第四章「ユウスケ」
日が照る群馬県の教習所。
「はい。今日は初めての実習だね。じゃあ回転数を合わせてクラッチをゆっくり離して発進してね。」
ぉぉぉおん
「アクセル踏みすぎだよ」
「すみません」
ユウスケは言った。
ぉぉぉぉ。クラッチを離し発進した。1発で。
「あんたすげぇなぁ!ハッハッハッ!!」
「へへへへ。」
「こんなすげぇやつ久しぶりだよぉ」
「あのー、どうやって止まんでしたっけ?」
「え?うわぁぁぁぁぁぁぁ」
教習車のA1は勲章をバンパーにつけるのであった。
「きみ!ブレーキは真ん中だぞ!」
「へへへへ」
「まぁいい。続けよう。」
「すみません」
同じようにユウスケは発進した。と思ったら一気にアクセルを踏み込んだ。
おぉおおおおおおん!
「ちょ、君何やってるの?」
「少し揺れますよ!」
ユウスケは曲がり角の手前でブレーキを踏み荷重移動しハンドルを傾けた。その瞬間、ユウスケはサイドブレーキをかけた。
「止まれ止まれ!!!おい!ふざけてんのか?」
真ん中のペダルを踏み、傷のついたA1を止めて言った
「え?こうすれば内輪差を気にしなくていいかと……」
「はぁ……ダメだこりゃ。」
数ヵ月後ユウスケはその教官のもとへ駆け寄った。免許証を持って。
「受かった〜」
「試験官から連絡を受けたぞ。」
「なんだ知ってたのか。」
「ちげぇよ。もう試験受けに来ないで欲しいから合格にしたって。」
「あ、予約してた試乗いかなきゃ」
教官は戒めた
「サイドブレーキは止まってからだ」
ユウスケはその戒めを耳にも入れずタイヤ痕だらけの教習所を出た。