し過ぎ...! 尊死(とうとし)します!!!」


「張り合うわけじゃないけどテレジアも負けてないわよ?にしても改めて見てもスタイルバグってるわね。同じ食堂のもの食べてるはずなのに...。」


ライリとユウリは互いの推しをまじまじと見詰め、自然と感想を口にする。


「...ライリよ悪い気はせぬがそう見詰められると恥ずかしいのじゃ。」


「はっ!申し訳ありませんリオナ様!!! けど本当にお似合いです!!!」


何故か互いに赤面するリオナとライリ。


「あはっ!ありがとユウリちゃん!けどかくいうユウリちゃんも中々良いものをお持ちで...じゅるり。」


「ちょっとテレジア...あまり変な目で見ないでくれる?ま、私も女の子だから褒められて嫌じゃないけどね。」


そしてすっかり仲良くなったテレジアとユウリは軽口を叩いていた。


だがここで本日の主役の登場である。


「はっはっは!好評でなにより。私も紹介した甲斐があったというものだ。」


「...やっぱりさっきのは撤回するわテレジア。これはちょっと見蕩れちゃうわ。」


姿を現したのは長い黒髪をひと房に結い、更にその長身も抜群のスタイルを遺憾無く活かした黒の水着を身に纏うカレン。

その凛々しさと気品すら感じられる佇まいにユウリは思わず言葉を零してしまう。


「カレンはこう見えてお洒落に人一倍敏感じゃからな。だがカレン、盛り上がっておるとこすまぬが水着が少々キツいのじゃ。...調整してくれ。」


だがしかし、主役の登場などなんのその、ここでリオナから予想外の発言が飛び出すことになる。


「なに?そんなはずは無い。まさかリオナ...太ったのか?」


「そんな訳ないじゃろう!キツくなっておるのは...その....胸じゃ。」


「え?」「ん?」「ほーん」「へぇ...」「ま、まさか」


それは年頃の女子たちにとっては聞き捨てならない言葉だった。


「はいストップリオナちゃん。今の発言は流石に聞き捨てなりません!審議入ります!!!」


テレジアが恐らく過去一真剣な顔でリオナに迫る。そして普段はそんなテレジアの行動を諌める皆も今回ばかりはテレジアの味方だった。


「よっしウチが抑えるから今のうちだぜテレジア!」


「がってん承知!テレジアsハンドによる計測いっちゃうよ〜ん! ・・・


.........大きくなってる。しかも形柔らかさ共に100万点。有罪(ギルティ)!これは有罪(ギルティ)!!!」


テレジアの測定結果(笑)を皮切りに鬼気迫る女子トークの幕が上がってしまうのは仕方がないことだろう。



「ふむ...エイル。君の"眼"にはどう写っているか教えて貰うことは出来るかい?」


「カレン様には水着の礼がありますからね。特別ですよ?」


そんな皆の様子を遠巻きに見ていたカレンはエイルの眼をもってその秘密を明かそうとしていた。


「"知恵の(ひとみ) 知識の(まなこ) 果てなき欲をもって 軌跡を写せ 我が双眼" 【見識の魔眼(インサイト)】」


これはこれは...ふふっ。」


「どうした?何が見えたんだ?」


「ありのままのリオナ様が。ふふっ...大丈夫ですよカレン様。リオナ様は健康そのものです...それどころか"あの頃"に比べれば健康過ぎるかもしれません。」


笑いながらその"眼"で見た事実を告げるエイル。


「ふっ...そうか。それは...なによりだ。」


カレンは言葉に詰まる。まるで涙を堪えるかのように...。エイルの言葉はずっとカレンが欲していたものだった。


______________


そう、なんてことはない。当たり前のことだった。


かつてのオーバーワークに明け暮れた少女はもういない。


己を見詰め直し、彼女は独りを捨てた。


友の手を取り、よく話すようになった。


よく食べ、よく寝る。


そう...いつしか彼女は普通の少女になったのだ。


魔法が大好きでちょっぴり言葉足らずだけど

皆に慕われたいと願う、一人の少女に。


そう、簡単なことなのだ。


よく食べてよく寝た....さすれば必然に


彼女の髪はツヤを取り戻し、その肌には色が戻り、流れる血は熱く滾るようになった。


その結果...彼女は育ったのだ。それはもうすくすくと。まるで今までの抑圧から解放されるが如く。


______________


環境が変わればヒトも変わる。

リオナも...私も。


そしてこれからも沢山の出会いと、時には別れも繰り返し...我々は進み続けるのだろう。

平穏とは程遠いかもしれない日々の中で。


だがそれでも...


「願わくばこの"日常"がいつまでも続くように。」


気が付けばカレンはそう呟いていた。その顔に満面の笑みを浮かべながら。


「おいカレン!何を笑っておる!早く助けるのじゃ!!!」


だがこちらが感傷にふけっている中当の本人...リオナはそれどころではないのだから面白い。


「はははっ!胸を大きくする魔法があるなら私もぜひ拝みたいところだ。もう暫くテレジアには調べてもらうとしよう。」


「な!?貴様!あ、後で覚えておくのじゃカレン!!!」


女子トーク及びキャットファイト(笑)にまで発展しかけた彼女らは余りの遅さに様子を見に来たリラに怒られる形で収束することになる。


そうして彼女らは海へと駆け出していく。


今日という日はまだ始まったばかりなのだから。


______________


こうしてまた、新たな一文増えることとなった。


他愛もないものだが英雄譚にありふれた日々というものは付き物だ。


なんでもないような日々が物語を彩っていく。


それこそが、英雄たちがヒトである証なのだから。


"回顧録" 著 カレン・アストリウス






早めの更新です!


久々の日常回です。上手くかけているかは分かりません土下座

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