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第2話 加害者たちの焦想 

更新遅れました。今度は主人公以外からの視点。まだ主人公の物語は始まってません。

“彼”が眠ってから30分。完全に日が暮れた森の中、少し開けた土地で火の番をしながら、横に並んだ3人の少女は今後について話し合っていた。


「よっぽど疲れとったんねぇ」


 銀髪の彼女は体育座りの姿勢から上半身だけ振り返って、丸太の上で横にされている“彼”に毛布をかけ直す。


「何、ミイは“そういうの”が好みなの? 意外ね」


「な、なんば、エリスは言いよっと! 勘違いせんでよアンナ。違うけんね。さっきのに深い意味はなかとよ」


 ミイと呼ばれた少女は必死に手を振って否定する。雪原のように白く澄んだ肌が、若干紅くなっているように見えるのは、闇夜に揺らめく焚火のせいだけではないだろう。


「そういうところがイチイチ可愛いのよ。からかってみただけよ。ゴメン」


 エリスと呼ばれた金髪の少女は意地悪く笑う。遊ばれていたとわかってはいても納得できていないであろうミイは目を細めて頬を膨らます素振りをする。


「それにしても完全に眠っちまってるなぁ。飯喰ってから色々聞こうと思ってたのに。結局さ、まだ名前さえも聞けてないや。でもどう見ても、この兄ちゃんの魔人族で訳ありだよな」


 楊枝を食みながら赤髪の少女は疑問を呈する。成り行きでどうにかしようとしていたらしい彼女にとって、本人との意思疎通ができない現状が多少苛立たしいようだ。


「逃げて来たとかじゃなさそうよ。彼、少し汚れているけどスーツも靴も上物よ。どこかの貴族かもしれないわ。それにアンナは彼の左腕を見た?」


 エリスに言われて、赤髪の少女――アンナは彼の左腕を確認する。


「多分これ、ブレスレット式の時計か? すごいな。こんな小さな時計はアタシ初めて見た。これマヤルーサの時計塔より凄いんじゃねぇ?」


「こらっ! 止めなさい。ゼンマイ仕掛けは壊れやすいのよ。そんな風に突いて壊したらどうするのよ。これだけのもの、多分弁償なんてできないわよ。アンナの村だけじゃなくて私の家も搾り取られるかもしれないわ」


「家出中なのに心配するんだな」


「当然でしょ。だって私が帰る所はそこしかないもの。今は居場所がないだけで……」


「な、何かごめんな。エリス」







 気まずい沈黙が2人の間に流れる。火に寄って来る虫の羽音と、薪木のはじける小さな音だけが流れる。そんな中、後ろでミイが彼に向って何かをしている音に2人は気がついた。


 毛布の剥がされる音、まるでネクタイを外されて服を脱がされているようなシーンを想像してしまうような衣類の擦れる生々しい音、そして先ほどより少しだけ不規則に乱れる“彼”の呼吸。







 ――――こんな気まずい空気の中で、ミイは一体何を!? 


 同じ考えに至り、固唾を呑む2人。アイコンタクトを取ると同時に振り返る。




 振り返ればそこには予想通りの風景。


 彼はネクタイを外され、無防備にも白いシャツから少し鍛えられた胸筋と腹筋が覗いており、胸の真ん中ほどにミイは右手を当ていた。


「早まるなミイ!」


「私たちが気まずくなってるときに発情するんじゃないわよ。田舎娘!」  


 2人の焦りも虚しく、帰って来た返事は気の抜けたものであった。


「へ? スキャンしとっただけばい」


 そう言って胸に当てていた右手に握られていたもの、銀色に輝くトランプ大のプレートを見せる。


「心配して損した」


「期待して損した」


 胸を撫でおろすアンナと、肩をすくめるエリス。本当なら一言言い返してやりたい気持ちがあったが、それよりも重要な事実を彼女は告げる。


「こん人、魔人族じゃなかばい」


 深刻そうに告げる彼女に対しての反応は実にあっけない物であった。


「はぁ。魔人じゃないってのは意外だけど別に種族とかどうでもいいじゃん。アタシら保守派でもないわけだし。それよりさぁ。そもそもこういうのって、賞金首以外、本人の許可なしに調べていいのか?」


