#62:楓の気持ち
楓の気持ち。
こういうありきたりなサブタイトルだと、後で被っちゃうかも……
新章の軸となる話はもう少しお待ちください。
何だ、体が滅茶苦茶上下左右に揺れているんだけど、大地震か?
俺はゆっくりと重たい瞼を開くと、そこには恋人になったばかりの真里菜が俺の肩を揺らしながら、俺の顔を見ていた。彼女は俺と目が合うと、俺絵を揺らすのを辞めて恥ずかしそうに俯いた。
「おはよう、真里菜」
「お、おはよう渉。それよりもさっさと顔を洗ってきたらどう?せっかくの可愛らしいお顔が台無しよ」
「お、おう」
起こすときは滅茶苦茶激しく揺さぶられた。だからいつものように、彼女の言動も棘があるものかと思ったけど、今日の言葉には棘がない気がする。まぁ、可愛いって言われてもあまり嬉しくはないんだけどそこを指摘すると何を言われるかわからないし、黙っておこう。
洗面所に向かうと、楓が顔を洗い終わった後なのかさっぱりとした感じで鏡の前で立っていた。
「おはよう、楓」
「ひゃっ!?お、おはよう渉。もう、びっくりしたじゃない」
「ごめんごめん」
すると、彼女は手を俺の肩に回した。そして、顔を近づけると次の瞬間俺の靴ビルに柔らかい感触があった。
「彼女増やすのはいいけど、たまには私も見てもらわないと退屈なのよ」
「お、おう」
彼女は俺に抱き着いたまま、顔だけを逸らして体重をかけてきた。ふわっと甘い香りが俺の鼻を刺激する。さらに、柔らかいものが俺の体に当たっている。
しばらくすると、楓が再び俺のほうを見た。俺の視界に、一番大好きな彼女が映る。この三つが揃ったことによって、俺は変な気分になってしまった。俺は彼女にかをを近づけ、今度は俺からキスをしようとした。
しかし、それは突然扉が開かれた音によって中断された。音のした方を見ると、そこにはにやにやとした笑みを浮かべながら
「楓ちゃんも、渉君も大胆だねー」
「さ、桜。こ、これは」
「楓ちゃん可愛い。私は二人がいちゃいちゃしてるのを見るのも好きだから、お構いなく」
桜はニヤニヤしながら俺たちのことを見てきた。そんな彼女を見て俺と楓は顔を合わせるとため息を吐いた。
「お構いなくって言われてもな」
「うん……恥ずかしいわよ」
「そ?私は別に誰に見られても構わないけどね」
桜はあっけからんとしたまま、そう言った。そんなところがまた彼女の魅力なんだろうなとは思うんだけど、だからってじっと見つめてくるのはやめてほしい。恥ずかしいから、割とマジで。
「しょうがないなぁ。じゃあ、私は出ていくから続きはお二人でどうぞー」
桜はそう言い残すと、扉を閉めて洗面所から出て行ってしまった。
「もう、台無しじゃない……もう少し二人でいたかったのに」
「それじゃあ、もう一回。楓目をつぶって」
俺は彼女にそっとキスをした。キスをしている最中に向こうから抱きしめられて、途中から初めて大人なキスをした。終わった後には彼女は顔を真っ赤にして、洗面所から出てて行ってしまった。
「恥ずかしいなら、しなけりゃいいのに……なんて言えないか」
顔は真っ赤にしながらも、口元はにやけており嬉しかったのだろう。俺も最初は驚いたけど、彼女から俺のことをもと得てくれたのはうれしかった。俺はまだ口に残っている感触の余韻に浸りながら、しばらく洗面台に立ち尽くしていた。