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幼馴染と行くあべこべ世界  作者: ミルフィーユ
第一章:学校編
52/124

#52:三連休二日目

あとがきにてお知らせがあります。

「よし、それじゃあ行くか」

「うん、そうだね。碧ちゃん、準備できた?」

「はい、準備できました!」


 先輩コンビとデートに出かけた翌日、俺たちは天王寺家――柚香の家に行くことになっていた。勿論リムジンカーによるお出迎え付きだ。そういえば、前から思っていたんだけど、どうしてリムジンカーばかりなのだろうか?安全性のために車に乗せられているんだけど、これじゃあ目立ってしまうような気がする。




「お、着いたみたいだな」

「ここが、美柚ちゃんの家なんですか!?実際に見ると大きいんだね」


 碧は初めて見た天王寺家の広さに驚いている様子だった。天王寺家広いというのは知っていたらしいのだが、実際に見たことはないとのことだ。裏口の駐車場に車を止めてもらい、車から降りた。



「皆様、お待ちしておりました」

「今日はお招きありがとう、柚香ちゃん」

「いえいえ、こちらこそわざわざ来ていただいて嬉しいです」

「あ、初めまして。お兄ちゃんの妹の碧です」

「初めまして、碧様。私は天王寺 柚香と申しますわ」


 そう言うと柚香は碧に手を差し出して握手を求めていた。碧はガチガチに緊張しながらもなんとか彼女と握手をしていた。


「あ、えっと様はもどかしいので、出来れば……」

「では、碧ちゃんとお呼びしてもいいですか?」

「うん、よろしくね柚香さん」

「宜しくお願いします」




 駐車場を出た俺たちは、お城の方へと向かった。




「あ、お兄様ー!」

「あら、お久しぶりですね」


 王の間ではなく、柚穂さんの私室に通されるとそこには寛いでいる二人がいた。部屋に入ると、美柚ちゃんが俺に抱き着いてきた。


「お兄ちゃん、この子が美柚ちゃん?」

「あ、私は美柚です。えっと碧さんですか?」

「可愛い」


 そう言うと、碧は突然美柚ちゃんに抱き着いて頭を撫でていた。話を聞いている様子がなかったので、俺が代わりに応えると碧に挨拶をしていた。十分が経過したころには二人はすっかり仲良くなっていた。


「そうだ、柚香ちゃんアプローチしなくていいの?」

「ええっ!?でも恥ずかしいですし」

「頑張りなよ。柚香ちゃんならいけるから」


 桜と柚香は先程から何かをコソコソと話している。何を話しているんだろうか気にはなったんだけど、柚穂さんに後の楽しみに取っておきなさいと言われたため、聞いていない。しばらく経った後、柚香が決意を固めた表情を浮かべた。そして、彼女は俺の目の前まで歩いてくると、俺のことを抱きしめてきた。


「え、えっと柚香さん?」

「渉様、好きです」


 耳元でそう囁かれた。よく見ると彼女は頬を真っ赤に染めており、とても恥ずかしそうだった。きっと桜が彼女に何かを囁いたのだろう。恥じらいながらも、俺に抱き着いてくる姿はとても可愛らしい。


「渉様、やっぱり恥ずかしいです」


 柚香はそう言うと、桜の後ろに隠れてしまった。時間にしてはわずかだったのだが、凄くドキドキした。楓たちももちろんそうなのだが、こんな可愛い子に好意を向けられているのか。


「ほらほら、手でも繋いできなさい」

「ええっ、ちょっと恥ずかしいですよぉ」


 そう言いながらも桜に諭されて、無言で俺に手を差し出してきた。俺はそっと彼女の手に触れた。その日は結局帰る時まで柚香さんが俺の手を放してくれることはなかった。途中で桜が反対側の腕を絡めてきたことに対して、テンパった柚香が対抗して真っ赤にして気絶してしまったりと大変なことになった。




「ううぅ、お恥ずかしいところをお見せしました」

「大丈夫だよ。もう慣れたし」

「慣れたんですか?」

「ああ、いやコッチの話」


 男ってだけで優遇される世界で、声をかけるだけで気絶してしまう女性は一定数いるからな。流石にもう慣れた。徐々に俺もこの世界に馴染んでいっているのかもしれない。しかし、別れを前に寂しそうな表情をしている柚香を見ると何かしてあげたくなった。


「柚香」

「渉様!?なんでしょうか?」


 慌てて返事をする柚香にそっと近づいた。彼女の告白の返事を今することは出来ない。けどまぁ、これくらいならばいいのだろうか?そう思って俺は彼女の頬にゆっくりとキスをした。


「じゃあな」

「はい!」


 ――そう言えば、友達ってだけで頬にキスなんてしないよな。そう気づくのにさほど時間はかからなかった。


リアルがとても忙しいため、一ヶ月ちょっと更新を停止します。11月中旬には更新再開できると思います。

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