第九十九話 百折不撓
お待たせしました
神に愛されているからって
神を愛するわけじゃない
魔法を愛していても
魔法に愛されるわけではない
だがそれでも
盲目的な愛ほど深いものは無い
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空気は凍て 界域は軋み 吹雪が舞う。
その激情の中心にあって尚、白銀は優雅に佇み、詠唱を紡ぐ。
「"崩壊可逆 冰典形成 綴り紡がれ 其は詩になる"
前門解錠 其は始まりの一 【冰崩】」
誰が言ったか氷気換発。溢れる才能と魔力は輝きを伴い、収束、固定の過程を経て放たれる。
其はかの"絶冰六秘法"が一。産み出される数多なる冰の鏃にて全てを雪ぎ流す崩壊の魔法。
「あは〜リオナちゃんってば本気も本気じゃ〜ん!...って流石にちょっと不味いかなぁ本気で逃げよっと!
"我は律者 魔を律せし者 我が指は魔を奏で 我が瞳は魔を捉え 我が言葉は魔を綴る"
【魔導律】
ホニィ〜あれやるよ〜準備して〜!」
対するは天真爛漫にして百花繚乱が長。
彼女だけに許された魔法を使い彼女は空を踏み締め、次なる一手を撃つべく精霊へと呼び掛ける。
「はっ!雪崩が如き妾の魔法から本気で逃げられると思ってるおるのか。あまり舐めるでないわ!アイシス!往くぞ!」
だが精霊を宿すは双方同じ。
己が全てをして相手を超えんが為に。
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これまでも、そしてこれからも____
幾度となく、何度でも、二人は火花を散らす。
些細な喧嘩。魔導の試合。その果ての死合い。
そのどれもが世界を魅了し、魔法を彩るものだった。
だからこそヒトはその姿に夢を見る。
果てなき夢を、魔法のその果てを。
称さずとも皆知っているのだ。二人は既に英雄なのだと。
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リオナ、そしてアイシス両名による雪崩と見紛う程の氷雨。精密に制御され緻密に練られた魔法は太陽が陰るまでその追従をやめることは断じて無い____
そのはずだった。
そう、相手はテレジアなのだから。
唯の太陽ではなく太陽なのだ。
その眼はあるがままに"マナ"を捉え
その足はあるがままに"マナ"を踏み締め
その手はあるがままに"マナ"を操る。
故に、かの"絶姫"が記した六秘法が一をもってしても彼女には掠めはすれど決して届かない。
そう、テレジアにとって所詮其れは"紙の上のインク"に過ぎないのだから。
「あはっ!アハハハハッ!!! いいねぇ...やっぱリオナちゃんとの戦いが一番ひりつく、楽しい.....! 最高だよっ!」
マナを踏み締め、空を制し、リオナは翔ける。
それは舞うが如く、踊るが如く。
迫り来る氷の雨を避ける...避け続ける。笑みを浮かべ嗤い声を響かせながら、その全てを紙一重で避けてみせる。
その美しく恐るべき姿に戦慄と衝撃が相対するリオナを襲う。
「はっ!しばらく戦わぬうちに更に化け物っぷりに磨きがかかっておるわ!」
だがそんな心を穿つ想いとは裏腹にリオナは.....
