#31:五月と委員長との約束
五月&委員長回です。
そおそろ由衣と渉のの2人だけの絡み入れたい……ほとんど楓が間に入っているような形なので。
「あ、おはよう渉君」
「おはよう渉」
「おはようお兄ちゃん」
朝起きて、リビングに行くと楓と桜と碧の三人がリビングに座っていた。母さんはもう仕事に行ってしまったらしい。いくらなんでも早すぎる王な気もするけど、俺たちのことを思ってのことだから、あまり強く言えないけど無理はしないでほしい。ちなみに千佳姉はまだ寝ている。
「今日から桜も俺たちの学校に来るんだよね?」
「そうだよ、よろしくね?」
「私は渉とは違うクラスなんだけど……羨ましい」
そう少し不貞腐れる楓を見るととても可愛らしい。ちなみに今日は3人で登校することになっている。五月に案内を頼もうと思ったのだが、桜が3人がいいと言っていたので、
「それじゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい、お兄ちゃん、楓お姉ちゃん……桜義姉ちゃん」
「うん!行ってくるね!」
碧はいつも通り見送ってくれた。最後に碧が少し恥ずかしそうに桜にも呼ぶと、桜は凄く嬉しそうにしていた。家を出ると楓が俺の左腕を絡ませるようにして腕を組んできた。これはまぁよくあることなのだが、今日はそれを見た桜が俺の右腕でも同じことをしたため恥ずかしさ倍増である。
今日も俺のこと見てひそひそとしている人たちがいる。前はあの視線にもびくびくしていたが、今はそうでもない。人間慣れって恐ろしいものなのかもしれない。何て強気に言った手前、こいつらが居なかったらと考えると……やっぱり考えたくないや。
「それじゃあ、私は職員室に用事があるから、先に行ってて!」
「分かった。桜また後でね」
「桜ちゃん放課後まで会えないけど、それまで渉のこと宜しくね?」
「任せて!」
そのあと、俺は楓とも別れて先に教室へと入った。教室に入ると、目があった生徒が少し顔を赤くしながらを挨拶をしてくれた。俺も笑顔で挨拶を返すと、その女子生徒は顔を背けてしまった。
「おはよう、五月、委員長」
「おはようございます渉君」
「おはよう。それにしても相変わらず人に気を持たせるのが得意なのね?」
俺は自分の席に近づくと、すでに自席に座っていた2人に声をかける。五月はいつも通り振る舞っているつもりだろうが、少し不満そうだった。委員長は俺にそう言ったけど別にそういうつもりじゃないんだけどなぁ。
「……いや」
「どうかしたのかしら?」
「なんでもない」
否定したのだが上手い言葉が見つからなかった。すると委員長は勝ったと言わんばかりの笑みを俺に向けてくる。すると俺の服が少し引っ張られるような感覚があった。なんでだろうと思ってそちらを見るとそこには拗ねた表情の五月がいた。
「2人ともいい雰囲気出してずるいです。私一応幼馴染なんですよ!?渉君はもっと幼馴染を大事にしてもいいと思います!一緒に登校したりとか、朝起こしに行ったりとかしたいのに……楓さんと桜さんのせいで出来ません」
「お、おう」
そうやって言い詰め寄る五月。いつになく彼女の目が本気な気がする。獲物を狙うかのような目、それこそ俺がこの世界に来てからたくさんの人たちに向けられてきた視線。だけど多分五月は幼馴染と離れるのが嫌なんだろう。俺たちを庇って死んじゃった桜、そして高校に入ったらあの時まであまり話すこともなくなってしまっていた楓。その時の孤独感は半端じゃないものだった。
そう思っていたら自然と俺の手が彼女の頭を撫でていた。彼女は「ふぇっ!?」と情けない声を出していたが、それがまた可愛らしかった。五月に向けられる周囲からの視線は恐ろしいものだったけど。
「じゃあ今度一緒にショッピングモールに行かない?」
「え、いいんですか?」
「おう」
五月は凄くうれしそうな表情で俺のことを見つめてきた。
「ちょっと待ちなさい。それなら私も行ってあげるわ」
「いや、私と渉君のデートなので邪魔をしないでください」
2人とも一緒に行くか、どちらともいかないという選択肢を与えて、何とか喧嘩を終わらせた。そう言った瞬間に、二人は手を取り合って3人で行こうと行った。
チャイムが鳴ると先生が入ってきて、HRが始まった。転校生が来ると聞くとクラスの女子が男の子かもと騒ぎ出していたのだが、先生が女の子というと一気に落胆していた。それでも桜が教室に入ると、一斉に教室が騒がしくなった。
「SA•KU•RA様ー!」
「お会いしたかったです!」
桜はやっぱり人気者だった。皆の視線が桜に集中している隙に、五月がそっと俺の手を握ってきた。クラスの皆は気づいていない様子だったけど、桜は先程から俺たちのことをチラチラと見ていた。その表情が若干険しいものだった。