ふとよぎる
明日、死ぬかもしれない。
ふとそんな事を考える。
明日死んで、私は後悔しないだろうか。
そんな時はひとつずつ確認して、どうするかを決める。
「部屋はまぁ、綺麗。見られても困らない、かな」
見られたくないものは少しあるけど、死んだ後ならどうでもいい。
「親孝行、生命保険でいいよね。借金もないし」
育ててもらった分の恩は返せなくても、かかったお金くらいなら返せる。
「趣味・・」
やってみたい事はまだたくさんあるけど、今日出来なくて後悔するほどの事じゃない。
「結婚は元々興味ないし・・」
誰かとずっと一緒にいるよりも、ひとりでずっと過ごして、たまに関わるぐらいが負担も少なくて自分には合ってると、三十になる頃気付いた。一応、絶対に結婚はしないと思っているわけではないけど、絶対にしたいという訳でもない。
「欲しいもの・・」
広い農園付きの家か、キャンピングカー。長く一つの場所に留まる事が出来ない質だから、おそらく最終的にキャンピングカーに落ち着くだろう。
「一番食指が動くのがキャンピングカーだね。明日死ぬかもなんて思ってられないや。働けなくなる前にお金貯めて旅に出たいなー」
死んだら幽霊になって、いろんなところをぼんやり散歩できればいいのに。
「しょーもなーい・・」
明日死ぬかもしれない。
そう考えると少し頭がすっきりする。やりたい事が見えてくる。
自分の優先したい事が少しだけわかる。
「仕事、増やすためにはもちっと体重落とさなきゃだわ・・」
人はいつか死ぬ。でもそれがいつかは分からない。
だからこそ今を楽しみ、先の楽しみを作り、ゆっくりと進めていく。