#22:デレる小白井先輩
22話です。次週の投稿はお休みするかもしれません。詳細は後日、活動報告に載せます。
教室に入ると、クラスの女子がチラチラとコチラを見てきた。五月がいないからか、いつもよりも視線が凄い。そんな視線に若干うろたえつつ、平常心を装っているふりをして俺は自分の席に着いた。
「おはよう、白川君」
「おう、おはよう!」
席に座ると、隣の席に座っていた女子生徒に挨拶をされた。委員長だ。俺が挨拶を返す
と、委員長はじっと俺の顔を見つめてきた。
「何かあったのかしら?」
「え、何かって?」
「貴方の顔がやけににやけているから嬉しい事でもあったのかなって、思っただけよ?別に何もないのならば気にしなくてもいいわ」
嬉しかったとか、それはやっぱり小白井先輩のことだろう。愛結先輩のことが好きすぎる彼女と対立して、毎日睨みつけるような視線を浴びてたからな。それが解放されるというのは嬉しいものだ。というより彼女が友達のように俺を誘ってくれたというのも一つの決めてかもしれない。楓に誘われるのは嬉しいのだけど、ちょっと何かが違う気がする。愛結先輩も同じだ。五月や由衣はあんな感じには誘ってくれないと思う。そう考えると今から小白井先輩と出かけるのが楽しみに思えてきた。
「何をにやけているのかしら?」
「何でもないよ」
「そうかしら?」
楓もそうだけど、女の子ってどうしてこんなに鋭いんだろう。委員長は疑うような目でコチラをずっと見てくる。その視線に耐えきれず、俺は目を逸らした。
「おはようございます、渉君に委員長さん」
「おはよう、五月」
「おはよう五月さん」
五月が来てて助かった。五月は委員長と話し始めたことで、委員長が疑う目を俺に向けるのを辞めた。ずっと、あれに耐えるのは辛かったから。五月様ありがとう。俺は心の中で五月に精一杯の感謝を述べた。実際に言おうとも考えたのだが辞めた。何を言っているのか分からないといった表情をされるか、調子に乗るかのどちらかな気がする。いくら五月が幼馴染である、俺に慣れているからと言って、あまり安心は出来ないからな。
「それじゃあ、みなさん席についてください、HRを始めますよ~」
伊吹先生が入ってきて、学校が始まった。小白井先輩と出かけるのが楽しみすぎて、この日の授業はほとんど耳に入らなかった。
「よし、着替えたし準備完了だ」
「渉、気を付けて行ってくるのよ⁉いいわね」
「わ、分かったよ母さん」
あまり警備を付けてほしくわなかったのだが、朝出かける準備をしているところをたまたま母さんに見られてしまった。結局警備を付けることになったらしいのだが、まぁ隠れながら警備するらしいのでまぁ許すことにしよう。ちなみに母さんには友達と遊ぶと言っておいた。楓や碧に言うとややこしそうだったので、何も言っていない。というか2人ともまだ寝てるし。
外に出ると一台のリムジンカーが止まっていた。小白井先輩は迎えに来るって言っていたけど、まさかこれじゃないだろうな。
「白川君、こっちだよ~!」
すると、小白井先輩が窓から手を振って俺のことを呼んでいた。いつもの堅苦しい先輩ではなく、明るいテンションで俺のことを呼んでいた。白川じゃなくて白川君って呼んでいるし、数日前まで俺を嫌っていたとは思えないぐらいの違いだ。認められたってだけで、ここまで態度変わるのかな。
「私の隣座りなさい」
俺は彼女の隣に座った。運転席の方から小さな声で「男の子」って言う声が聞こえてくるんだけど、気のせいか。
「それにしても、小白井先輩何だか嬉しそうですね?」
俺は彼女にそう言った。彼女は俺の方を見ると手を当てて笑った。
「ああ、私男の人と一緒に何処かに出かけるのが小さい頃の夢だったの。あの事件以来男の人が怖くなっちゃったからもう二度と叶わないと思ってたけど」
「そうなんですか」
「今でも、男の人は怖いよ?でもね、貴方なら大丈夫だよ?」
そう言うと、彼女は俺に抱き着いてきた。そして甘い声で俺にそう言ってきた。愛結先輩の時は睨まれて困ったけど、まさか今度は抱きつかれて困るとは思っていなかった。男嫌いな小白井先輩がこんなにデレるなんて。
「絶対離さないからね!」
愛結先輩の時も思ったけど、彼女は気に入ったものを離そうとしないのではないだろうか。だとしたらこの状況はまずい気がする。
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