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8F列車 バイパス

 この路線が特定地方交通線に指定され、廃止承認をされたのは今年の9月のことであった。白糠駅の待合室で白糠線の時刻表を見てみたが、それが物語られているような時刻である。運行される列車は1日たったの3本。すべてが北進駅までの直通運転で、6時32分白糠から北進に向かう列車が発車すると次の列車は13時55分までないという始末。そして、北進行き最終列車は17時57分が最終で、その後鉄道で北進へ向かうことはできない。信じられないかもしれないが、白糠線は本来こうなるはずの路線ではなかった。


 白糠線(しらぬかせん)の過去。それがいかなるものであったか。それは誰もが想像しない姿だと思える。現実は1日3本の列車が通るだけの路線。だが、白糠線は列車が何本もひっきりなしの通るための路線だとしたらどうだろう。北海道の奥地を通り抜けていく路線として成立するはずであった。特急などの優等列車(釧路(くしろ)根室(ねむろ)方面への列車限定)が通る路線となるはずであった。沿線から産出される石炭を大量に各地へ送り出す、最初の路線となるはずであった。しかし、現実は全てそうはいかなかった。白糠線は使命を開業からわずか6年で失ったのである。沿線炭鉱の閉山である。炭鉱の閉山により、白糠線(しらぬかせん)沿線人口はあっという間に減少。営業はこの時点で悪くなったのである。さらに旅客営業は北進開業以降3往復のみ。赤字を大量に出す路線として国鉄の経営をさらに苦しめたのである。そして、廃止はあっけなく承認された。白糠線の命は風前の灯であった。


 13時55分発の列車に乗車した。乗車したのは私を含めて、15人。2両編成のキハ56気動車にはガラガラのボックスシートだけが並んでいた。そして、ほとんどの人は途中駅で下車してしまう。33.1キロすべてを乗りとおす人はほとんどいない。白糠(しらぬか)で15人いた乗客も、上白糠(かみしらぬか)で2人、茶路(ちゃろ)で8人、縫別(ぬいべつ)で1人、上茶路(かみちゃろ)で2人、下北進(しもほくしん)で1人が下車。終点の北進(ほくしん)に着くまでの間に車内は私1人だけになってしまった。

 北進に着いたキハ56の窓から外を見てみたが、殺風景なところだ。人家は2軒近くにあるだけ・・・。いや、ここから見えないところに人家があるのか・・・。もし、列車も来なくなれば、完全なゴーストタウンが成立してしまうほどの勢いだ。

 白糠に戻ってきたが、白糠までの間に乗車があったのは私を含めて10人。バスに転換される予定になっているが、果たしてそのバスはいつまで生き残ることができるだろう・・・。


鴨宮(かものみや)惣蔵(そうぞう)手記

白糠線:根室本線(ねむろほんせん)白糠(しらぬか)から池北線(ちほくせん)足寄(あしょろ)までを結ぶ計画で敷設された。当初は足寄より根室本線(ねむろほんせん)新得(しんとく)までを結ぶ北十勝線(きたとかちせん)と接続して、根室本線のバイパス路線として計画されていたが、仮に開業したとしても経営が厳しいと判断され、終点である北進(ほくしん)以降は開業することはなかった。


なお、終点の北進とは「北に進む」という期待を込めたものであると一説にはある。

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