第三章「暑くて寒い峠」
マサキは悟った。こいつは俺と勝負したがってる。傷をつけたくないマサキはこう言った。
「勝負はしねぇぞ」
塊のドライバーは嘲た
「逃げんのか?二十年くらい前の車じゃ俺には到底かなわねぇもんなァ!」
マサキは悔しかった。でも、ここで傷をつけたり、壊したりしてしまったら終わりだ。こらえるしかない。
また話しかけてきた。
「 羊の皮をかぶった狼なんて嘘だ。身も心も羊なんだな 」
マサキはその言葉に強い怒りを覚えた。
「年式なんて関係ない。新しいものにばかりくっつくお前には分からねぇだろうがァ」
「なんやとォ」
「仕方ない。バトルしてやる。ただしこのコーナーの先の直線でゼロヨンだ。」
塊のドライバーは笑っていう。
「峠なのにコーナーも使わねぇのか?」
「嫌ならいい。新しいなら勝てるんだろ?言葉に責任もてよ」
「チッ!仕方ねぇ」
2人はマシンをストレートに動かした。マサキは言った。
「俺が3回クラクションを鳴らしたらスタートな」
静寂が訪れる。
プー
静寂が破れ咆哮がこだまする。
プー
緊張感が漂い視界はいくらか悪くなったような気がする。
プー
ギュァァァァァアアアアアアアアアアア
秘められたパワーが開放された。
レッドゾーンまでひっぱり素早くシフトアップ。その繰り返しだ。単調だが楽ではない。
勝負はあっという間に終わった。
マサキの圧勝だ。
シビック乗りが言った
「お前速いなァ」
「4WDのRには負けるって分かってたんだろ?なんでこの勝負受けたんだ?」
負けた走り屋は言う。
「FFのシビック乗りの俺にはゼロヨンといわれて負けはわかった。でも逃げるのはダメだ。走り屋としても、人間としても。」
月に照らされた静かな峠にまた一つドラマが生まれた。