「あら、リオナ。そう言う割にアナタ笑ってるわよ?ふふっ。」
そう。リオナは笑っていた。アイシスが微笑みながらつっこむぐらいには。
アイシスにそう告げられリオナは思わず己の顔をなぞる。
「なるほどのう...。そうか、妾は笑っておるのか。ふははっ!そうじゃな!妾は笑っておるわ!!!」
リオナもまた笑う。笑ってみせた。
たった気持ち一つ、されどそれは想い一つ。
それは心に灯る小さな燈一つ。
されど...「種火があれば火は燃ゆる。」
氷姫は思い出していた。親友の言葉を。
そう、想い一つで魔法は燃ゆるのだ。
「ふははははっ!貴様をくべて、我が火を更に大きくするとしよう!」
リオナが告げた瞬間、言葉にせずともアイシスは主の意を汲み取りリオナの背にまるでマントを羽織る様に覆い被さる...それは纏うが如く。
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魔力を纏う。
それは魔導士ならば誰でもやっている事。
魔導士は己の魔力を纏うことで身体能力の補佐や同色のマナを引き寄せ魔法を補助させるのは最早常識である。
尚某末席は己の魔法力が低過ぎて纏うことが出来ないのは内緒の話。
だがアナスタシアが編み出した【魔法戦闘術】において
【纏う】
とは皮膚の下、そして皮膚の薄皮一枚上に魔力を纏い、絶対の支配下に置くこと。
それは無駄な魔力の放出を抑え、何者にも侵されることの無い絶対領域。
だがその上で、外からのマナは引き込まなければならない。
その矛盾を超えた先にのみアナスタシアが望む景色がある。
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『外を私が。』
『内を妾が。』
意は重なり、体は一つになる。
「「【冰衣】」」
女王が纏う。其は白銀の戦装束。
「待たせたのう...テレジア。」「「今、往くぞ。」」
先程と同じようにリオナが手をかざすと意のままに氷雨が再びテレジアを襲う。
だがその速度、その精度はさっきまでの比では無かった。
「あ〜ちょ!ちょっとタイムっ!いやマジでリオナちゃんエグすぎ〜!!!」
その証拠に、先程までは余裕すら見せていたテレジアは傍から見ても分かるぐらいには必死で氷雨を避けていた。
「ちょっとホニィ!まだかかる!?流石のテレジアちゃんも余りもたないんですけど〜〜〜!!!」
本当の意味でリオナの魔法を紙一重で避け続けるテレジア。
だがテレジアもまた無策でリオナの魔法を避け続けている訳ではない。
そしてリオナもまた、それを理解している。
だからこそ
「仕掛けたのが貴様だけだと思うなよ?」
「えっ!?」
先仕掛けをしたはずのテレジアのお株を奪うリオナの宣言。
そしてリオナは動揺をみせるテレジアを他所に畳み掛けていくのだった。
「"再凍"!甦れ、我が意を宿す雪片よ。」
その詠唱に、マナは呼応し氷雨が通りし軌跡を世界に現出する。
軌跡が写す煌めき、それは正しく...テレジアを覆う"檻"を示していた。
そこまでして初めて、テレジアの額を汗が伝う。その汗は決してこの檻から逃げられない事を理解した証である。
「驕り、余裕、戦いを楽しむその気概。貴様の強さであり漬け込む隙じゃ。
雪崩は全てを薙ぎ、圧縮し、閉ざす。【冰崩】は階梯魔法。今まで貴様に見せたのは第一階梯に過ぎん。
終幕じゃ!
"閉梯 冰束 縮して閉ざせ 【冰結界】」
手のひらを翳し、握り締め...
冷徹なる詩が響き渡り、世界は零度に沈む。
散りばめられた雪片は圧縮され硬く固まっていく。その中心に座していた、日輪を飲み込んで。
「はぁ...はぁ...。これで沈んでくれるならばよいのじゃが.....」
マナの奔流が収まるまでリオナは握り締めた手を緩めることは無かった。
「いくらテレジアちゃんと言えど嵌めれたと思うけどね〜。」
手のひらを緩め掛けたその時、アイシスが不穏な言葉を口走る。
「いや待てアイシス...フラグを建てるでない!」
そう。勝利宣言は本当に良くない。
その瞬間をいつだって悲劇の著者は待っているのだから。
そして待ち侘びていたかのように、その音は、悲劇の序章は高らかに響き渡る。
ピシッッッッと。
碧白の氷が悲鳴をあげるように、ひび割れていく。
罅が広がるその時間はリオナたちにとって一瞬とも永遠ともとれる時間だった。
「ヒヒッ...そんなものでは我が主は止まりまぬ。」
ポツリと、ここまで黙して傍観をきめていたハイドラが呟く。
そして.....時は動き出す。
鼓動にも似た、胎動の音色と共に。
「お待たせ。テレジア。君と僕の合作。とっておきだよ、受け取って。」
瞬間声が響き、焔が舞う。
空高く、炎天の詩を奏でながら。
「あはっ! 賭けには勝てたみた〜い!
