#2:あべこべ世界
2話目です!
毎週日曜日、ほかの作品と一緒に投稿しようかなぁと考えています。
無理せず気休め程度に書いていくのでのんびり更新になると思います_(_^_)_
「渉、目が覚めたのね!」
病室に入ってきた女の人がそう言った。しかし、この人は誰なんだろうか?
「お母さん、心配で心配で」
泣きじゃくっていた。しかし、この人お母さんって言ったよな?どういうことなんだろうか?
「えっと、心配かけてごめんなさい」
とりあえず謝っておこう。すると、お母さんと呼ばれていた女性も、医師の女性も固まった。
「渉が、お母さんに優しい言葉をかけてくれるなんて」
突然抱きつかれたので抵抗出来なかった。医者も顔を赤くして俯いていた。俺は一体どうすればいいんだろうか?
「それにしても、2人とも無事で良かったわ」
「えっと……2人ですか?」
「渉と楓のことよ」
「双子の妹さんですよね?」
楓、無事だったのか、良かった……って衝撃的なことを聞いた気がするんだけど。双子の妹!?楓は俺の幼馴染で、俺の彼女だ。そんなわけがない。
突然部屋が開いた。そこには、別の看護師と俺の幼馴染の一条 楓が立っていた。
「渉、無事だったのね」
楓は俺の元に来て、手を掴んだ。
「2人で話したいの?」
「えっと……はい」
楓が少し顔を赤くしながら言った。お母さんと医者と看護師の3人は20分後にまた来ると言って部屋から出て行った。部屋に出る際に楓に、
「渉に変なことをしたら、楓でも許さないわよ」
と何回も念を押されていた。普通は逆じゃないか!?
「渉、今から話すことよく聞いてね」
まずこの世界は、元いた世界とは違うらしい。俺たちは5人家族で、妹と姉、そして母で暮らしていたのだという。そして、俺と楓は幼馴染ではなく双子の兄妹になっているらしい。ちなみに俺の名前は全く変わっていないらしく、苗字は白川のままらしい。楓は白川 楓という名前に変わっている。
「そしてここからが重要な話なの」
「重要な?」
俺は首を傾げた。楓の持っていたスマホを見た。そこには男性と女性の年齢別の人口区分が乗っていた。
「合計の人数のところを見て」
「え?」
人数比が明らかにおかしい。男性1人に対して女性が1000人もいる。これは一体どういうことなんだ。
楓はさらにこの世界の常識や法律などといったページを見せてきた。読んだ内容を整理すると、どうやらこの世界は男性と女性の関係が入れかわっているらしい。そして男性は複数の妻がいると言う。
「渉、貴方の好きなようにすればいいわ。何があっても支えてあげるからね!だからこんな世界でも、私と恋人になってください」
楓から2度目の告白を受けた。楓は数日前から既に目が覚めていたが、俺は目が覚めたばかりだ。同じ日に告白を受けた、そんな感じがしている。だけど、俺は楓のことが好きだ。この気持ちは変わらない。
「うん、こちらこそよろしく。楓」
「うん!」
「そういえば俺たち双子って言ってたけど、兄弟婚ってこの世界で出来るのか?」
楓が慌ててスマホで調べ始めた。するとホッとした表情を浮かべた。どうやら兄弟婚は可能らしい。兄弟で思い出したんだけど、姉と妹がいるんだったよな?元の世界では俺も楓も1人っ子だったわけだし、一体どんな人なんだろう。楓に聞いてみるか
「楓、家族のことについて教えて」
「まず、さっき5人家族って言ったのは覚えているわよね?こんな世界だから父親はいないわ。母親の名前は恵。さっきあってた人よ」
想像はしていたけど、あんなに可愛い人が母親なのか?まだ医者と看護師と母親の3人しか見ていないが3人ともとても美人だった。
「それから、姉と妹が居て、千佳と碧って言うんだって」
楓は2人の姉妹に既に会っているらしい。毎日学校終わりに俺のことを心配していたのだという。
「それで、私たちがどんな生活をしてたのか知るために、昔のビデオがないか聞いて見たんだけど」
そしてそのビデオのなかから再生した。そこには、姉妹に暴力を振るったり、すぐにきれたりしている俺の姿が写っていた。もちろんここに写っている俺は俺ではない。でも、こんなことをされても心配してくれているらしい。
「渉なら分かると思うけど」
「ああ、分かってる。俺は優しく接するから、こんなことは絶対にしない」
楓の言葉を遮ってそう言った。そして優しく接するこれが俺に出来る償いだろう。
「お兄ちゃん!」
楓との話が終わってしばらく経つと、中学生ぐらいの少女が俺の部屋に入ってきた。
「心配かけてごめんね、碧」
お兄ちゃんと言っていたことだからこの子が俺の妹だろう。俺は優しく頭を撫でた。
「え?お兄ちゃんが優しい」
「碧ー」
俺が頭を撫でると碧が顔を真っ赤にして鼻血を出して倒れた。
「渉がこんなに優しい」
「千佳姉ー!」
姉の千佳まで倒れてしまった。楓の方を見ると呆れた顔をしていた。
「母さん、早く千佳と碧を助けないと」
「はっ!そうね」
「取り乱してごめんね、渉」
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
「気にしないで、俺が勝手にしたことだし」
千佳姉ちゃんがコチラをチラチラ見ている。ひょっとして千佳姉ちゃんも同じことをしてほしいのだろうか。いや、まさか。
「碧も撫でて」
頭を撫でてあげた。事前に準備していたからか、今度は鼻血を出すことはなかった。
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