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お手製のジャムを召し上がれ♪  作者: 水沓 亜沙南
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第六話




 日が沈む前に、なんとか完成しました。…いえ、日が沈むまで、後二時間ぐらいはありますけどね。

 今は、夏場なので日が落ちるのが遅いのです。

 で、完成はしましたが、流石に重いので台車を借りる事にしましょう。

 瓶なので、割れたら大変ですから。

 ヒィリファちゃんと一緒に、隣のアルバーさんのお店に運びます。

 お隣さんなので、すぐに着いてしまいますが…。

「アルバーさん。お待たせしました」

 店に入り、厨房にいるアルバーさんに声を掛ける。

 ふと、店の時計を見れば開店30分前。良かった。間に合いましたよ。

「おっ、ご苦労様。厨房に持ってきてくれ」

「はい、わかりました」

 アルバーさんの指示に従い、厨房の奥へ。

「あっ、そうだ。アルバーさん。ジャムなんですけども。冷蔵庫に入れれば、多分一ヶ月は保つと思うのですが…。本当に保つかどうかは…すいませんが、わからないです。ただ、冷蔵庫に入れておけば、一週間は保つと思うのです」

 思いっきり、不安を煽るような、グダグダな言葉だと自分で感じます。

 だけど、わからないものはわからないですし…。

 元の世界の時は、すぐに食べきってましたから。

 せめて、味が変わるのを待ってからにした方が…良かった?

「あぁ。別に気にしなくても良いよ?買ってくれた客に聞けば良いんだし。こっちもこっちで、一つ試しに冷蔵庫で保存して確かめたら良いんだからさ」

 そう、なんでもないようにアルバーさんは言いますが…。

 食中毒とか、お客さんからのクレームとか気にした方が良いと思いますよ?

 そこら辺は、おおらかにしない方が良いと思うのですが…?

「トビィリーは、今の時期は、普通にして一週間は平気だし、冷蔵庫に入れておけば二週間は大丈夫だ。その事は、客にも伝えるから安心しな」

 ああ、そういう事なら安心です。……安心しても良いんですかね?

 夏場に、一週間放置しても平気なんて…。元の世界では考えられません。

 イチゴとトビィリーは、似てるようで似てないんですかね?

 でもまあ、アルバーさんが言うなら良いのかな?

「でも、昨日は、そんなにも保つなんて言ってなかったよな?」

「昨日は、冷蔵庫があるなんて知らなかったのです。ヒィリファちゃんに教えてもらいました」

 電気が無いので、思い付かなかったんですよね。

「……そうか。まあ、長い事保つなら安心だな」

 ん?その間は?

 まあ、気にしないでおきましょう。

「安心ですね。これで、暫くは平気ですよね?」

「さあ?どうだろうな?」

 へ?どうしてですか?

「ジャム、結構作りましたよ?足りませんか?」

 チラリと、ジャム瓶を見ると、山積みの瓶が見えます。

「そのうちに嫌でもわかるさ。さあ、そろそろ、サクラは“パンケーキ”を作り始めてくれ」

「あっ、はい。わかりました」

 今日、お客さんに提供するのは“パンケーキ”なんです。

 日保ちする事を考えた結果、こうなりました。

 冷蔵庫がある事を知らなかった時は、焼いて置けば明日の朝まで保ちますし、朝食にすれば良いと思ったので。

 今は、冷蔵庫があるのを知っていますし、焼かずにタネのまま冷蔵庫に保存しておけば明日も使えるというものです。

 スポンジケーキは、焼くのに時間が掛かりますし、どれだけ必要かわかりませんから。

 お客さんがどれだけ来るかも、わかりませんし。

 残ったら、もったいないですもんね。

「サクラ、サリキスに作り方と焼き方を教えてやってくれ」

「はい、わかりました。では、始めましょうか?」

 アルバーさんの言葉に頷いて、サリキス君に声を掛けます。

「うん。よろしく」

 タネ作りのための道具や分量などは、前もって教えていたので、後は混ぜて焼くだけ。

「サクラちゃん、これぐらいの固さ?」

「そうですね。これを焼いていきましょう」

「了解」

 サリキス君は、普段からアルバーさんの手伝いをしているだけあって、とても手際が良いです。

 あっ、ヒィリファちゃんは、シルビィアさんの方に戻りました。

 シルビィアさんの店が閉店してから、こちらの店に来るんです。

 こちらが開店したら、あちらが閉店。

 シルビィアさんと一緒に後片付けしてから、こちらで仕事をするのです。

 開店してすぐに忙しいわけではないので、人がいても仕方がないとの事。

 私がここに来る前は、アルバーさんとサリキス君だけでやっていたそうです。

 アルバーさんが作って、サリキス君が注文を聞いたり運んだりする。

 少し大変だったらしいですけど、ほんの少しだけ大変だったのでなんとかなっていたと聞きました。

 どうしても、なんとかならない時は、お客さん達にセルフサービスをさせていたそうですが…。

 お客さんもお客さんで、当たり前のように受け入れていたみたいです。

 なら、最初から、セルフサービスにすれば良いのでは?

 そう思って伝えたのですが、アルバーさんに却下されました。

 “ふれあいがなくなる”と。

 そう言われたら、返す言葉がありません。

 この村の人達は、良い人達ばかりです。

 そんな人達と、ふれあいがなくなるのは寂しく感じてしまいます。

 私は、その案が使われない事を理解し、納得しました。

「さあ、開店の時間だ」

 アルバーさんの言葉と共に、店の入口が開きます。




 さあ、私のジャムとパンケーキのデビューです!





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