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赤谷家の諸事情  作者: dolce
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赤谷舞の大切なもの

私、赤谷舞は高校二年生である。

兄の式とは昔から仲が良くない。会えばすぐ喧嘩する。

今日だってそうだ。私が自分の部屋から出てダイニングルームに行こうとしたとき寝坊して急いでいた兄がぶつかってきたのだ。

私はこの間体育の授業で捻挫してまだ、なおっていない。なのに、兄がぶつかってきて、よろけたときに捻挫した足から「グキッ」と音がして鋭い痛みが走ったのだ。あまりの痛さに朝からとても大きな声で叫んだ。兄は当然謝ってきたが許す気は全くなかった。だって、そのあと学校を遅刻してまで病院に行った結果ひび割れだということがわかったのだ。

捻挫だけならあと一週間で治るはずだった。なのにひび割れになってしまったので一ヶ月に…。

全部あのバカ兄のせいだ。

そして、私は陸上部のエースだ。今月の末に都大会があった。だが、それも怪我のせいで選手交代させられた。

そして、顧問や、部員などからの厚い人望もなくなった。

今日更衣室で着替えているときに廊下を歩く部員が「まじで、赤谷先輩ないわー。日向先輩もまぁいいけどさー、赤谷先輩応援してたのに!!」と陰口を言っていた。

私は静かに怒りを押さえた。だって、全部バカ兄のせいなのに…!

私は急いで家に帰った。

バカ兄は能天気にも自分の部屋で寝ていた。

寝言もいっている。私は「もう!」といって自分の部屋に駆け込んだ。どうしてなのよ。私はただただ都大会のために努力を惜しまずやってきたのに。こんな怪我のせいででられないなんて!!

私は泣きじゃくった。涙はいっこうに枯れなかった。

あーあ、もういやだ。なにもかも。親の借金もそうだし、日常も。妹、弟たちの面倒を見るのも疲れた。死にたい。死にたい、死にたい。私は近くにおいてあったカッターを手に取り手首に当てた。血がでて死ぬんだよね…。もういいや、死のう。だが、私がカッターを滑らせようとしたその時、「バカ!」と言ってバカ兄がカッターをドアのすみに投げた。私はやっと正気に戻った。

「式…ごめんね…。」と謝った。するとバカ兄は「お前が死んだらみんな悲しむ。俺もそうだよ。多分二度と立ち直れない。お前は俺の大事な家族だ。妹だ。これから先もずっと大事だ。だから死ぬのだけはやめてくれ。」と泣き叫んだ。私も一緒に泣いた。

バカ兄はただのバカ兄じゃなかった。いつも、失敗をたくさんするけど、私のこと大事に思ってくれてた。ありがとう…。


そしてその後、葉と華それから尚と春が帰ってきたが兄は何も言わなかった。そのあとも普通に接してくれた。

そして、また笑えた。

そのあと、私は深夜の一時近くまで陸上ノートを書いた。都大会には私の代わりに同級生の日向桃太がでることになった。日向のために私ができるのはこれまでの都大会で優勝した先輩の記録をノートに写して渡すことくらい。だからこれだけはやってあげたいんだ。昔からの陸上仲間で足の速い日向の力に少しでもなればいいな。私の憧れの選手…なんだから!

そして次の日、日向にノートを渡した。すると日向は無邪気に笑って「ありがとな!俺、お前のぶんまでがんばるよ!」といって走っていった。それも耳を赤くして。私はうかつにも(ドキッ)としてしまった。そう、私は出会ったときから日向に恋していた。だから今のは脈ありなんじゃないかとな気にする自分がいる。

まぁ、この気持ちはまだ秘密だけどね!

そして、時は過ぎ陸上都大会の日。陸上強豪校がたくさんいた。私の知ってる選手もいた。それは、以前同じ中学で一緒に陸上をしていた三神理子だった。その子は中学の時もわりと戦力がある子だったのでいくら足の速い日向でも油断はできない。

そして戦うとき。パンッと音がなって一斉にかけていく。やはり理子は速かった。先頭をキープしている。だが、それに続いて日向もスピードをあげてきた。そして最終的な結果は日向が見事優勝だった。私や部員は大泣きだった。日向は「おいおいー泣くなよー!」と言って場を笑わせた。日向も笑っていた。そして、日向がベンチに座ろうとしたとき体育大学の陸上部コーチが来て「君の走りは素晴らしかった。さっき準優勝の子にも声をかけたんだが、ぜひ君をこちら側から私たちの大学に推薦した。どうだい?」とまさかのスカウトがかかった。日向は驚き戸惑っていたが少しの沈黙のあと「そうお声をかけていただいてとてもうれしいです。ぜひ、そちらの大学に入って陸上を学びたいです。」と答えた。だが、その大学は都内の大学ではなく北海道の大学だ。あわよくば海外留学もある。そしたらもう日向にあえないかもしれない。そう思うととても悲しくなった。でも、私も大学に入ろうと思ってたから進路先をそこにしてもいいな。まだ時間はある。なるべく日向の近くで日向の夢を、実現させるところを見たい。私はそう思った。そして学校に戻り解散したあと久しぶりに日向と帰ることになった。日向は「まさか、スカウトもらえるなんてなー」と陽気に話していた。私も「ねー!日向すごいね」と言って一歩前を歩く日向の背中を見つめた。日向…好き。と声に出して言えたならいいのに。そう思ったときだった。「好き。」と日向が言った。私は「え?」と聞いた。すると日向は「だからー俺はお前のことが好きなんだよ。ノートをくれたときもすっごいうれしかった。つきあってくれない?」と言ってきた。私は思わず涙を流した。日向が私のこと好き?そんな夢みたいなこと…!私はすぐに「私も好きだよ!ぜひ、付き合おう。」と言った。そして、私たちはカップルになった。一年後離れてしまうかもだけど、この気持ちは変わらない。あっ…大切なものがひとつ増えたんだ。バカ兄の大事なものを思う気持ちってこんななのかな?なんだかとても温かい。

色んな人にありがとうっていいたい。

ありがとう、ありがとう。

私と日向は手を繋いで方を寄り添い合い帰った。

その日は最高気温3℃の寒い日だったのに私のなかでは春みたいに暖かかった。

私、赤谷舞は色んな人たちに支えられて幸せです。

次話にご期待ください。

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