#14:愛結先輩は緊張する
愛結先輩が家に来る話です。
「ただいま~」
「お、お邪魔します」
いつまでも家の前にいる意味も特にないので、家に入ることにした。愛結先輩は若干緊張している感じだった。まぁ男のいる家に入るのは始めてだと言っていたし、若干緊張しているのかもしれないな。
「おかえりお兄ちゃん!」
「ただいま」
「お、お邪魔します」
いつも通り碧は元気なおかえりを言う為に玄関まで走ってきてくれた。いつも通りの表情だったのだが、隣にいる愛結先輩の方を見ると慌て始めた。
「お、お兄ちゃんがまた女の人を。千佳お姉ちゃん~」
そう言うと碧はリビングの方へ走って行ってしまった。そういえば、今日は千佳姉は今日は学校ないのだろうか。だとしたら面倒くさいことになりそうだな。
「私が2人には説明しておくわ。渉は先に部屋に行ってていいわよ」
いつの間にか家の中にいた楓がそう言ってくれた。正直俺が説明しても誤解されたりしそうなので、ここは楓の好意に甘えておこう。
「分かった、じゃあ皆先に行くか」
「はい!」
「りょー」
「分かりました」
五月と由衣と愛結先輩の3人を連れて先に俺の部屋に向かった。俺の部屋の前に着いたのだが、やはり緊張しているな。緊張したままだと何かこっちまで気まずくなるんだよな。どうやって緊張をほぐしてあげればよいのだろうか。
「愛結先輩、リラックスです!渉君なら何しても怒りませんよ!」
「そうそう、肩の力抜いてー」
って、五月さん。何しても怒らないという訳でもないんですけど。まぁ、確かにこの世界の男性に比べればっていうのはあるかもしれないけど。
「失礼するよ渉君」
「はい!」
それでも愛結先輩の緊張は解けたみたいで良かった。五月の時はあまり感じなかったけど、女性を自分の部屋に招くのはやっぱり恥ずかしいものがあるな。
「それで、部屋に来てもらってけどどうやって解決するんだ?」
「そうですね、渉君と何か一緒に遊べばいいんじゃないですか?」
「ゲームとかー?」
ゲームか。それ昨日と結局変わらないというか、何で目を輝かせて俺のことを見ているんだ。まさかこいつら単純にゲームで俺をボコボコにしたいだけなんじゃないか。
「ゲームしたいだけだろ?」
「え、違いますよ。渉君とじゃれあいたいだけです!」
「裸で一緒に寝るー」
ああ、それか。いや何か目を逸らしているような。何かゲームを口実にそれがしたかったのだろうか。流石に恥ずかしいのだが。
「ふぇぇ」
「愛結先輩!」
愛結先輩が裸って言葉を聞いたからか、顔を真っ赤にして倒れてしまった。おそらくこの原因を作ったであろう由衣は、首を傾げている。五月は愛結先輩を揺らして起こそうとしていた。
「何この状況」
「楓、愛結先輩が!」
「え?」
「全く心配したじゃない、愛結先輩も大丈夫ですか?」
「ああ、取り乱してしまってすまない」
結局遅れてきた、楓が事の始末を全て行ってくれた。慌てふためく五月を落ち着かせ、愛結先輩を優しく起こして、由衣に怒る。
「それじゃあ早速ゲームしようよー」
「そうだな、じゃあ俺が取ってくるよ」
複数人で遊べるゲームがいいかな。えーっと、こないだやったゲームだとつまらないから。すると突然俺の足がつった。
「渉君、大丈夫か……い?」
いてて。前が何も見えないな。顔も何かに挟まれているような。俺はそっと顔を後ろに下げた。そこには顔を真っ赤にしている愛結先輩がいた。
「え、えと。これは……。って愛結先輩!」
愛結先輩は俺と目が合うと倒れてしまった。愛結先輩に近づこうとした瞬間、俺の頬に痛みを感じた。
「渉の変態!」
倒れながら、そう叫ぶ楓の声を俺は聞いた。
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