「アンナ、今回は仕方ないでしょ。私たちは今の事態の危険度を認識するべきだわ。ミイは正しい。直接本人に聞こうにも寝てるし。そもそも【主人公補正】だっていつもいい方向だけに作用するとは限らないのよ? トラブル引っ張って来るってことも自覚しときなさい」


「わかった。悪い人には見えないけど、何かあるのは間違いないもんな。こういうのアタシは苦手だから2人に任せるよ。で、どんな感じなんだ?」


 ミイの持っているプレートを受け取って、3人はそれを覗き込む。


「見たほうが早かよ」


「どれ?」


「私にも見せて」


 プレートの上には黒い文字で


名前:不明

年齢:24

種族:不明


と表示されていた。


「うん。見事に『不明』ってしか書いてないな」


「でも魔人族じゃないって証明にもならないわね」


「それより下ばい。問題は」


職業:商人

総合レベル5

HP:2/11

MP:17/17

筋力:8

体力:10

器用:36

敏捷:8

幸運:4


「総合レベルが低いんだろうけど……器用がおかしいな」


「私の倍どころか、レベル9の狩人のミイ並みって何なのよ?」


「おい。それよりスキルを見ろよ」



常時スキル:【悪運】レベル4


戦闘スキル:短刀 レベル7

      鈍器 レベル1

      逃走 レベル1

      不屈 レベル2


生活スキル:商売 レベル4

      料理 レベル21

      農業 レベル4

      祈祷 レベル5

      解体 レベル5

      発明 レベル3

      鑑定 レベル3



      

「酷いわね」


「酷かね」


「すげぇ。料理スキルが21って、そこらの店より上手いよな?」


 2人は予想外の事態に顔をしかめるが、逆にアンナは嬉々として話しかける。


「レベル15超えたらライセンス認定だから、それなりの腕かしら。って、そんなスキルは後回しよ。それよりこれよ! 【悪運】って書いてあるわよ。【不運】の次に不味い、運命改変スキルじゃない」


 明らかに青ざめた顔でエリスはノリツッコミを入れる。だがもっと不味い情報に気が付いたミイが告げた。


「良く見たら状態ステータス欄に、『記憶喪失』ってあるけど『記憶封印』じゃなかごたっね」


「マジで?」


「嘘でしょ?」


「なぁエリス、『記憶封印』じゃなくて『記憶喪失』にする呪文ってあったっけ?」


「ないわ。少なくとも、メジャーな魔法じゃない。それに話していた時は警戒されてほとんど話さなかったけど、記憶がなかったという雰囲気じゃなかったと思うわ」


「あたしもそう思うんだよなぁ。まさかだけど、今日の冥界焼きの刺激が強すぎて記憶も飛んじゃった、とか?」


「「それだ!!!」」


 2人は顔を合わせると一呼吸を置いた後、綺麗にハモって叫び、すぐさま遠火に置かれている串焼きにプレートを当てた。




 結果は図星。


≪暗黒料理≫ヨーグリアネズミの冥界焼き

:HP小回復。耐毒性が低い者に対しHPダメージと、稀に記憶障害をもたらす。









「――――私たちのせいだったのね。普段から【暗黒料理】を食べ過ぎて耐毒性がついてるから調べもしなかったもの。迂闊だったわ。」


「そんで、目覚めたらどぎゃんすっと?」


「流石にこの兄ちゃんを放っとくわけにはいかなくなったな」


「記憶障害の程度にもよるけど、素性の知れない魔人がうろうろしてたら目立つし、もし彼が調べられたら私たちも終わるわよね」










 このままなら犯罪者コースへ一直線の3人。


 そしてそれぞれ思い至る。それならいっそのこと彼のことを―――――――





 

「――――雇うか」


「――――攫うか」


「――――匿うか」





最初から負い目感じまくりのヒロインたちです。問題ありな3人ですが、彼女たちの本性は少しずつ晒します。ちなみにハーレムにはなりそうにないです。


その他おいしいところは主人公よりも、【主人公補正】持ちのアンナに持って行かれそうです。


時間があれば挿し絵を描きたいですね。オリジナルは初めてということで手探りの状態ですので、いろんな感想待ってます。

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