けど酷いよリオナちゃ〜ん、乙女の柔肌を氷漬けにするなんてさ〜!」
嘲り、逆撫でるような声と共に、美しき氷から飛び出すのは焔を纏った腕。
まるで火花が散るような音を鳴らしながらその焔は少しずつ身を侵す氷を剥いでいく。
「痛いな〜冷たいなぁ.....。けどこんなもの効かな〜い!」
「っっっつ!」
完全に氷から抜け出し、姿を晒す其れに、リオナは言葉にならざる言葉を吐く他なかった。
「ヒヒッ...そう。そんな痛みでは、彼女は既に止まらない。」
その姿を視て...ハイドラは嗤い、告げていた。
其れは無惨にも爛れていた。
其れは震える程に凍てついていた。
其れは痛々しく焼けていた。
凍りついたのを無理やり溶かし、焼き爛れた肌。そして凍てついた身体は焔によって動かされ血に染っていた。
だがそれでも、彼女は美しかった。
「リオナちゃんのさぁ、秘策。私分かってたんだよねぇ。」
そう言いながらテレジアは己の両目の下を軽く叩き、更に言葉を畳み掛ける。
「あはっ!だってわたしぃ、視えてるからさぁ。
けどリオナちゃんのさ...その顔が観たくて、わざと受けてみたってわけ。
まぁ全部受け切れるかどうかは賭けだったけどね?...あははっ!少しは驚いてくれたみたいでよかった〜。」
針は既に振り切れている。ハイドラという師を経て、ハイドラから与えられた死を経て、己が全てをぶつける事の出来る親友を経て。 怪物は既に成っている。
「あ、この焔が気になる?いいでしょ〜便利なんだよ〜これ。」
テレジアはそっと焔を手のひらに乗せ、傷にかざす。先程までその肌を焼いていた焔は裏返り、跡形もなくその傷を癒してみせる。
【罪穢の浄焔】
焔の反転魔法にしてテレジアだけの魔法。
其れは純粋精霊たるホニィが司る白焔とテレジアの兄がために燃ゆる黒焔。相反する焔をぶつけ合い、生まれた歪な聖焔。
「リオナちゃんの【秘法】を観た日からずっと考えてたんだよ?リオナちゃんを倒す事だけを考えてずっっっっとね。」
新たな魔法を創出する程の、リオナへの執念に等しい愛。
そう。兄から離れ、行き場を無くしたテレジアの愛は今、リオナへと向かっていた。
「ほら...リオナちゃんの為の魔法だよ〜?あはっ!笑ってよ、リオナちゃ〜ん!」
リオナがありとあらゆる手を使って並ぼうとするならば...テレジアは悉くを受け止め、その全てを凌駕する。
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テレジアの本質を改めて目の当たりにし、アナスタシアは呟く。
「超克、或いは屈服の天才。そして愛に飢える獣。ヒトの本質に基づいた合理的な才能の使い方ね。アナタが気にいる訳だわハイドラ。」
「ヒヒッ...良く言えば究極の負けず嫌いですよ我が主は。そしてかの往く道は王道ではなく覇道です。」
そこに惚れ込んだ、魅せられたのだと。
ハイドラの言葉からアナスタシアはそれを理解する。
「まぁけどこの場合...重要なのは勝者じゃないわ。
敗者、貴女は確かに強くなったわ。けれどその上で、かの秘法をもってしてそれでも尚、届かなった。
さぁ...どうする?」
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妾は魔法を愛しておる。
そう...誰よりも.....そう、思っておった。
だがそれは違った。その事実に気が付きたくないとずっと目を逸らしておった。奴を認めたふりをして自らに言い聞かせておった。
そうじゃ...出会ったあの日から今日この時まで、そしてこの先もずっと。
妾の前には...妾の先には...いつだってテレジアがいるのじゃ。
苦しい。 諦めてしまいたい。負けを認めてしまいたい。どれほど胸をよぎっただろうか。
だがその度にあの馬鹿の笑顔が、無邪気に妾に向けられるその手が、それを阻んでくる。
そして何より...負けたくないのだ。
どうしようもなく、妾の方が魔法を愛しているのだと叫びたい。
あの馬鹿の言葉を借りるならば理屈では無いのじゃ。その為ならば...妾は何度でも立ち上がる。
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今日も負け。差は縮まるばかりか広がっているとすら感じる。
