#77:千佳姉と渉
「お、弟ー!?」
「しー。声が大きい」
「あ、ごめん」
渉との関係を根掘り葉掘り聞かれてしまい、結局弟だと白状させられてしまった。
「私たちに隠し事をしていたのは否めいけど、それほど大切な人なんだ」
「そりゃあ、もう。こんな私のこと好きって言ってくれるし、格好いいし、可愛いし」
渉のいいところなんて、たくさんある。それこそ、一言で語るなんて無理だ。
「千佳の話を聞いている限りだと、妄想みたいに聞こえちゃうけどね」
「うんうん。でも千佳が嘘つくわけないし、本当なんだと思うよ」
「でも折角なら、会ってみたくない?」
「うん!滅茶苦茶会ってみたい」
二人は期待するような目で私のことを見てきた。だが、それだけは駄目だ。噂はどんどん広がってしまうからな。
「千佳のいう性格で、あの顔の人は実際にいるなら会ってみたい」
「このこのー静香は照れ屋さんだな。でも私も会って見たいんだけど、だめ千佳?」
恵理はそう言うと、私に抱き着いてきて目に涙を潤わせながら少しだけ泣きそうな顔で言った。
「わわ、分かったから。確認取ってみるから」
「やったっ、言質取った!」
「ナイスね恵理」
恵理はそう言うと舌をペロッと出して、笑顔を浮かべていた。どうやらあれはウソ泣きだったらしい。騙されたということか。話を撤回させようとしたのだが、目がガチだ。仕方なく、私は渉に許可を取ることにした。
「千佳姉の友達を家に連れてきていいかって?」
「ああ」
夜部屋で一人で寛いでいると千佳姉が俺の部屋に入ってきた。そして突然千佳姉がそう言った。
「それは構わないけど」
「ついうっかり渉のことがバレちゃってね、親友の二人がどうしても会いたいって言ってるから、断りづらくって」
「うん、分かった。いいよ」
「ほ、本当!?」
姉であり恋人である千佳姉のことを俺は知らなさすぎる。家での様子は知っているけど、大学での様子とかは分からない。千佳姉の大学の友達なのであれば、そう言ったことを聞けるいい機会だろう。
「あ、ただ一つお願いがるんだけどいいかなぁ?当日は、お姉ちゃんとずっと手をつないでてほしいかなって思ってるんだけど……」
「どうかした、千佳姉?」
少し千佳姉が震えているような感じがした。声もだんだん小さくなっていってるし。
「二人が渉のことを狙っている見たいで、二人とも可愛いから私なんか捨てられちゃうかと思って……」
俺は千佳姉の両頬を両手で包み込むように触った。
「普段の様子から感じられないかもしれないけど、俺は本気で千佳姉のこと好きだからね?」
「……渉。ふぇぇん。お姉ちゃんは、渉のような恋人を持てて幸せねぇ」
千佳姉はそう言うと、泣きながら、俺に抱き着いてきた。俺は彼女の頭を優しくなでた後、そっと彼女にキスをした。千佳姉は顔を真っ赤にしながらアワアワしていた。
「わ、渉。何をっ!?」
「たまにはいいでしょ?」
普段少しだけだらしない彼女が、純粋な乙女の様に恥じらう様子はとても可愛かった。俺は彼女の可愛さにやられてしまい、再び顔をそっと近づけてキスをした。
「あっ、千佳お姉ちゃんずるいっ!碧もお兄ちゃんとキスしたい」
部屋に碧が乱入するまでの間、俺たちはしばらく二人きりでイチャイチャしていた。入ってきた後、碧ともイチャイチャして三人で一緒に寝た。
翌朝、一緒に眠っているところを楓と五月に見られて、ひと悶着あったのはまた別の話だ。