#21:小白井先輩と和解
小白井先輩と和解……できるのか。
視線を感じるんだよな。あれから、数日間愛結先輩と話している時とかに、妙な視線を感じる。確かに男性と言うことで目立つから見られるってことはあった。けれど今回は逆だ。めちゃくちゃ睨むような視線を浴びている。視線の先に向くと小白井先輩がこちらを睨むように見ていた。
「どうしたものかなぁ」
「渉、どうかしたのか?」
「いえ、なんでもないですよ」
「そうか?」
愛結先輩に相談するわけにはいかない気がする。愛結先輩が彼女に注意しても逆効果な気がするし。ちなみに今日は愛結先輩と手を繋いで帰っている。その後ろで楓と五月と由衣が並んで歩いている。
「じゃあ、私はこっちだから失礼するね」
「愛結先輩またねー!」
由衣と愛結先輩がハイタッチしていた。この2人はいつもテンションが高いな。
「あ、由衣ちゃん今日は何する?」
「決めてないけど、楓の家にゴー!」
「そういえば、渉。何か悩んでいることでもあるの?」
五月と由衣が盛り上がっている時、楓が俺にそう聞いてきた。なんで分かったのだろうと思ったのだが、表情を見れば分かるとのことだった。愛結先輩も気づいていたしなぁ。俺ってそんなに顔に出やすいのかな。
「へぇ視線ねぇ。小白井先輩のもので間違いないのだろうけど、こればかりはどうすることもできないわね。」
「そうか……」
楓さんのまさかの呆気ないギブアップ宣言。確かにどうすればいいのかが全くと言っていいほど分からないな。
「時間が解決してくれることを願ったほうが早いわよ、多分。まぁ、渉なら何とかしちゃうと思うけどね?」
「ええ……」
時間が解決してくれるって可能性は正直あるけども、それは逃げただけな気がする。やっぱり彼女にも認めさせたい。俺が愛結先輩に相応しい男であるってことを。
次の日、愛結先輩と合流し登校していた。楓たちは先に学校に行ってしまったので2人で登校していた。校門を通ろうとしたところで小白井先輩が立っていた。彼女は相変わらず俺のことを睨むように見てきた。
「白川。誰の許可を得て、愛結と手を繋いでるのよ?」
「私が許可したのさ」
愛結先輩は何を今更と言った感じにそう言ってきた。
「愛結、それは本当なのか?他の女の子と手を繋いでいるようなやつなのよ、そいつは」
「私は確かにあのとき男というものを自分から遠ざけた。だが、私は彼の優しさに惚れた。一緒にいたいと思った。だから、一緒にいるのさ」
愛結先輩は照れることもなく、堂々と言った。
「あ、そうだ。私生徒会の用事があるから先に行かせてもらうよ。じゃあ2人ともまた後で」
そう言うと愛結先輩は校舎の中へと入っていってしまった。楓たちもいないので、必然的に小白井先輩と2人っきりになってしまうわけで、また何か言われるんじゃないかと若干だが内心はビクビクしていた。しかし彼女から放たれた言葉は俺の想像を絶するものであった。
「仕方がないわ、貴方のことは認めてあげる。」
「え、本当ですか?」
「ただし、これに一緒に行ってくれたらね」
彼女はそう言うと、2枚の紙を俺に見せた。これは何かのチケットだろうか。
「チケットですか?」
「そう、ペアチケット何だけど2人じゃないと行けなくて。でも恥ずかしいじゃない!?愛結と一緒に行くのは。かといってやっと当てたこのチケット、行かないなんてことはありえない。だから、あなたなのよ」
自己完結して、俺のことを強制的に参加させようとしていた。
「ええ……それで何を見るんですか?」
「それはね、『SA●KU●RA』のライブよ!」
「サクラ?」
俺は聞き慣れない単語に首を傾げた。
「そうよ!……って知らないの!?大人気アイドルで、多分今一番人気なのよ!?」
「わ、分かりましたから」
小白井先輩か俺に顔を近づけてくるものだから、俺は若干後ろに仰け反った。
「まぁ、いいわ。じゃあまた連絡するということで、連絡先交換しましょうか」
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