けれどまぁ...相も変わらずこの身はやる気に満ちておるのだから困ったものじゃ。
「はっ...!妾はドMなのかもしれぬな。」
それが自虐であろうとなかろうと...無様な敗北の汚泥に塗れて尚、リオナは再び笑ってみせた。
何度でも。これまでも、そしてこれからも。
幾度の敗北を経ても、彼女は笑うのだろう。
その度に思い知らされて...思い出すのだ。
魔法の怖さを。その美しさを。
そしてリオナは立ち上がる。
そう...幾度でも。
そしてふと、心に空いた穴に浮かぶ者が一人。
「そうか...彼奴も.....。なるほどのう。」
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『あはっ、そうだよ。立つんだよリオナちゃんは。まぁそーいう意味だとヨルハちゃんは惜しいよねぇ...まだちょっと弱過ぎる以外は。
叩けば折れる有象無象なんかと違って立ってさ。立ち向かって来てくれる...まるでお兄ちゃんみたいに。才能に絶望しないでくれる。
嗚呼...リオナちゃんっ!ほんっとに好き...大好き...愛して.....って違う違う。危ない危ないトキメキかけちゃったじゃんもう!』
女王もまた、幾度でも笑う。
そうなのだ。立ち上がり、笑ってみせる者のみが女王への謁見を許される。ただ、それだけのこと。
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瞬間、世界は産声をあげる。
其れは白銀が意志を示した証。揺るがぬ意志を持って女王へと挑まんとする証明だった。
もたらされるは天恵、与えられるは【才獲】。その名は
【百死不撓】
「これ、は.....。そうかこれが...。」
リオナは初めて得る感覚に浸っていた。
それと同時にマナに刻まれた能力が流れ込んでくる。
「あらあらまぁなんか変なの貰ったわねリオナ。」
「...ふははっ!なるほどのう...良いではないかアイシス。今の妾にはこれが丁度いい。」
そんなリオナの前に...テレジアが降り立つ。
そして告げるのはたった一言。
「あは〜やっとだねリオナちゃん。やっとお兄ちゃんに...追いついた。」
その言葉を...リオナは受け止めていた。
否定も反論もなく、ただしっかりと。
知ってはいた。聞いてもいた。
だがその意味を真に理解したのは今日が初めてだった。
そうだ、望もうが望むまいがレギは生まれながらに太陽の横に在ったのだ。
その羽は既に焼け落ち、その身を陽光に焦がして尚、レギは手を伸ばしている。今この瞬間も。
そんなリオナの心境を知ってか知らずか構わずテレジアは語り続ける。
「凄いよ〜お兄ちゃんは。リオナちゃんなんて目じゃないくらいボッコボコにしてるのにさ。ずぅぅぅぅっと諦めない。」
言葉を紡ぐテレジアは嬉しそうに舞い、時に悲しそうに俯く。けれどその言葉は途切れない。
「皆はね...まだ分かってないの。私の前に、立ち続けるってことがどういうことなのか。
あははっ。 そう、だから教えてあげなきゃいけない。今のリオナちゃんやいつかのセガル君、ヨルハちゃんみたいに。」
その顔に浮かぶは憐憫、或いは嘲笑か...はたまた悲哀なのか。
「そこから立ち上がれないヒトなんて兄妹はいらな〜い。分かる?リオナちゃん。魔導士に一番大事なのは魔法力でも魔力操作でもないんだよ。大事なのは揺るぎない心。魂の在り方ってお兄ちゃんは言ってたかな。ま、リオナちゃんはその辺心配してないけどね。私こう見えてリオナちゃんのこと大好きまし信頼してるからね〜!」
喜怒哀楽をコロコロ変えながらも最後はとびきりの笑顔で締め括るテレジア。
そんな二人の喧嘩...もといじゃれ合いを見守っていたのはアナスタシアとハイドラ。
「答えを獲たようねリオナ。【才獲】まで手にするのは驚いたけど...。」
「ヒヒッ...リオナ様ならば当然のこと。私はそれを導いた我が主に感服いたしました。」
アナスタシアは微笑みハイドラは恍惚の表情を浮かべ、互いに弟子の元へと歩み寄る。
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「ふふっ...見事なやられっぷりだったわよリオナ。やっぱアナタ、シルフィの娘ね。」
「嫌味にしか聴こえぬがまぁ本当のことだしのう...甘んじて受け入れるのじゃ。」
「あら、褒めてるのよ?
