第十幕 ギルドからの使者
7話冒頭かなり加筆しました。
まだ手慣れなくて加筆ばっかになると思いますがすみません。
--2日目の朝
レギが目を覚ます。元々日課の素振りのために早朝に起きることがほとんどのレギだったが昨日の夜の疲れか目が覚めた時には日が昇っていた。それに夢を見なかったのも久しい。いつになく素晴らしい朝だった。
朝食までまだ時間があったため制服に身を包みいつも通り剣を取り中庭に出た。シンも誘おうと思ったが気持ちよさそうに眠っていたため今回はやめておいた。
情景を思い浮かべながら指南書にある十五の型を一つずつ丁寧に試していく。一通りの型を終え瞑想する。少しして人の気配を感じで目を開けるとカレンを連れたリオナが歩いてきた。
リオナとカレンはこちらに気がつくと
「はっ 末席も朝から鍛錬か、よい心がけではないか。ちょうどよい、妾の魔法の的となる栄誉をくれてやってもよいぞ?」
「許可なく人に魔法を向けることは校則で禁止されているだろまったく。すまないなレギ、瞑想の邪魔をしてしまって。」
昨日のことからすっかり砕けた口調になったカレンが謝ってきた。
「早くも姫様の悪口には慣れたさ、気にしてないよ。それよりお前らも鍛錬か?」
俺は早くもリオナという人柄に慣れ始めていた。そういう性格だと知ってしまえば案外やりやすいものだった。
「ああ、王宮にいる頃から日課でな。だが昨日のせいで少し寝不足だ。」
「初日からはしゃぎおってまったく。それよりレギ、貴様の妹は一体どうなっておるのじゃ!あやつ妾の部屋を荒らしに荒らしていきおったぞ。呼び止めたのをあれほど後悔することになろうとは...。」
どうやら昨日リオナに捕まったはずのテレジアは逆にリオナの部屋で色々やらかしていたらしい。流石のレギもリオナに同情した。
「お前のことを気に入ってるってことで許してやってくれ。あいつに悪気は無いはず...だ。」
「あれが妾に次ぐ次席だととても信じられん。」
「馬鹿と天才は紙一重って言うだろ?それだよ...。それよりもお前たちの鍛錬見ていっていいか?何も邪魔しないからさ。」
「私は構わないが...。」
カレンがリオナに視線をやる。
「別に構わぬ。どうせ貴様では真似出来ぬしな。少し離れておれ。」
そう言いながらリオナは【フリーズ】を用いて氷の華を作り出す。そしてその華たちがリオナの周りを舞い、リオナも剣を片手に舞い始めた。
それはとても幻想的な光景だった。リオナは集中するために目を閉じている。単純な魔法の発動ではなく発動後の魔法を自在に操作する、これは高い技術とそれなりの魔力消費を伴う。しかもリオナはそれを複合魔法をもって行っている。
「美しいだろう。あれがリオナの舞だ。さて、レギとリオナの戦いを見て昂ったのは私も同じ、どうか見てくれるかい?」
そう言いカレンも【フレア】で炎の華を作り出し腰の剣をそっと抜き、舞い始めた。
リオナと違い単一属性の魔法ではあるが舞いながらも周りの炎の華は決して崩れることは無い。
氷と炎の舞い、二人の動きは徐々にシンクロしいつしか鏡に写したような完全な対となっていた。あまりの美しさにレギは言葉を無くす。
魔法力の少なさ故設置型魔法に頼るレギはNo.1とNo.3の実力を改めて見せつけられた。しばらくその光景に目を奪われていたら気づけば隣にシンが立っていた。
「凄いね。あれがエルフィニア王家とアストリウス家に代々伝わる舞か。噂には聞いてたけどそれ以上の美しさだ。」
「シンか。お前も剣を振りに?」
「そうだよ。おはよう、レギ。別に起こしてくれてもよかったのに。」
「お前があまりに気持ちよさそうに寝てたからな。」
軽い挨拶を交わしながらもレギとシンは静かに2人の舞を見続ける。
そしてリオナとカレン、2人が繰り広げた舞が終わる。
レギとシンは思わず拍手をしていた。
二人は汗を魔法で拭き取ると
「なんじゃ、No.4ではないか、いつの間に来たのじゃ。」
「君がNo.4か。カレンだ。部屋の件では世話になった、礼を言わせてくれ。」
「利害の一致ってやつだよ。僕のことはシンと呼んでくれて構わないよ。」
「そうか、ありがとう シン殿。」
「珍しい魔法を使うと姉上から聴いておるぞ。どうじゃ妾と戦ってみるか?」
「かの"閃光"に知っていただけているとは光栄だね。けど君と戦うのは今じゃないかな。」
「エルフィウス家の者がなにを言う。ちっ食えんやつじゃ。」
昨日の会合でシンの家が名家であるとは聴いていたがリオナの口ぶりからするに相当な名家らしいとレギは解釈する。
「剣での模擬戦ならいつでも歓迎だよ。」
と微笑みながらシンが返す。
「ふん 興が冷めたわ。そろそろ朝食の時間じゃ。戻るぞ、カレン。...奴隷の分際で(小声)」
「もうそんな時間か。ではレギ、シン、また。」
「思ったより寝坊したのと随分長く彼女たちに見入っていたようだね。僕らも戻ろうか。」
「そうしよう。」
『って聴き流すには不味い単語がリオナから聴こえたよな?けどカレンもシンも何もおかしな点は無いし...俺の聞き間違いだな。きっとそうだ。』
--食堂
シンは今日は朝食を取らない日だと言うので部屋で別れた。
1人食堂に向かうと
「おはよ!お兄ちゃん。」
「おはよう。」
待っていたかのようなテレジアと挨拶を交わす。ヨルハはまだ寝ているらしい。
「お兄ちゃんこの後ギルドの人が迎えに来るんでしょ?いいな〜ギルド 私もお兄ちゃんと同じギルド入りたーい。」
「そろそろ俺の後を追うのはやめておけ?
