涙
タロとジロは医務室に運ばれていった。
なぜタロとジロはゴンザレスに勝てなかった。疑問が残る。
僕たちが雑種であることと関係なく何かあるのではないだろうか。
この時疑問を持ったが、その後僕の番が来てすぐ忘れてしまった。
「次、コロマルさん」
「は、はい!」
神官さんに呼ばれて部屋に入っていった。
「それでは天秤に乗ってください」
中央に立派な装飾がされた天秤があり、立派なアヌビスのレリーフが
施されている。金色でとても高そうだ。
神官はアフガンハウンドでとても高貴で強そうだ。
「私は犬現【嗅覚強化 ppm】を与えられています。百万分の一の濃度まで察知できる
単純な嗅覚強化の発展版です。この域になると犬現の効果まである程度わかります」
PPMまで察知できるからといって能力がわかる理屈は正直わからないが、なんだか
すごそうだ。因みにアフガンハウンドはシングルコートで換毛がないから掃除が楽ちんだよ。
「さあさあ乗りなさい。はやく」
「はい」
僕は天秤に乗った。すると脳内に不思議な優しい声が響いた。
(ころまるは食いしん坊だね。いっぱい餌をあげるよ。たくさん食べて強く育ってみんな
を守ってね)
「コロマルさんどうしました。」
神官さんに呼ばれて僕ははっと気づいた。
あれ?今の声は?
「コロマルさんあなたの犬現がわかりました」
え?なんだろう ワクワク
「あなたの犬現は【餌】効果は餌を体内に入れることができるです。
なんとも、すごく残念な効果です。先程のタロとジロさんは
なかなか使える能力で、ほとんどの犬たちはそれなりに使える
犬現を得るのですがここまでアレなのは初めてです。一般的な
能力を与えられるなんて………。
ここまでアレだと、仕事はないかもしれません。ご武運を。」
「え?嘘?」
それからはつらかった。
冒犬者ギルドでなんとか仕事を与えられたものの、
あまりにも使えない犬現のため餌もまともに与えられず
無駄飯くらいと罵られる日々が続いた。
雑種で犬現も弱いものはどうやら犬権がないらしい
見せしめとして他の雑種たちも僕に口を聞かない
ように指示が出されたらしい。
ある夜
カピカピのパンを与えられて
能力を使用できる気がして
「餌」とさけんでみた
そこにはカピカピのパンが転がっている
だけで何も変わっていなかった。
食べても何も変わらない。
涙が溢れてきた。
僕の犬現は役に立たないんだ