#66:救出劇の裏側
64話の渉君視点になります。
※渉君は戦闘しません。
俺たちは突入作戦を企てた。いくらこの男の家でも、王家の力を弾くことはできないらしい。王家の権力を使い、侵入する。しかし、彼の性格上、抵抗するのは目に見えている。真里菜を人質に使ってでもだ。そこで、大和さんの出番というわけだ。
「ここが、そうですか?」
「はい、間違いありません」
柚香に案内されて着いたのは、大豪邸だった。柚香の住む城や、俺の家ほどではなかったものの、かなりの広さだ。――それにしても、この像ひょっとして自分のやつじゃないだろうか?だとしたらそうとう不気味、いやこんなものが置いてある時点でそもそも不気味だ。
そこにははげで、太っている、40代くらいのおじさんの像があった。顔つきは悪く、不気味な笑みを浮かべている。
「何者だ……って男!?」
「聡様よりもカッコいいお方が何か御用ですか!?」
門番の2人が慌ててやってきた。おい、絶対さぼってただろ。そんな二人は俺の横にいる、女子たちを威嚇した。すると、後ろにいた柚香が俺の前に出た。
「この家で、違法薬物が使用されたとの情報があり、家宅捜索を強行します」
柚香が宣言すると、門番の二人は、焦ったように道を開けた。王家の力って凄いんだな。屋敷に入った後も、メイドたちは柚香の姿を見るだけで道を開けた。王家に逆らうのは旗色が悪いと分かっているのだろう。
そして、彼の部屋の前についた。
「この奥がそうみたいです。屋敷の者の情報だと今まさに二人でいるそうで……」
「そうか。分かった、大和さんお願いできる?」
「いつでもいけるでござる」
そして、俺は大和さんと目を合わせると、扉を開けた。それからはあっという間だった。扉を開けたその瞬間、俺の目の前から大和さんが消えた。俺は柚香と一緒に後を追って、入ると真里菜は既に解放されており、伸びている男の姿とそれを見下ろす大和さんの姿があった。
俺は、泣きついてきた彼女をそっと優しく抱き留めた。そんな俺たちを柚香と大和さんは優しく見守ってくれていた。
あれから、柚香の何とか部隊の人たちが調査をして、違法薬物の物的証拠を取り押さえたそうだ。これがなかったら、また少し面倒なことになっていたらしいのだが無事に見つかったらしい。真里菜を監禁していた男は、特別な牢獄に監禁されることになるらしい。通常ならば、女性に一生搾取されるらしいのだが、彼の場合はそれをやっても効果はないとのことで機械に通すらしい。詳しい話は分からないが、柚香曰く、もう一生出てくることはないので気にしなくていいそうだ。
その後、真里菜は念のために精神病院へと向かった。二日という時間、彼に監禁されていたのだから、念のためだ。彼女を待っている間、俺は柚香と一緒に大和さんに感謝の気持ちを伝えていた。
「大和さん本当にありがとう」
「硬くなってるでござるよ。白川殿」
「あ、悪い」
「私からも、ありがとうございます、柚香」
「気にしないでほしいでござる。これは仕事である以上に、友を助けたつもりでござるから」
「でもそうですね。このお礼はいたします」
「結構でござるよ。柚香殿。拙者はお金とかはあまり使わないでござるから、余分にもらっても……」
「いえ、渉様をお貸しします」
「……うん?」
柚香が突然そんなことを言い出した。
「それは流石に悪いでござるよ」
「いえ、大和さん……いえ、春香さんは先ほど真里菜さんにいいなぁと言っておられましたよね?」
「それは確かに言ったでござるが、拙者は武士として生きると、幼いころに決めたのでござる。だから……」
「一緒にどこか行くくらいなら、誘ってくれればいつでも行くよ?今回の恩もあるしな」
「……白川殿」
「渉でいいよ。友達なんでしょ?」
「ふっ、そうでござるな。では、拙者を連れて行ってほしいのでござる」