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ノゾキアナの恐怖シリーズ

ノゾキアナの恐怖 失

作者: リィズ・ブランディシュカ



 俺の部屋の壁には覗き穴がある。

 ある、というよりは作ったと言った方が正しいかもしれない。


 俺が住んでいるのは、集合住宅だ。

 だから、隣の部屋には別の人間が住んでいるという事になる。


 隣の部屋に住んでいる他人が、音楽が煩い迷惑野郎とか、夜中にも騒いでるヤンキー集団だったら、不幸な事この上なかったのだが、どうやら俺は幸運だったらしい。


 隣に住んでいるのが、見た目の良い美女だったからだ。


 彼女とは、通勤の時やゴミ出しの時に行動がかぶるらしく、部屋を出た時に世間話をする事がよくあった。


 仕草も可愛くて、ファッションも良い。

 話も面白かった。


 これで、好意を抱かないわけがない。


 という事で、俺は気になっているその女性を好きな時間に好きなように眺める為に、部屋の壁にせっせと覗き穴をこしらえたのだ。


 小さな穴だから、注意して見なければ気が付かないはず。


 もし気づかれたとしても家具を壁に取り付ける為にあけたと言い訳するつもりだ。


 俺は今日も、カモフラージュにとりつけている時計を外して、覗き穴を覗き込む。


 彼女はいた。

 普段通りの様子で、ソファーに座ってくつろいでいた。


 紅茶をいれて、お気に入りの本を読みながら、リラックスした様子でのんびり過ごしていた。


 何でもない一時だが、そんな姿でも絵になっている。


 俺は何時間もその姿に見とれて、見入っていた。


 そんな行為を何度か繰り返していたある日、俺は通勤の時間にある事に気が付いた。


 ここのところ、彼女と直接顔を合わせて話す機会が無かったという事に。

 ゴミ出しの時もだ。

 

 職場の都合かなにかで、出勤時間が変わったのだろうか。

 それでライフサイクルが変わって、行動も変わってしまったとか。


 残念に思いながら、部屋を出ていくのだが、そこで大家さんとであった。


「おや、〇〇号室の〇〇さん。おはようございます」

「あっ、おはようございます」


 隣の部屋をのぞいているなんて微塵も思いもしていないだろう、その大家のおばさんに挨拶をして横を通り抜けようとすると、相手が沈痛な面持ちで話しかけてきた。


「もし、あの部屋にいづらかったら、私に行ってくださいね」

「えっ?」


 なんのことか分からず首を傾げている俺に、おばさんは衝撃の一言を口にした。


「だって隣の部屋の○○さん、一週間前にでかけていったきり行方不明になってるんですもの」


 俺は一体、今まで誰を見てきたのだろうか。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 覗き穴ネタはホラーの定番なので好きです! [一言] むこうが覗きに気づく瞬間があれば、もっと怖いかもしれません。
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