#13:幸せにすること
最後若干、話が重いかもしれません。
「白川君、ちょっと生徒会室に来てもらえないだろうか?」
「あ、はい」
俺は生徒会長に呼ばれ、差し伸ばされた彼女の手に触れた。それを見かねたのか五月が間に割ろうとしていた。
「あら、どこに行くのかしら?」
「楓?!」
「私もいるよー」
生徒会長に手を引かれて、教室を出たところで楓に会った。この世界が男性が少ないからとはいえ、楓には悪い事をしていると思う。
「島森会長、何のようですか?」
「渉君と2人で居たいと思っただけだよ」
彼女は顔を俺の耳に近づけて、そう言った。その会長の大人びた雰囲気に思わずドキッとした。
「会長が渉君を誘惑してるよ⁉」
「ねー大変だねー、五月ちゃんどうしよー?」
五月と由衣は軽い様子ではあったが、そんな呑気に見てるなら助けてほしい。2人に助けてと視線を送ってみたのだが、彼女たちは揃いも揃って親指を立てた。
「ちょっ、痛いから」
「あ、ごめんなさい」
「ごめん」
俺が伝えると俺に対して謝った後、手を離してくれたのだが楓と会長はお互い睨みあっていた。けれど、会長俺に用事って言ってたけど絶対私用なんだよな、これ。
「会長」
「む、私たち友達になったよね?なのに会長呼びは酷いじゃないか?愛結と呼んでくれたまえ」
「え、愛結……先輩」
「うむ、まぁいいか」
会長のことをいきなり名前で呼ぶのは俺には難しかった。一応先輩に対する敬意が必要だから。前世で仲の良かった先輩なんていなかったし、どう接していいのか分からない。だから一歩引いているところはあるのだろう。先輩もそれを察していたのかもしれないが、妥協してくれたのだろうか。
「それで用なんだが、私の男嫌いを直したくてな……それで今日は生徒会の活動はないし、ゆっくりできると思ったのだが」
「それなら私たちは帰るわ」
「ちょっ、楓?」
楓はそう言うと俺の手を握った。楓は早く帰りたいらしい。
「じゃあ、会長も渉君の家に行こ!」
「ナイスアイディアー」
「あーそれならいいですよ」
どうせゆっくりするのならば、学校よりも家の方が落ち着くからな。それを楓に言ったのだが、頬を膨らませていた。やばい、楓が微妙に怒っているような気がする。
「じゃあ、早速行きましょ会長!」
「行こー」
「う、うむ待ってくれ」
五月と由衣が愛結先輩を連れて俺たちの家に先に行ってしまった。愛結先輩は凄い戸惑っている様子だったが、何も気にせずに男が住んでいる家に来るとは……やっぱり何か危なっかしいんだよなあいつら。でもそんな彼女たちだからこそ。
「渉、こっち向いて?」
「なんだよ……」
突然楓が俺にキスをしてきた。突然のことに凄く驚いた。恋人になってからは手を繋ぐ時も恋人繋ぎにしたりとかはしていたのだが、あまりキスとかはしていない。楓は頬を赤らめて恥ずかしがっていた。
「どうしたんだ急に⁉」
「別に……渉の一番は私ってことを示したかっただけよ」
可愛い……そう思ったその瞬間俺は楓の事を抱きしめていた。しかし、俺は周りを全く見ていなかった。故に、ここが俺の家の前だということに気づいていなかった。
「楓ちゃんずるーい!」
「楓ちゃん私もー」
「渉が認めてないからだーめ」
先に俺の家に着いていた3人にばっちり見られていたのだ。文句を言う五月と由衣の声に反応した楓が振り返ってそう言った。3人とも不満を言っていたけども笑顔だった。
「渉君、君は良き友を得たな」
「そうですね」
ひっそりと近寄ってきた生徒会長が俺に言った。本当にその通りだと思う。俺は楓をそして、こいつらの笑顔を守ってやりたいと思った。あの時のように後悔はしたくないから。誰かに守られて、守ってあげられない。今でも時々思い出す。俺と楓を助ける為にあいつは……あの時泣いていた。
「2人で幸せになってね」
そして消えそうなほど小さい声でこう言った。俺はあいつの幸せを守ってやれなかった。だからこそ彼女たちを全力で守る……あの時のような後悔はしたくないから。
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