#75:碧
「お兄ちゃん、膝の上に座ってもいい?」
俺はあれから碧の部屋に連れ込まれた。愛結先輩に光沙先輩さらに千佳姉も彼女の部屋に押しかけていた。部屋に入って開口一番彼女が、上目遣いで俺にそう言ってきた。断られるかもと思い目を少し滲ませながら不安そうに聞いてきた彼女を拒むことなど俺にはできなかった。
「ああ」
「本当に!?ありがとうお兄ちゃん!」
そう言うと碧は俺の膝の上に乗っかってきた。俺はそんな彼女の頭をやさしくなでて上げた。すると碧は俺に背中を当ててさらに体を密着させてきた。
「ずるい。ねぇ愛結、碧ちゃんだけずるいと思わない?」
「我慢しないか光沙。君のほうが年上だろう。そんなにしてもらいたいのなら後でやってもらえばいいだろう。渉が拒むとは思えないからな」
「うう……分かったよぉ」
光沙先輩がこちらを少しだけ不機嫌そうに見ていたのだが、愛結先輩が彼女に何かを話すと彼女から不機嫌そうな様子はなくなっていた。
「お兄ちゃんとイチャイチャー」
「ご機嫌だな、碧」
「うん、大好きなお兄ちゃんの膝の上だもん」
「お姉ちゃんにも変わってくれない?」
「いや」
碧はそう言うと俺の服を掴み、ぎゅっと抱き着いてきた。
しばらく千佳姉が碧に説得をしていたのだが、碧は一切譲る様子はなく俺の膝の上に居座り続けた。本当はそろそろ変わってあげなさいと言いたいところなのだが、彼女の場合は意地悪でやっているわけでもない上に、動作が一々可愛く注意する気が起きなかった。
愛結先輩と光沙先輩は今日は家に泊まるため、千佳姉に空き部屋に案内してもらうために碧の部屋を出た。そして部屋には俺と碧の二人だけとなった。
「お兄ちゃん。まだ時間ある?」
「うん、あるけど?どうかしたの?」
「ううん。どうもしてない。ただお兄ちゃんと一緒にいたいってだけなんだけど……駄目だった?」
「そんなわけないだろ」
「……お兄ちゃん」
碧の言ったことに速攻で否定すると碧は嬉しそうに俺のことを見てきた。すると、彼女は少し場所を移動させると、俺の膝の上に頭を載せてきた。
「イケメン男子にやってほしいランキング上位の膝枕。お兄ちゃんにやってもらうと幸せ~」
俺はそのまま顔を彼女に近づけてそっと唇にキスをした。碧は頬を真っ赤に染めると恥ずかしそうに、しかしながら嬉しそうな表情を浮かべた。
「お兄ちゃん、もっとキスして―」
「お、おう」
さらにキスをねだってくる彼女から目を離せなかった。
「ふふっ、やっぱりお兄ちゃんもドキドキしてるんだ」
「そりゃあそうだろ?こんなにも可愛らしい恋人にキスを迫られてるんだぞ」
「かっ、可愛い?私が?」
「勿論だ」
碧が驚いたかのような表情を浮かべた。そして俺のことをじっと見つめた後そう言ってきたので勿論かわいいと返した。碧の顔がさらに真っ赤になったのは言うまでもないだろう。
「お兄ちゃん。今日よかったら一緒に寝ない?」
「一緒にか……?確かに最近は一人でしか寝てないし。たまにはいっか」
「本当に、ありがとうお兄ちゃん!」
緑はそう言うと、今度は俺の頬にキスをした。
その日の夜は結局、碧の部屋で眠った。碧と同じ布団に入り、体を抱き寄せあいながら眠った。