シルフィと一緒。.....ここから強くなるわ。」
優しく頭を撫でながら、アナスタシアは告げる。
言葉を発する事無く、珍しくしおらしくなったリオナがそれを受け入れていたのは言うまでもないだろう。
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「むぅぅぅ...なんかズルいなぁリオナちゃん。」
そんなリオナの様子をどこか羨ましそうに眺めるテレジア。
そしてそれを見逃しては...従者は名乗れない。音も無く近付き、主が願いを叶えるのだ。
「私では不満かもしれませぬが...どうか今はお嬢に安らぎを。」
その掌に清き輝き、【聖浄】を宿しながらハイドラは静かに、そして優しくテレジアの頭を撫でる。
その手から伝わる温もりは不思議とテレジアの心を潤していく。
「あはっ...へんなの。」
「ヒヒッ...嫌でしたか?」
「ううん。違うの、おかしいよね。なんか懐かしい感じがする...気がするの。胸がぽかぽかするっていうか?」
「ヒヒッ...気の所為でしょう。けれどお嬢が望めばいつでも撫でて差し上げますよ。」
「気の所為か〜うん、気の所為か。ま、そーゆうことにしとこっかな!
あはっ、そうだね〜ホントはお兄ちゃんに撫でて欲しいところだけどハイドラで我慢してあげるっ!じゃあついでに膝枕もして!痛いところ全部治して〜〜〜!」
「ヒヒッ...仰せのままに。テレジアお嬢様。」
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ほんの少しだけ、時は流れる。
「さて、まあさっきの戦いで大体二人の成長は見せてもらったわ。
アナタたちは強い。その歳でよくぞここまでって褒めてあげたいくらい。
.....けどまだダメ。その程度じゃ足りないの。
私たちが歩んできた道をアナタたちには走り抜けて貰わないといけないからね。
全て叩き込んであげる。ついてこれるかしら?」
「聞かれるまでもない。」
「あはっ!当たり前じゃ〜ん!」
「ふふっいい返事。これから先...アナタたちには無限に等しい道があるわ。どの道を選ぶのもアナタたちの自由。
けど一つだけ、これだけは守りなさい。
必ず"二人で"辿り着くこと。」
「ヒヒッ...けれど足並みを揃えろ...という訳ではありませぬので誤解なきよう。
離されても、追い付きしがみつくのです。
競い合い、蹴落とし合いながらも...その果てに辿り着くのです。その頂きは新たな魔導の境地に繋がっていることでしょう。」
それは紛れもない"次"への願い。
託す者たちの、想い。
「あは〜私は別に一人でも辿り着けると思ってるけど〜リオナちゃんがどうしてもって言うなら〜仕方ないかなぁ〜!」
想いなど、とうに決まっている。だがそれでもテレジアはリオナを煽るのだ。
「はっ!そんなもの決まっておるわ!妾は全てを手にして頂きへ至ると誓った。その隣に、この馬鹿はいる。それだけじゃ。
それに一つ違うぞ姉上。妾たちは"皆"で頂きへと至る。その上で、頂きの上に立つ者を決めると誓っておるからのう。」
リオナは共に在るべき仲間たちの顔を思い浮かべながら、高らかに宣言してみせる。
「ふふっ正解よ。よろしい!今日この時から私とハイドラで最速で叩き込んでいくわ!
それに....丁度たった今、この迷宮に新たな挑戦者が来たみたいよ。アナタたちのよく知る子がね!そこでアナタたち二人にはここ最深部の階層主として、その子たちの前に立ち塞がってもらうわ。何か質問はある?」
そんなリオナを見てアナスタシアもまた高らかに宣言する。
「はっ!要は誰が相手であろうと強くなれば良いのじゃろう?」
「あは〜そうだねリオナちゃん。誰が来たって負けないよっ!!!」
そんな話を聞いて、二人が滾らないわけが無い。その身に更なるやる気と魔力を漲らせ、二人の魔導姫は産声をあげる。
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『あは〜やっぱり...。感じるよ、お兄ちゃん。待ってるね...とびっきりの愛で、迎えてあげる。』
会えない時間が、愛をより一層深くする。
そう、それだけで彼女は...更に深く、果てなき魔導の深淵へと堕ちていくのだ。
いやー遂に始まりましたねダンまち5期。本当にありがとうございます。
最近再びアニメ熱が再燃してロシデレと負けヒロイン観てそのまま原作買わせて頂きました。おすすめです。