#96:監視役の二人
監視役の二人について色々な設定を考えて、今回の話をどうしようか考えたんですけどこんな感じにしました。
「暇だよね?」
「まぁ、そうだな」
「ふっふっふー私も正直暇してはいるんだけどね」
俺を監視している、陽気な女性がそう言った。
「ふっふっふー、そろそろ交代の時間みたいです。もう少しここで美少年に癒されてのんびりしてたかったけど、自分の部屋で遊んでゲームもしたいからなぁ」
「……ゲームなんてあるのか?」
「ふっふっふー舐めちゃいけませんよ、この辺りの組織力を。普通にゲームショップとか、ある程度の娯楽施設は普通に用意されてますよ」
そう言って目の前にいる女性は自慢気に話した。彼女に対する警戒を解いたわけではないけど、少なくとも目の前にいる彼女はそれほど悪い人間ではないのかもしれない。
「おつかれ様、理科」
「ふっふっふーお疲れ様なのです!そろそろ交代の時間なのです」
「だから、私が来たんだけどな」
監視役に任命されていた女性は、先ほどから俺のことを監視している理科と呼ばれた女性に呆れるように言った。
「うん、何か外が騒がしいな?」
「うーん、どうやら外で何かあったのかもしれませんね」
「へぇ、正門の方から軍隊が攻めてきたみたいだぞ」
「それはヤバくないですか!?」
「ああ、流石にヤバそうだな。目的はこの少年の救出なのかもしれないな」
「確かにこの子、第一王女と深い仲みたいだからなのかな」
「恐らくはな。だが、そのリスクをおかしてまでこの少年をさらった意味は何だろうか」
軍隊、おそらく柚香が派遣してくれたものだろう。どうやってこの場所を特定したのかは分からないけど、柚香の王家の権力を使えばそれくらい容易いことなのだろう。
「まぁあたしにはどうでもいいさ。上流階級のやつらが男を独占する。そんなことがあるくらいならば、男なんていらないだろう。だからこの組織に入ったんだ。王家が相手だろうがかかってきやがれって話だ」
「なるほどなるほど」
「逆に考えてみろ?この軍隊を退けることが出来れば、この国であたしたちの組織に手を出さるものなどいなくなるだろうな」
「ふっふっふーそしたら男を選びたい放題ってことですか?うーん、でも私的にはこの子がいれば後はどうでも良くなってきた気がするんだけどなぁ」
理科と呼ばれる少女はそう言うと、俺の顔に手を当てて微笑んだ。この組織にいるのが不思議な程純粋な笑顔に見えた。
「じゃあこの拘束を解いてくれ」
「ふっふっふー任務には逆らえないんですよ」
「すまないな。別にあたしたちはお前に恨みを持っているわけではない。だが、あたしたちはあたしたちですべきことがあるんだ」
「ふっふっふー。まあ、とりあえずしばらくはここにいてもらいます。ボスが君を食べるまで私たちは監視することしか許可されていないからなぁ」
「まぁ、何処にいてもそういうこった。だがまぁ、給料ももらえてるし、いいんじゃないか?」
もう一人の女性は落ち着いたようにそう言った。ふたりはどうしてこの組織に所属しているのかが見えてこない。もし二人を説得できればここから逃げ出すことも容易かもしれない
。この二人と敵対しながら、自力で脱出するのはほぼ不可能だろう。だからこそ、試してみる価値はありそうだ。
「二人はどうしてこの組織に所属しているんだ?」
「うん、あたしはお金のためだな?」
「ふっふっふー私はお金を稼ぐためです」
どうやら二人ともお金が目的のようだ。お金さえあれば彼女たちは動いてくれるのだろうか。
「じゃあ、もし俺を開放したらお金を払うと言ったらこの組織の人たちは納得するのか?」
「無理だと思うよ。王家に恨みを持ってるやつもいるし、男を独占できると知った奴なんかはそれが目的で所属している場合もあるからな」
「ふっふっふー。まぁ私は借金を返さないと妹を救えないので。だから動いちゃうかもしれないですね」
「あたしはまぁ、仕事がないだけだからな。どうするかは気分次第だけど。ここなら男と好きなことできるし、あたしの見た目じゃ可愛がってくれる男なんて存在しないからな」
「そうか?別に可愛いと思うけど」
「か、かわっ!?何を言って……」
その瞬間、部屋の扉が破壊された。