#3:記憶喪失を打ち明ける
3話目です!
家族以外のヒロインについては次回登場します。
本格的な出番は5話以降となります
予約投稿の日にちを間違えていました_(_^_)_
俺が目覚めた次の日に退院することが決まった。そして翌日、俺と楓は退院した。退院した際に医者や看護師さんに退院しないでと涙ながらに言われた。一瞬俺はこの病院に残りたいとも思ったのだが楓の冷たい目線を感じ取ったため、断っておいた。
病院の外に出ると大きなリムジンが止まっていた。
「これって?」
「え?リムジンよ、渉もいつも乗っていたでしょ?」
しまった。俺がこの世界に転生する以前の記憶はあまりないんだ。これって正直に話すべきなんだろうか?リムジンの運転手の人に挨拶をしてからリムジンに乗り込んだ。運転手は顔を真っ赤にして俯いていた。やはり、この世界の女性は男性に対する耐性が低いらしい。 リムジンは横向きに席がセットされていた。俺から見て正面の椅子に母さん、千佳姉が座っている。俺の左には楓、右側には碧が座っていた。
リムジンに乗ってからも、楓は何やら考え込んでいる様子だった。
「渉、どうかしたのか?」
「千佳姉ちゃん、えっと……」
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
どう答えたらいいんだろうか。そう思っていたら楓が突然お母さんと言った。
「私たち実は記憶があまり残ってないの、だからその……」
「渉、本当なの?」
「うん」
少し車内が暗い雰囲気になった。気まずい、こうなるなら最初から言っておけばよかったのではないかと、そう思ってしまった。おそるおそる家族の方を向いた。
「そうじゃないかと思ってはいたよ、お姉ちゃんは渉のことなら何でも知ってるんだから」
「私たちに少し距離があるとは思っていたけど、やはりそうだったのね」
千佳お姉ちゃんは確信に近い感じで、母さんはうすうす感じていたらしい。
「でもね、記憶がなくなったって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだから。それに碧は今の優しいお兄ちゃんの方が好きだから!」
そう言うと碧は俺に抱き着いてきた。何、この可愛い生物は。これが俺の妹だなんて信じられないぐらいだ。そして自分から抱きついたのにも関わらず、まだ恥ずかしいのか耳が真っ赤になっていた。顔はこの位置からだと見えないのが難点だけど。
「それにしても、楓もだけど渉は変わったよね」
「何処が?」
魂が完全に別人だから変わっていて当然なんだけど、あえて聞いてみた。すると姉さんは笑い出した。
「前の渉だったら、私たちとこんなに楽しく会話はしてくれないし、体が触れただけでも怒鳴っていたわよ」
「渉、あとで私も抱きついていい?」
姉さんが突然そんなことを言った。これはまぁセーフだよね?今までのこの体が迷惑をかけてきたんだし、恩返しをしてあげたいと思っている。だからこれぐらいは許してくれ楓。
「別に私にいちいち許可取らなくても大丈夫だよ」
楓は俺の考えていることを察したのか、俺の耳に手を当ててささやいた。
「楓お姉ちゃん、お兄ちゃんと何話してるの?碧も混ぜてよ!」
「だーめ、これは双子である私たちだけの秘密だから、秘密だよ」
「えー」
碧が頬を膨らませて、むすっとした表情をしていた。碧は俺と居るときとも、学校でクラスメイトたちと話すときとも異なる笑みを浮かべていた。楓も1人っ子で、よく妹が欲しかったと言っていた。だから、念願の妹が出来て嬉しいんだろうな。
リムジンに乗ってから10分ぐらい経った後、周りの家とは比べられないほど大きな家が見えた。
「凄い、大きい家だ」
俺が呟くと、碧が俺のほうを見て不思議そうに首を傾げた。
「ここ、私たちのお家だよ、お兄ちゃん?」
「え?」
「渉本当に大丈夫なの?」
千佳姉ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。
「うん、記憶があまり思い出せないだけだから……心配かけてごめんね、千佳姉って千佳姉!?」
「あらあら、千佳ったら」
母さんがからかうようにして、千佳姉の頬をつついていた。リムジンから降りた後は、意識が戻ったのか、冷静さを取り戻していた。
「じゃあ、一緒に行こっお兄ちゃん」
碧に手を握られる。兄とは言え、男と手をつなぐのは緊張するのか、手が少し震えていた。それでも表情からは一切それが窺えない。満面の笑みは妹と分かっていてもとても可愛いと思えるほどだ。
「お、お姉ちゃんも、一緒に……行くから」
反対に千佳姉は、緊張した様子で俺に手を差し出してきた。なかなか繋ごうとしなかったので、俺から手を繋いだら「ひゃい」と言う可愛らしい声が聞こえた。左手を千佳姉と、右手を碧と繋いでいるのだが、2人ともめちゃくちゃ可愛い。何か後ろから殺気がするんだけど、きのせいだろうか?
「お帰りなさいませ」
家にはメイドさんが居た。メイドなんて漫画とかアニメとかでしか見たことなかったから、実際に見るのは初めてだったが感動した。
俺たちは2階に部屋があるらしい。楓、千佳姉、碧の3人の部屋にはないが、俺の部屋は部屋の扉に鍵がかけられるようになっていた。防犯用とのことで、前の俺は常に鍵をかけていたらしい。俺が普段は鍵を開けておくと言ったら、碧と千佳姉がとても嬉しそうにしていた。母さんも、渉の部屋に入っちゃだめだからねと言いながら頬を赤くしていた。
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