#4:楓の本心
4話目です!
俺はそれから自分の部屋に入った。前の世界での俺の部屋からは想像も出来ない広さだ。しかし、この部屋どうしてキッチンとかもついているのだろうか。もちろん風呂やシャワーなども設置されている。パソコンやゲーム機なんかも置いてあった。やったね!
俺が興奮を抑えきれず、部屋の中の様々な場所を見ているとドアがノックされた。
「渉、入っていい?」
「いいよ」
楓が俺の部屋に入ってきた。鍵を閉めて話してもいいかと聞かれた。どうやら2人きりで何かを話したいらしい。俺が承諾すると楓は鍵をかけた。そして、俺の胸に飛び込んできた。
「やっぱり、元の世界に戻りたいよぉ。私は渉と2人がいい!この世界だと、誰かに取られちゃうような気がして」
「楓……」
目に涙を浮かべて、俺に向かって泣きつく楓。
「この世界の環境に慣れるだけでも大変なのに、渉が何処かに行っちゃうような気がして」
「心配するな」
俺は楓の頭を撫でた。え?という表情を浮かべて、コチラを見る楓の唇をふさいだ。
「お前は絶対に離さないから。それに俺だってお前がいなきゃ、寂しいんだからな」
「うん!」
楓はこの世界で違和感なく生活するために調べたりしている。これだけでも大変なのに、俺がいつ取られるかもしれないと言う恐怖感でメンタルがぼろぼろになってしまったのかもしれない。俺たちはその場でしばらく抱きしめあっていた。
「ありがと、渉。そろそろ下に戻ろう?」
「そうだな」
「手、繋いで行っていい?」
「うん、いいよ」
俺たちは手を繋ぎながら、部屋を出て下へ降りた。途中ですれ違ったメイドさんはとても驚いた表情でコチラを見ていた。すぐに俯くので一瞬しか目が合わないのだが。
「楓お姉ちゃん、何でお兄ちゃんと手を繋いでいるの?!」
「楓、どういうこと?」
「楓、お母さんに説明しなさい?」
下に行くと碧と千佳姉と母さんに指摘された。楓が質問攻めに合っていた。楓の先程の表情を見た後に嘘なんかつけない。
「楓は俺の彼女だからだよ」
「「「え?」」」
碧と千佳姉と母さん3人がとても驚いた顔をした後、碧と千佳姉が俺に泣きながら抱き着いてきた。
「お兄ちゃん、私じゃだめなの?」
「お姉ちゃんじゃ駄目なの?」
今はまだこの2人のことを良く知らないし、そんな状態で付き合うのなんて相手に、何より楓に失礼だろう。だから返事はあいまいに返しておいた。
「ごめん、俺はまだ2人のことを良く知らない。だから、今その気持ちには答えられない。けど、いつかその時が来たら返事は返すね」
「うん!」
「分かったわ」
2人の純粋な笑顔に思わずドキリとしてしまったが、それと同時に罪悪感も残った。
「渉、楓、明日から学校に行くことになっているけど、大丈夫?」
母さんが心配そうに見ていた。俺が大丈夫だと言ってもなお、心配そうにコチラを見ていた。
「大丈夫です!何があっても、渉は私が守ります」
楓がそう意気込むのだが、どうやら俺と楓は違うクラスらしい。それを聞くと楓は悲しそうな目でコチラを見てきた。俺と楓は小学校からずっと同じクラスだった。前に
「私と渉は一生クラスが分かれることなんてないのだよ」
とかカッコつけて言っていた記憶がある。母さんが同じクラスの幼馴染を護衛として雇っているらしい。幼馴染と聞いた瞬間に楓が少し不機嫌な顔をした気がする。
「渉ー!」
10分ぐらい経った後だろうか、突然リビングの扉が開かれた。
「いらっしゃい、五月ちゃん」
「ご無沙汰しています、お義母様」
この子が俺の幼馴染で護衛をしてくれるという。彼女は大江 五月という名前らしい。ツインテールという元の世界では見かけない髪型に思わず驚いた。俺と目が合うと大江さんは顔を逸らした。
「大江さん、これからよろしくお願いします」
「五月って呼んで……それから敬語もいらにゃいかりゃあ」
そう言って五月は倒れてしまった。
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