第四話
カラ〜ン〜コロ〜ン〜
教会の鐘が鳴りました。
この鐘は、正午のお知らせの音です。
この音が鳴るのは、朝の6時と昼の12時、夕方の6時と夜の12時に鳴ります。
一時間毎に鐘は鳴るのですが、一時間毎に鳴る鐘の音は“カ〜ン、カ〜ン”と鳴ります。
時間は、元の世界と同じなので混乱しないので安心です。
この世界は、元の世界にしてみたら、昭和半ばなんでしょうか?
夏休みの時に見た、昭和半ばを舞台にした昼ドラの服装に似ているから。似てるとは思うんですが、少し違うような…。
まあ、複雑な服とかじゃなくて良かったんですが、元女子高生の私にしてみたら、スカート丈が長い!
膝下ですよ!膝下5センチ!!
もっと長いスカートもあるんですが、あれは既婚者の人用らしいです。
そう考えると、まだマシなんですかね?
「サクラちゃん、おつかれさまでした。サリキス君とヒィリファちゃんがおむかえに来てるよ?」
ミルディアちゃんの声に我に返り、入り口を振り返ると二人が立っています。
「あっ、本当だ。ミルディアちゃん、今日もありがとうございました。また、明日もお願いしますね」
自分の半分の年の女の子に頼むのは不甲斐ないとは思いますが、背に腹は変えられません!
それに、教えてくれるミルディアちゃんが可愛いのも原因だと思います。
「うん。良いよ。がんばろうね?」
うわぁ!流石、ミルディアちゃん!優しいですね!
嫌な顔ひとつしないなんて!!可愛過ぎますよ!
「じゃあ、私、帰ります。また、明日」
「うん。また、明日ね」
ミルディアちゃんと別れて、入り口で待っていてくれる二人の場所へ。
「お待たせしました。さあ帰りましょう」
「うん」
授業が終わったら、サリキス君とヒィリファちゃんと一緒に帰る。これが、いつもの日常です。
帰ったら、二人には店のお手伝いがありますから。それに、私にも今日からやる事ができましたしね!
今までの役立たずとは違う!これからは、役に立てるはず!
* * * * *
「「「ただいま〜」」」
三人で仲良く声を出し、挨拶をします。
「「おかえり〜」」
そうすると、アルバーさんとシルビィアさんが揃って返してくれるんです。
前、揃わずにバラバラに言ったら「揃えなさい」と注意されました。
それから、三人一緒に言うようになったのです。
「じゃあ、そろそろ仕込みの準備でもするか。サリキス、手伝え」
「うん、わかった」
「わたしは、今日は、ママを手伝えば良いの?」
「いや、ヒィリファは、サクラを手伝ってやれ」
「サクラちゃんを?」
へ?私をですか?
「いえ!私、一人でも大丈夫ですよ?」
私、こう見えても家事は得意ですからね。
特に、お菓子作りに関しては自負してます!
「そうか?」
そんな心配そうな顔しないでください。平気なんですから。
「はい。あっ、持ち運びとか手伝っていただければ嬉しいです」
ジャム作りは、シルビィアさんの店兼ご自宅で作る事になっています。
なので、持ち運びが心配なんですよね。
今回、試作品としてアルバーさんの店に来た人に無料で出す事になったのですが、どれだけ作れば良いのかわからない。
ジャムは、三日ぐらいは保つので大量に作っても平気ですが、問題は量です。
どれぐらい作れば良いのかを聞いたところ、来た人全員に出すつもりだからわからないとの事。
試作品は無料だけど、もう一つ欲しいと言われたらお金を取るつもりだと。
そうなると、量がわからない。
アルバーさんとシルビィアさん、三人で悩み。ジャムは三日は日持ちするからと伝えたところ、なら、大量に作ってくれと言われました。
……はて?大量?
「すいません、アルバーさん。どれだけ作れば良いのでしょうか?」
「ああ、この瓶に…」
そう言って、アルバーさんが取り出したのは、高さ10センチ幅5センチの蓋付の瓶が20個と、高さ5センチ幅3センチの蓋付の瓶が20個。
……えっと…。
「……すいません、ヒィリファちゃん。やっぱり、手伝ってほしいです…」
私、商売を侮ってましたよ!
無理です!一度に、こんな大量は無理ですから!
私は、すぐにヒィリファちゃんに手伝いを求めました。
「うん。じゃあ、手伝う。何をすれば良い?」
「ありがとうございます。店から果物を…シルビィアさん、トビィリーもらいますね」
トビィリーは、イチゴの事です。
やはり、ジャムの定番はイチゴですよね!
「ああ、大量に仕入れといたから。アル、サリキス、運ぶの手伝って」
シルビィアさんがそう言うと、アルバーさんとサリキス君が店の方へ向かいました。
「では、準備したいと思います」
「頑張ってね」
シルビィアさんの応援の元、ジャム作り開始です!