プロローグ
幼い頃から空想に明け暮れ、可能ならばそれを実行する事に、一種の快感を感じていた僕は、高校生になる頃には、ある程度の成熟した思考を持っていたんです。ただ、それでは同学年の仲間たちとの友情を築くのは難しいだろうと感覚的に思ったんです。そんな時、たしか『鈴木先生』という漫画原作の映画を観て、『人間は様々な社会の中で、それに適した人格を演じなければならない。』という、いたって簡単な考え方だが、僕にとっては革命的であり、発明的な生き方と出会いました。空想に明け暮れる自分と、仲間とふざけ、時には切磋琢磨する自分を両立し、次第に双方が真の自分になりました。そんな、空想という非現実と、日々の日常のギャップからこのストーリーを思いつきました。帰りの電車での出来事ですね。当時から漫画や脚本等のストーリーに関わる仕事をしたいと考えていたため、大学進学後も延々とこのストーリーについて考えていました。
キャラクターの名前は何故これなのか?キャラクターの発言。伏線。全てに意味がない作品は糞と同等のだと思っていて、今の作品に対して反面教師の気持ちで書き切ります!!
何か変わったことと言えば、二日前に雪が降ったことだろうか。雪は空と同化して、ビルの淵から降り注いでいる様に見えた。
私の通う高校の校舎は山にへばり付く様に建っている。その校舎に立てかける様にある坂道では、並木と言うには無秩序な木々が、山からはみ出しており、それが屋根の役割を必要最低限果たしていた。溶けた雪が雨粒の様に滑り落ち、乾いたコンクリートが次第に湿を帯び、暗くなり始める。
左手に見える校舎をそのまま左肩に乗せる頃合いには、職員用兼、来客用の駐車場が見えてくる。大きく吹き抜けた空がそこにはあった。
もし、私が地面にぶら下がっているのなら今すぐにでもしがらみを解いて、あの無限の白に落ちていきたい。そう思いながら視点を向かいの山際に合わせると手前には、所有者が意地でも塗り直さない意思が読み取れる、乾いたターコイズ色のベンチがあった。座るために移動していた僕を制止させた街並みは、熱を失い、まるで生きていない様に見えた。そもそも生きてはいないのだが、時間が止まったとでもいうのだろうか。山際より左側から伸びている線路から電車がこの街にやってくる。この事実により、僕の感覚は早くも破綻した。その電車は一限には間に合わず、出勤するにも遅い。言わば、特別な景観を与える、今や特に意味のない電車だ。そんなことを考えていると、時間の流れていないこんな街は、いよいよ僕にとっては意味のない空間だと思ってしまう。消極的な思考を積極的に散らしていると、健全な生徒よりも遅れて耳に届いたぼんやりとしたチャイムは、今の僕には何の意味もない筈なのだが、経験と僅かな背徳感は反応してしまう。人間らしい自分が嫌になり、視界が生暖かく揺らぐのだが、込み上げてくるそれを意地でも流さなかった。何故なら頬を伝うことで、自らの生を感じてしまうから。だから言いたい。私の生きる意味を作った同胞に捧ぐ。僕もここから消してくれ、と。
何か変わったことと言えば、二日前に雪が降ったことだ。鮮明に覚えている。雪が頬に触れること無く、溶けたのだから。
次回もよろしくお願いします。