#10:体育
今回はほんの少し攻めてみました。
メイドさんについてはいつかもう少し詳しく書くと思います。
翌日、俺らのクラスは体育があるらしく、体操着をメイドさんから受け取った。
事故以来使っていなかったものだそうなので、俺の部屋には置いてなかったのだという。前回の体育の後メイドさんが洗濯したらしいのだが、その後になくなっていたらしい。今日になって母さんがメイドさんに落ちてたから拾っておいたと言って渡したらしい――何となく想像できてしまった気がする。
この世界に来てからはまともに体を動かす機会がなかった。別に元の世界で、運動が特別好きだったとか、得意なスポーツがあったというわけではなかったけど、楽しみではある。
高校生にもなると体育は流石に男女別だったのだが、この世界の学校ではそうも行かないらしい。俺は今女子たちと一緒に体育を受けている。別に裸という訳じゃないんだけど、制服よりも体操着は当然ながら薄い。故にあれが強調されるのだ。――諸君には言わなくても分かるだろう。
「渉、どうしたの?」
五月が俺の方を覗いてきた。しかし、やはり男ならばまずそこに視線が向いてしまう。しかし、五月は俺がどこを見ているのかいまいちピンと来ていないようだ。
「それで、どうしたんだ五月?」
俺は視線をそらして、さらに話題を逸らした。つまり、緊張しているというわけだ。うん、俺何言ってるんだろう。
「2人1ペアで組むことになったんだけど、渉一緒に組もう」
「喜んで」
返事何て決まっている。勿論はい、だ。楓がいたら楓と組んでいたけど、いないなら話は別だ。って今から俺たちは何をやるんだ?そう思いつつ周りの動きに合わせた。どうやらストレッチを……ってええ!?
やけに疲れた。体育が始まって10分しかたっていないのに、疲れた。だって五月と体が触れあうために五月の武器が俺の精神に攻撃を仕掛けてくるんだもん。俺だって健全な男子高校生何だ!さらに言えば、他の女子からしても、俺が体操しているのは目の保養になってしまうらしく、好意の視線を受けた。ちなみに、五月に向けられている視線はあれだろう、羨望と嫉妬だ。あれは本当に精神が削り取られる。前世で目立たない普通の高校生だった俺が楓と話しているときによく受けた視線だ。慣れないと本当に辛い。だけど、五月は気にしていない……というか多分気づいていないだろう。どうして五月への嫉妬の感情を俺だけが感じ取ってしまったんだ。
今日は50m走らしい。5レーンあるので、5人ずつ走ることになった。俺は中央のレーンを走ることになり、左隣は委員長、右隣は五月が走ることになった。両端の女子2人は俺と一緒に走れるということで喜んでいた。――でもごめんね、君たちの名前知らないんだ。
「渉、負けないわよ!」
「白川君、無理はしないでね?」
五月には宣戦布告された。委員長は俺のことを気遣ってくれたが、50mぐらいどうってことない。50m先で先生の持つ旗が下がった。それと同時に俺と五月は走り出した。委員長は少しスタートダッシュが遅れたらしく、既に俺の後方にいるので見えない。一方五月とは僅差で負けていた。残り5m、俺は更にスピードを上げた。そしてゴールテープ目前で五月を抜いてそのままゴールした。結果は7秒32だった。五月が7秒35、委員長が9秒21だったらしい。
「渉、いつの間に早くなったんだね!」
「白川君、早くない?私足遅い方だけど……それでも男子に負けるなんて」
周りの女子たちがキャーキャー騒いでいた。聞くと、この世界の男性は運動が苦手な人がほとんどで、10秒台なんてのもゴロゴロいるらしい。ましてや女子と競えるレベルの男子何てそうそう見れるものではない。故にみんな興奮していたらしい。
「白川……陸上部に入らないきゃ?」
先生が俺の方を見て冷静さを装って陸上部に入らないかと言ってきた。――少し噛んでいたのは聞き逃していないぜ?部活かぁ……今の俺は無所属で、どの部活にも所属していない。何処かの部活に入ってみることも考えていたのだけど、やっぱり文化部のほうがいいかなと考えていた。
「ごめんなさい、陸上部には入らないと思います」
「そうか」
俺が断ると、先生は残念がっていた。
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