#81:渉と日向と月夜
今回で2人の話はいったん終わります。
次は誰の話を書こうかなと考えています。希望があれば、是非感想等でお願いします。
イルカのショーを見終わった後、俺たちは再び水族館の室内部分に戻り、先ほど言っていない場所を回った。
水族館もある程度回り、次はどこに行こうかと相談していると突然可愛らしい音が鳴った。音の発生源の方を見ると、おなかを抱えてうずくまる日向さんの姿があった。やがて日向さんはこちらを見ると絶望したような表情を浮かべた。
「渉君に変なところ見られた。気分を不快にさせてしまったなのです」
「ちょっと、恵理?」
月夜さんが心配そうに日向さんのことを見ていた。千佳姉はため息をすると俺の方を見てきた。俺は千佳姉の方を一瞬見て頷いた後、彼女たちに近づいた。そして、日向さんの頭をそっと撫でた。
「大丈夫ですよ。別にそれぐらいで不快になったりはしませんよ。誰にだっておなかはすきますし。それにとっても可愛らしい音でしたよ」
「わ、渉君に嫌われてなくてよかったよぉ」
「よしよし」
俺がそう言うと、日向さんは目に涙を浮かべて月夜さんに抱き着いていた。泣きじゃくる日向さんを月夜さんが優しくあやしていた。
「私の渉がその程度のことで人を嫌うわけがないだろう?そこらの男子と一緒にしないでくれよ?」
千佳姉が自慢気にそう言った。別に自分の功績じゃないのに威張っていた。場を和ませるためにやってくれているんだろうけど、そんなところが千佳姉のいいところなんだろうな。気づけば、千佳姉も二人に近づき日向さんをあやしていた。彼女たちは普段こうやってお互いを励ましあいながら生きているのだろうな。目の前の微笑ましい光景を見ながらそう思った。
「渉君はお昼はどこに行きたいとか希望はあるなのですか?」
「いや、特にはないよ。あ、別に普段みんなが行くようなところで大丈夫だから」
「普段行くようなところか……それなら、ファミレスかな」
「賛成なのです!ハンバーグ食べたいなのです」
「はいはい、分かったからはしゃがないの。二人もそれでいい?」
「構いませんよ」
「ああ、私も構わない。……決まりだな」
俺たちは日向さんが行きたい言っていた、赤い看板のハンバーグなどが美味しいことで有名なファミリーレストランへと向かった。
「それにしても渉君もハンバーグとか食べるんだね」
「はい、美味しいじゃないですか。ハンバーグ」
「ふふふ、そうだね。風の噂だけど男の人はそういうの嫌うっていうから。でも、君にはそういう噂は当て張らないっていうか……人とは違うみたいだね」
「私にも凄く優しく接してくれたなのです」
「あー、それはね。渉、話してもいいかい?」
千佳姉はそう言うと困ったように、俺の方を見てきた。俺がどうしてほかの人たちと違うかまでは彼女たちにも伝えていなかったんだろう。
「構いませんよ。というか、僕から説明しますね」
ただ折角、彼女たちとも友達になったんだし言うなら自分の口から言った方がいいだろう。これに関しては千佳姉は関係ないからな。
全てを話し終えると日向さんは目を輝かせ、月夜さんは驚いた表情を浮かべた。
「凄い凄い、男女の人数がほぼ等しい世界だって!」
「流石にそれには驚いたわ。だとしたら渉君のこれまでの態度も説明がつくような気もするけど、でもこっちの世界に来てから他の男子のような性格にはならなかったの?」
「一緒に転生した幼馴染がいますから。そもそもそんなことをするつもりもないですし、そんなことをして楓や桜に失望されたくないですしね」
「そっか、大事な恋人なんだね」
「はい。それに今はもう二人だけじゃなくて千佳姉や碧、それに他にも俺のことを思ってくれる人がいますから」
俺はそう言うと、二人は納得したような表情を浮かべた。
「そっか、じゃあ。私も渉君にそう思ってもらえるように頑張るね」
「私も、頑張るなのです!」
月夜さんは微笑みながら言ってきた。日向さんもそれに対抗するように、しかし可愛らしくそう言った。