#54:学校
三連休明け後の学校の話です。
……そういや今日って三連休の真ん中。
楽しくもあり、疲れもした中身の濃い三連休が終わった。 休日が終われば、通常通り学校に登校する。別に男子生徒は来なくても卒業はできるらしいんだけど、それをすると怠けてしまいそうだし暇である。それと楓と桜が許してはくれないだろう。
とは言ってもだ。
「楓さん眠いんですけど」
「この世界に来てから少し怠けたんじゃないかしら?」
「渉君の中学校生活かぁ。どんな感じだったんだろう」
「さえない平凡な生活をしていたかなぁ。あとあまり楓としゃべってなかった」
俺がそう言うと、桜が驚きの声を上げた。
「何で!?」
「まぁ、一種の思春期といいますか……ね、渉?」
「楓が学校で人気者過ぎたのが悪い」
「ふふふ、嫉妬してるの?」
楓は俺の頭を撫でるとほほ笑んだ。俺は気恥ずかしさっから、視線を逸らしながら彼女に聞こえているかどうかもわからないほど小さな声で「……まぁな」と返した。
「でも今は渉君モテモテじゃん。今だけで既に何人も彼女作っちゃってるしね」
「ああ、みんな俺にはもったいないくらいの人だよ」
「ふふふ、やっぱり楽しいわね。こうやって三人で登校するっていうのも」
俺たちは小学校のころと同じように、三人で手をつないで登校していた。あの時から俺が真ん中ということだけは、どちらも譲る気がなかったんだな。端っこに行きたいって言っても、よく二人から駄目と言われた記憶がある。
あの時と違うのは、俺たちの背丈と手の繋ぎ方が恋人つなぎになっているということくらいだろうか。そんなことを思っていると、桜が俺の名前を呼んだ。
楓と分かれ、桜と二人で教室に入ると柚香と委員長の2人が会話しているのが見えた。柚香は満面の笑みを浮かべて、俺のほうに手を振ってきた。彼女たちのいる場所に近づいてくと、2人は挨拶をしてくれた。
「あ、おはようございます渉様」
「あら、おはよう。今日は王女様目当てなの?」
「おはよう柚香、委員長。俺は登校しただけなんだけど」
俺がそう言うと、突然左肩がたたかれた。振り返ると、そこにはにやにやとした笑みを浮かべる桜がいた。
「それは委員長なりの愛情表現だから優しく受け止めてあげないと」
「何が、愛情表現よ!?」
「だって、そうでしょ?素直にならないと取り残されちゃうよ?」
桜が何かを言うと、委員長は俯いてしまった。
「渉様、好きです」
そんな委員長を横目に、柚香が俺に抱き着いてきた。すごくいい匂いがして、柔らかい感触もありいけない気持ちになてしまいそうだ。
「あーなに抱き着いてるんですか!?」
「あら、五月さん。おはようございます」
「あっ、おはようございます。……じゃなくて、話をそらさないでください!」
五月はそう言うと、俺から柚香を離した。
「そう言うのは、ちゃんと渉君の許可を取ってからにしてください!」
「でも渉さん、嫌そうにはしていませんでしたよ?」
柚香はそう言うと、首をかしげながら俺のほうを見てきた。確かに嫌じゃないし、嬉しかったんだけどどう答えるべきか。
「どうなんですか渉君?」
「別に、嫌ではなかったよ」
「つまり、嬉しかったってことですね!?それならば、もっと密着させて、私のことを好きにさせて見せます」
そう言う彼女の表情はとてもかわいらしいものだった。しかし、彼女と付き合いやがて結婚することになるとこの国とかのことも考えなくてはならないのだろう。そんなことはできるのだろうか。余所者の俺に。
彼女のことはもう好きになっているのだろう。話していて楽しいし、ドキドキする。一生守ってあげたいと思う。そんな彼女と一緒にいたいとも思っている。けど、あと一歩。
その一歩がまだ踏み出せないでいた。