#102:日向さんと月夜さんとデート
翌日。俺はデートに行くことになっていた。相手は日向さんと月夜さんの二人だ。俺の彼女たちにはそれぞれ後で何かしてあげる予定なんだけど、彼女じゃない二人も命の危険を冒してでも俺のことを助けに来てくれた恩がある。
そんなわけで彼女たちに何かしてほしいことがあるか聞いたところ、俺とデートしたいとのことだった。
「こ、こら。渉にそんなにくっつくな」
俺と手をつないでいる日向さんと月夜さんを見て、文句を言う姉さん。彼女もまた監視役とか護衛役の意味で今日俺たちと一緒にいる。
「駄目なのです!今日は私たちのデートなのです」
「そうね。千佳、申し訳ないんだけど、今日は私たちに譲ってほしいわ」
「ご、ごめん。姉さん。明日一緒にいてあげるから」
「明日私は大学があるんだけど……まぁ偶にはサボっていいか」
「それでいいの?……千佳姉」
俺は白い目で彼女を見つめていた。そういえば明日から平日か。とはいえ俺は柚香から学校に一週間ほどは行かないようにと言われていた。理由としては学校に組織のスパイがいたからだ。敵の組織は壊滅させたので、大丈夫だとは思うが管理体制が整うまでは待ってほしいとのことだった。
何やら学校にもぐりこませる生徒の増員とか、教師との関係強化とか色々することがあるみたいだ。とはいえ、外出は特に禁止はされていない。ただ今まで以上に周りに護衛が増えているような気がするけど、二人には言わないでおこう。雰囲気をぶち壊したくはないから。
「それで今日はどこに行くんですか?」
「服屋に行こうと思っているわ。渉君の好みの服とか全然知らないから選んでほしいなって?……恵理は少し退屈そうにしているように見えるけど、実は結構張り切っているのよ」
「服選びは苦手だけど、渉君のために頑張るなのです」
「渉の好みは私だよ?」
姉さんが二人にからかうように言った。はぁ、まぁ姉さんのことが好きになって付き合ったから間違ってはないんだけど。今聞かれているのは服の話だからなぁ。とりあえず、二人に何着か試着してもらって選ぶという方式を取ることにした。ちなみに二人が試着室に入っている間、ずっと姉さんが俺に抱きついてきた。護衛のためという名目なんだろうけど、ただ抱きつきたいだけなんだろう。
「着替えから出たら千佳が堂々と抱きついていてビックリしたなのです!」
「そう?私は何となく予想してたわよ。大体二人きりになって千佳が我慢すると思う?」
「確かに思わないなのです」
「それにまぁ別にいいんじゃないかしら?私たちのデートとは言っても、目の前で見せつけられるのは少し切なくなるのも分からなくもないわ」
「いいんですか月夜さん?」
「うん。そうだね。本当は渉君ともっと手をつないでいたかったけど……」
月夜さんはそう言うと、俺から千佳姉に視線を移してニッコリと笑って見せた。そして俺の手を離した。
「ほら、千佳手をつないでいいわよ?」
「え?いいの?」
「うん。一日中ずっと渉君と手を繋いでいたら、流石に心臓が持たないし構わないわ」
まぁ恐らく嘘だろう。初めてあった時であればその可能性は十二分にあったけど、今の彼女は俺と何回も接しているし、心臓が持たなくなるほどの事態になるとは思えない。多分千佳姉を気遣ってのことなんだろう。
「ありがとうございます。静香さん」
「うん……え?」
「ななな……静香いつから渉君とそんな関係になったなのですか!?」
「いや、知らないわよ」
「うん。ありがとうの意味を込めて呼んでみたんですけど……駄目でしたか?」
「そんなことないわよ!?」
前世だったらあれだけど、この世界で男子に名前で呼ばれることは多分滅茶苦茶嬉しいんだろう。そう思って言ってみたんだけど、反応を見る限り間違ってはいなかったんだろう。ちなみに静香さんはデートの間、ずっと幸せそうだった。