#55:居場所
どたばたしてて更新遅れました。
いろいろ考えたんですが、本編をここで切ろうと思います。
まぁ委員長編やってませんし、来週からも投稿は続けていきます。
「渉様、この後お時間ありませんか?」
授業が終わり、放課後。席を立とうとすると、柚香が声をかけてきた。彼女の表情は真剣だった。
俺たちは彼女の所有する車に乗った。彼女は俺の家に遊びに来るつもりだったらしい。桜は気を聞かせてくれたのか「お先に行くね~」と言って五月と一緒に楓たちのクラスに行ってしまった。
「渉様好きです」
「俺も好きだよ」
彼女に告白をされた。とはいうものの、これが初めてではない。いずれも、ありがとうと述べてきた。けど、やっぱり彼女といたいとそう思える。でも、俺は――俺がそう思うと、彼女が口を開いた。
「もしかして、余所者だからとか考えてませんか?」
「なんで、そのことを」
俺は冷や汗をかいた。俺が今考えていたことをそのまま言われたからだ。動揺している俺を見ると、彼女は口に手を当てて笑った。
「好きな人のことならなんでも知りたいと思うじゃないですか。桜さんに色々聞いたら結構簡単に話してくださいましたが」
彼女はそう言うと、俺のことを抱きしめて優しく頭をなでた。
「渉様は余所者なんかじゃありませんよ。確かに、違う世界から来たのであれば考えの違いはあるとは思います。中々馴染めないかもしれない。けど、貴方はもうすでにこの世界に大事な家族がいて、彼女がいる。立派なこの世界の一員ですよ」
「……でも俺はこの国のこととか難しいことなんてがらっきしだし」
俺は少したどたどしく答えた。
「ふふふ、そこは任せてください。私の腕を見せてあげますわ。渉様は私の隣でともに歩み寄ってほしいです」
「うん、分かった。よろしくね、柚香」
「いいのですか!?渉様」
「まぁ、俺も好きだったけどさ。全然覚悟が決まらなかった。でも柚香がそこまで言うんだったら、俺も覚悟を決めないとって思ってな。柚香の横に堂々と立てるように頑張る」
「渉様!」
彼女はそう言うと、俺にそっと口づけをしてきた。その時の彼女の笑顔を俺は一生忘れることはできないだろう。なんと表現すればいいかわからないほどの、可愛さであったからだ。
あの後、俺は家に帰って柚香と付き合うようになったことを伝えた。楓はこうなるのかわかっていたのか、「おめでとう、柚香さん」と言った。柚香は桜を見ると一目散にかけて行って、泣きついた。どうやら彼女は、俺とのことで桜にいろいろ相談していたらしい。確かにボディタッチが激しいと思ったけど、あれは桜の策だったのか。
愛結先輩と光沙先輩にも電話で報告をした。2人ともおめでとうと言ってくれた。この世界に来て、いままでのぱっと冴えない人生から一転、こんなに可愛らしい彼女たちと付き合うという夢のような人生がいる。この世界に転生したのは偶然か、必然かそれは俺にはわからないけど、神のような存在によるものだったら俺はずっと感謝の言葉を述べるだろう。
桜、五月、由衣、碧、千佳姉、愛結先輩、光沙先輩、柚香そして楓。この先俺にまた彼女が増えるのかもしれないし、それは分からない。けど、俺の居場所を作ってくれた彼女たちのことは一生大事にすると改めて誓ったのだ。
――そしてこの国始まって以来の男性の王が誕生し、国がもっと良くなっていくのは少し未来のお話である。