とは言ってもお前なら多分すぐスカウトされると思うよ。」
誰よりテレジアの才能を理解しているレギはそう思った。それに恐らく彼女も...情景と違わぬ姿を思い浮かべてそんなことを考えていた。
「そうかもしれないけど!私はお兄ちゃんのサポートがしたいんだよね〜お兄ちゃんが前衛で私が後衛的な?他にも色々...etc」
何やら色々話し始めたテレジアの話を半分ぐらいに聞き流しながらパンを齧る。
「もーお兄ちゃんちゃんと話聞いてた?」
「まあ半分ぐらいはな。じゃあ俺はそろそろ部屋に戻るよ、ギルドの人も待たなきゃいけないしな。」
「あー逃げたな〜 んも〜仕方ないな、また後でねお兄ちゃん。」
「ああ、後でギルドがどんな感じか話してやるよ。」
そう言って食器を片付け部屋に戻ろうとしたレギの前に3人の男が立ち塞がった。
「お前か、末席の癖にギルドにスカウトされたっていう田舎者は。」
その中のリーダーなのだろう金髪の男がそう言い放った。
周囲からは
「おいおいリンドールのやつが絡んでやがるぜ。」
「あいつプライドの塊だからな彼がスカウトされたの気に食わないんでしょ。」
そんな声がちらほらと聴こえてくる。
リンドールと呼ばれた男の言葉にレギは
「ああ、今から迎えが来るから部屋に戻るところだ。そこを通してくれないか?」
と特に気にした様子もなく答える。
「通さないと言ったらどうする?」
「どうもなにもお前たちに俺を通さない理由がないだろう。どいてくれ。」
そう言いながら通ろうとするレギだったが
「おいおい通れるわけねえだろ。」
ガッとレギの襟首を掴みながらリンドールが言った。
「澄ました顔しやがって、てめぇ雑魚なんだろ?俺がヤキ入れてやるよ。」
そう言いながらレギの顔目掛けて殴りかかってきた。レギはそれを当然のように見切りながら片手で防ごうとしたが想像以上の威力に少し吹き飛ばされてしまった。どうやらこの男、口先だけではなくちゃんと鍛えているようである。後ろからのテレジアの視線が痛い。
「いいぞ!リンドール やっちまえ!」
「あいつ馬鹿だけど喧嘩は強いのよね。馬鹿だけど。」
「誰か止めないと...。」「ここにいる誰がリンドール止めれるんだよ....。」
とそんな声も聞こえてくる。どうやらこの男、予想に反して強いらしい。俺もこの男を侮っていたようだ。そうしていたらリンドールが蹴りかかってくる。今度はそれを両手でガードしたがそれでもかなりの衝撃が襲ってきた。
「てめえ...雑魚かと思ったら喧嘩慣れしてやがるな。これはどうだ?」
リンドールの拳と足がさらに加速する。この男さっきまでは様子見だったようで動きが変わる、レギもまた全力でリンドールの攻めを受け切り、体術を持ってリンドールを転ばせる。
「なるほどな。やはり噂ってのはカスだな本物とは戦ってこそだ。訂正するぜ、てめえは雑魚じゃねえ。だがこれは防げるか?末席。」
リンドールは鼻から俺の実力を試す為に突っかかってきたらしい。笑みを浮かべながらリンドールは拳に魔力を込め始める。
それを見てレギは内心焦っていた。リンドールの手に纏う魔力は尋常ではない。それをまったく躊躇することなくこちらに向けようとしている。
「なるほど。確かに馬鹿だ。」と心の中でレギは零す。
明らかに校則の範囲を超えているしあれを避ければ後ろの生徒に被害が及ぶかもしれない。
仕方なくレギも己の手に魔力を込める。
「喰らいな 【衝撃】」
「【バースト】」
無系統魔法【衝撃】魔力を拳に込めてそれをぶつけるだけの一件簡単に見える魔法だがヒットする瞬間に繊細な魔力操作が求められる魔法。魔力操作を一歩間違えれば自らの拳が砕けてしまう魔法。それを喧嘩如きで放つこの男の名はリンドール。No.5 リンドール・テンペスト、戦闘試験においてレギに次ぐ成績を叩き出した男。
レギはリンドールの【衝撃】を防ぐ為に【バースト】を反転させて発動する。
二人の魔法が衝突するその瞬間
世界が闇に包まれた
そこにいる皆が一様に何が起きているか理解出来ていない。意識だけがそこに存在する。何も見えない何も聴こえてこない。
「全く部屋にいないと思えば、こんな所で何をしている、貴様。」
その声だけがその場にいた皆の耳に入ってくる。
その声が鍵になったように闇が晴れていく。
そこにいたのは黒い装飾が施された制服を纏い長い黒髪を後ろでまとめた男だった。
その男はレギとリンドールの魔法を平然とした顔で受け止めていた。呆然とする皆を一瞥し
「本来なら校則違反でお前たちを校則するところだが、急を要する、今回は見逃してやろう。」
「貴方は...」
かろうじて声を発することに成功したレギが問いかける。
「本来ならギルドマスターの仕事なんだが生憎マスターは労働中でな。貴様を迎えに来たぞ、レギ。私の名はアシュレイ・ブラック。ギルド ディアボロスの副マスターだ。さっさと行くぞ、マスターがお待ちだ。」
長い文章は苦手。
最初魔法は全部カタカナにしようかと思ってたんですけど衝撃と書いてインパクトみたいなやつ大好きなので...統一感なくてすみません。