踊る女
怪談のつもりで書きました。
需要があるかはともかく、投稿してみます。
お暇があれば、ご感想いただけるとありがたいです。
高校の同級生のTから一通のメールが、届いた。時間は午後11時数分前だった。
どうやら大学の仲間としこたま酒を呑んだ帰りらしい。進学せずに地元企業に勤める私からすると、うらやましい身分だ。
メールには写真が添付されていたが、どこかの地下鉄のホームが写っていた。
話しをわかり易くするため、メールの文章の一部を抜きだしたいと思う。
Aちゃん、元気か〜(≧∇≦)
中略
いま、地下鉄○○駅や。
おもろい女がおるさかい、
みーさ(笑)
見事な酔っぱらい
ダンスやで(≧∇≦)
メールに添付されていた写真には女どころか誰も写っていなかった。無人の駅のホームの写真。
飲み過ぎだぞ、
何も写ってない(苦笑)
しかたねぇ、奴だなとメールを返信する。
なに?写ってない。
ちゃんと写ってるぜ。
Kにもおくったら爆笑メールが
来たからな、さてはお前酔っぱらいだらられ(爆笑)
共通の友人、K君にもメールしたらしい。私は嫌な寒気を感じた。
K君やTには女が見えているらしい。同時にからかわれているのかも、と思い私はTの携帯に連絡をいれた。
「よう!Aちゃん」
「Tか?あの写真、ホントになんも写ってなかったけど。」
「またまた〜、ほれそこでダンスして…あれ?おらんわ。」
「T、なんか変だぞ。そこから離れろよ。」
「ん〜…ほんの少しやで、目を離したん。まさか落ちたんか。」
訝しむTに私は再度、その場を離れるように言い募ったが、聞こえていない様子である。
「変やなぁ…あれ?」
不思議そうな声の後、通話が突然途切れた。その後何度掛け直してもTは電話を出なかった。
翌朝、実家に電話があった。Tのお母さんからで、Tが電車に引かれて死んだという。Tが酷く酔っていたことは、関係者の証言から警察に伝わり、事故として処理されたそうだ。葬儀に出た時、あの晩に同じくTとメールのやり取りをしたK君にあった。
私がその事に触れると、K君は青い顔で私に言った。
「知らん…俺はなんも知らんからメールもけしたわ。お前もそうした方がええわ。」
そういうとKは振り返りもせずに、その場を去って行った。
K君の忠告にあの夜の嫌な気分が蘇り、私はメールを削除しようと携帯を開いた。
なぜかあの日のメールが、開かれていた。妙に思ったが私はなんとはなしに写真を確認した。
その瞬間、私は携帯をとりおとしていた。
誰も写っていないはずの地下鉄のホームの写真に、奇妙に手をバタつかせ、片足を持ち上げた女が写っていた。俯いて垂れ下がった長い黒髪で顔は見えない。
女は確かに踊っているように見えた。私は訳が解らない恐怖に駆られ、慌ててメールを削除した。
翌日の夜、Tの携帯からメールが届いた。また写真が添付されていた。私は震える指で写真を確認した。そこには女は写っていなかった。写っていたのは線路へと落ちて行くTの背中だった。
私は迷わずメールを削除した。
翌日、K君が昨日の葬儀の帰りに
線路に転落して電車に引かれて死んだと、連絡が入った。
また携帯が鳴り、メールの着信を告げた。K君からのメールだった。
私は内容も見ずにそのメールを削除した。K君の携帯も見つかっていないと聞いていたからだ。
あのTの転落する背中を撮影したのは、誰だったのか?
同じくK君の携帯にもそのメールが届いたのか?
そして、さっき削除したK君からのメールには何が写っていたのか?
私はその答えを近々、知ることになるのかもしれない。
私にもあの踊る女が、見えてしまったのだから…
これ?怖いかな〜?