#101:楓と桜
アフターストーリー開始です。ここから先はのんびり書いていこうかなと思ってます。
とりあえず、本編と同じ頻度で投稿していく予定です。
「渉、渉っ!」
「おわっ!?……心配かけてごめんな、楓」
「本当だよ、もう」
組織のボスを気絶させた後、目に涙を浮かべながら楓が俺に思いっきり抱きついてきた。後ろから桜が少し呆れたようにそういいつつも、俺と楓を二人まとめて優しく包み込むようにして抱きしめた。
「渉、良かったよぉ」
「光沙先輩、分かりましたから落ち着いてください」
「まったく、強引に抱きしめて渉君がつらそうにしてるじゃないか?」
「あっ、ごめん渉」
愛結先輩に注意されて、光沙先輩は俺を離した。おそらく俺のことを相当心配していたんだろうな。普段感情を表に出さない由衣でさえ、号泣していたから。どれだけ心配をかけてしまったのかが、嫌でも感じさせられた。
しばらくして、柚香が手配したであろう警察の人が入ってきて、ボスと呼ばれる女性を拘束して連れ去っていった。
「あれ、あたしたちはいいのかい?」
「最後は協力したとはいえ、もともとは組織の人間ですからねー」
「構いません。その代わり、お城でしばらく仕事をしていただくことにします。罰の期間は多少給料は下がりますが、それが終わったら辞めてもそのまま残っていただいても結構ですよ。最も前者の場合は普通の給料をお支払いする予定です」
困惑した二人に、柚香はそう説明した。
「それなら喜んでさせてもらうよ。しごとがもらえるだけでありがたいってもんだ」
「ふっふっふーもちろん私も参加させてもらいますよ。恵理待っててくださいね!お姉ちゃんは罪をささっと償ってきますから」
「お前本当にその気があるのか?」
「まぁまぁ。メイド長は厳しいお方ですけど、頑張ってくださいね」
柚香がそう言うと、理科さんは顔を真っ青にして体を震わせた。
「ただいまー」
俺たちはそのまま自宅へと戻った。事件の直後ということもあって、王城に泊まらないかと柚香に聞かれたのだが自分の部屋の方が落ち着くということもあって自宅に戻ることにした。とはいえ、あんなことがあった手前なので、皆が警備という名目もかねて、泊まりに来ることになった。
「えへへー渉」
「お。おう」
楓が滅茶苦茶可愛い。部屋に戻るなり、そう言って再び抱きついてきた。
「楓ちゃん、幸せそうだね」
「うん!」
「ふふふ。優君が攫われたとき凄い不安そうだったからね。勿論私もだけど」
「ああ、悪かった」
「ふふっ。それじゃあ罰として今日は一杯イチャイチャしよ?」
桜はそう言うと、楓の方を見た。
「う、うん。渉」
楓はそう言うと、俺のことを抱きしめた。そして顔を近づけると俺の唇にそっとキスをした。
「……えへへ」
学校じゃ絶対に見られないであろう、可愛らしい彼女の表情を見れて滅茶苦茶幸せだ。学校でもいちゃついてくるときはあるけど、周りの目があるからか基本はこんなに可愛らしい表情を見せないことが多い。
「ほーら、渉君。私も」
桜も楓の真似をするようにして、抱き着くと、俺にキスをしてきた。今俺の部屋には俺たち三人しかいないので、普段は一歩身を引いて見守ってくれてる桜が積極的にイチャイチャしている。
あんなことがあった後ということで、皆楓の気持ちを察して、俺たち三人だけにしてくれたらしい。誘拐とか前世だと平和な国すぎて考えられなかったからなぁ。最初に聞いたときはだいぶショックを受けていたらしいけど、今は俺が戻ってきてすっかり元通りになったらしい。俺を助けに来る際も、桜や由衣が必死に説得してくれて心を落ち着かせてくれていたみたいだ。
「ふわぁ、でも色々あったから滅茶苦茶疲れちゃった」
「お疲れ様、楓」
「渉、膝貸して?」
「いいけど?」
俺は正座をした。すると、彼女は俺の膝に頭を乗せて横になった。
「あはは、楓ちゃんもう寝ちゃったね」
「ありがとな、楓」
「それじゃあ私は肩を借りよっかな?」
桜はそう言うと、肩を俺の体に預けてきた。