#41:天王寺 柚穂
柚香と美柚の母――王女様の初登場回となります。
楓たち、他のヒロインとの絡みはもう少し待ってください。
この世界は前世に似た雰囲気の街づくりだったけどここは、どちらかと言えば中世ヨーロッパのような雰囲気を感じる。この世界に来てから力が強くなっているわけではないんだけど、異性にモテる。だからかちょっとばかし異世界に転生した気分に浸っている。いや、まぁその通りなんだけどさ。ファンタジーの世界に迷い込んだっていうか、ここにいるとまじでそんな気分になってくる。
「うわぁ、外国みたいだね渉君」
「そうだな、というかこの国の他の建物と比べると明らかに違う文化だよなぁこれ」
「2人とも奥でお母様がお待ちです。早くいきましょう!」
俺と桜が建物に対して呆気に取られていると、柚香に腕を引かれた。その時の彼女は嬉しそうに、しかしながら頬を若干膨らませており拗ねているようにも見えた。うーん、どっちだろうか。
彼女に腕を引かれて5分程歩くと、そこには一際大きな扉が設置されていた。扉の両端にはメイドさんが立っていた。
「渉様ですね、お待ちしておりました」
「女王様との面会をしていただきます。渉様には特にありませんが、桜様については無礼のないようにお願いいたします」
「は、はいっ!」
メイドさんたちがそう言うと、桜にしては珍しく緊張した声で返していた。そんな桜を横目に、柚香は微笑ましいものを見るような表情だった。そして、メイドさんたちの手によってついにその扉が開かれた。
扉が開かれると、レッドカーペットのようなものが引かれており、最奥に階段がありその上に一人の女性が座っていた。さらにレッドカーペットの両脇にはメイドさんたちが並んでいて俺たちが部屋に入るのをじっと見つめていた。
「お母様。渉様とそのご友人を連れてまいりましたわ」
段差の上にある、階段に座っている女性の近くまで行くと柚香が一歩前に出てそう言った。じゃあ、やはり目の前にいる人が柚香の母で、この国の女王だろう。
「初めまして。私はこの国の女王を務めています。天王寺 柚穂と言います」
「初めまして。俺は白川 渉です。えっと……柚香さんとは仲良くやらせてもらっています」
「桃乃 桜です。柚香さんのクラスメイトです」
あれ、何か柚香のお母さんやけに物腰が低くないか?女王って感じが一切しないんだけど。そのせいかどうかはともかく、調子が狂って変なことを言ってしまったような気がする。桜もガチガチに緊張しているし、全く頼りにならなさそうだ。
「お母様、緊張しすぎです。威厳が感じられませんわ!」
「お姉様の言う通りです!お兄様は優しい人だから、緊張しなくていいのです!」
「あ、あらそう?」
柚香と美柚――娘2人に言われた彼女は、咳払いをした。
「改めてこんにちは。自己紹介はさっきした通りです。私は一応女王ですけど、気軽に柚穂と呼んでくれて構いませんよ?こんなに可愛いくて優しい子なら大歓迎よぉ」
「あ、お母様!渉様を狙うのはやめてくださいね!」
「そうです!お兄様は私たちの彼氏なのです!」
「あらあらぁ、それはちゃんと彼に認めてもらいなさいなぁ」
流石に呼び捨てはまずいだろうから柚穂さんと呼ぶことにした。それにしてもビックリしたぁ。柚穂さんが最後笑っていたので柚香たちを揶揄うためだったのだろうけど、もし彼女が本気だったらその魅力にやられていたかもしれない。というか美柚ちゃんの彼氏認定されてないか?誤解されたままではまずいので全力で否定しておいた。
「そうだわぁ、折角だから今夜は泊っていきなさいなぁ」
「それはいいですね!渉様是非私の部屋で寝ましょう。勿論桜様も」
「お姉様ばかりずるいです!美柚も一緒に寝ます!」
「いや……ちょっと待ってください。一緒に寝るって」
今夜は泊まっていけ。そういう意味だよな。
「じゃあ私も一緒に寝ようかしらぁ?」
「お母様は駄目です」
「お兄様、私たちと一緒に寝ましょう」
「……分かった」
不安そうに、上目遣いでお願いしてくる美柚を前にして断ることが出来るはずもなく、俺は彼女たちと一緒に寝ることになった。ちなみに柚穂さんは柚香さんが全力で止めていたため、一緒に寝ることはない。彼女と一緒に寝たら、大人の魅力で一瞬で虜にされてしまいそうだったため、心の中で感謝した。
何回も既に寝ている桜でさえドキドキするっていうのに、そこに柚香と美柚が加わったらそう考えただけで、心臓の動きが止まらなかった。
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感想や(以下略)
ちょっとふざけてみた。