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第22話

これからどうするのか話し合った結果、とりあえず駅からは離れるという共通意見を基に行動することになった。俺は普通の中学年の様に振る舞いながら周りを警戒するというなかなか難しいことをしなければならなかった。3人で歩きながら自己紹介とまでは言わないまでもそれぞれのことを話す時、俺達はボロが出ないように気を付けながら優希さんに話を振る。優希さんは25歳のOLらしい。しかし今回の冴子さんから鍵を受け取る話については教えてくれなかった。下を向いたままじっと黙っているのでそれ以上追及出来なかったのだ。気まずい空気が流れそうになったが、優希さんが

「ところで、だいぶ駅から離れましたけどこれからどうします?」

と聞いてきた。多少強引かとは思ったが気まずくなるよりはよっぽどいいので普通に乗っかる。

「どうしましょうか?姉ちゃんは?」

「そうねぇ、人通りも無くなってきたしとりあえず帰ろうかな」

「弟さんも?」

「俺どうしよっかなぁ。さっきの混乱で友達と別れちゃったし…姉ちゃんと帰ろうかな。けど優希さんを1人にすると危なくない?」

「そうよねぇ。優希さん家どこ?」

「あ、私のことは気にしないでください。大人ですから1人で帰れます」

「大人だから危ないんじゃない」

冴子さんの一言に3人で笑う。

和やかな空気になった時、遠くで銃声が。同時に無線が鳴る。

「狙撃B班被弾!怪我人なし!10時方向より狙撃!」

「狙撃A班敵確認。狙撃手2名。1名はB班に、もう1人は……桜達に銃口!桜退避!」


片桐さんの叫び声と同時に冴子さんと優希さんの手を取り傍にあったマンションのエントランスに飛び込んだ。と同時に銃声とアスファルトを抉る銃弾が。場所からすると冴子さんを狙った狙撃。

「き、急にどうしたんですか?ビックリしました」

と優希さん。無線のやり取りを知らないので驚くだろう。しかし銃声にも着弾にも気付かないか?それとも…。

「いや、別に。ちょっと休憩しましょ?俺ジュース買ってきます。何がいいですか?」

「じゃあ、コーラ」

「姉ちゃん遠慮ねぇな…。まぁいいや。優希さんもコーラでいいね」

と言ってエントランスから出ようとした時に、後ろから声が!

「動くな。優希よくやった」

振り向くと男が1人、冴子さんの頭に銃を突き付けていた。

「警察のねぇちゃん、動くと殺す。弟くんも動くなよ」

「ごめんなさい…。こうするしかなくて……」

「フン。優希、俺達から逃げられると思うなよ。…さて、今更ロッカーの鍵を貰うわけにいかないからな、とりあえず銃を寄越しな」

反抗しても事態が好転する見込みがないので大人しく冴子さんは銃を渡す。しかし俺をただの中学生と思っているらしく武装解除はおろか警戒すらしていない。どうするか考えていると、冴子さんが目で「まだ動くな」と…。なので日本刀をいつでも抜けるように準備はしつつ必要な情報を聞き出すことにする。

「え~っと、これは何です?」

「弟くんはとんだとばっちりだな。まぁ簡単に言うと、お姉ちゃんが俺たちの仕事を邪魔したからお仕置きをしてる、ってとこかな」

「優希さんも?」

「あぁ。だよな?優希」

「違う!あなた達が脅すから…仕方なく……」

と優希さんは泣き崩れてしまった。男の態度から見ると恐らく弱味を握られているのだろう。自身のものか親しい人なのかはわからないが。

「お前は俺たちから逃げられない。永遠にな!」

「あんた最低だね。なんかムカついてきた。姉ちゃん殺して何になるんだ?」

「安心しな。殺しはしないさ。ただ俺たちに協力してもらうだけだ。警官の協力者が必要だったんだ」

「誰があんたたち見たいなヤツの言うこと聞くもんですか!」

「だから聞かざるを得ない状況に追い込むんじゃないか。優希みたいに…」

下を向き泣き崩れている優希さんに吐き捨てるようにそう言う男に怒りが込み上げてきた。しかし、冴子さんは「まだ!」と強い意思の込められた目で睨んでくる。

「じゃあ俺は帰っていいの?」

「駄目だ。おまえも人質だからな。さて…と、姉ちゃん、自分で手錠掛けな」

「手錠なんて持ってないわよ。そもそも一般人になりすます予定だったんだもの」

「じゃあ、これを使いな」

と言いポケットから手錠を取り出し冴子さんに投げ渡した。冴子さんは大人しく手錠を掛けた。そして、優希さんに

「優希ちゃん!ずっとこいつらの言いなりになるつもり?今はこいつ1人しかいない。今こいつを殺して逃げるのよ!私達なら出来るわ」

「…けど、1人じゃないし…。他にも何人も監視してる…。逃げられない…」


なるほど、まだ何人も監視してるわけね。さすが冴子さん。情報の聞き出し方が上手い。勉強になる。これで無線を聞いた片桐さん達別チームが殲滅に動けるわけだ。なら俺はもう動いていいのか?そう思い冴子さんに目を向けると、「斬れ!」と目で訴えてきた。


背筋がゾクゾクとなる快感を感じながら日本刀を抜く。冴子さんに手錠を投げ渡す際に銃をホルスターに入れていた男はギョッとし慌てて銃に手を掛けようとする。しかし俺が許さない。半呼吸で間合いを詰め銃を掴もうとしていた右手を手首から切り落とす。ついでに隣にいた冴子さんの手錠もバラした。男は一瞬の出来事が理解できなかったらしく、暫く、時間にしてはわずかだが、唖然として自分の右手が地面に落ちていく様を見ていた。しかし理解した時、悲鳴を上げ「右手がぁ…右手がぁ」と叫んでいた。優希さんも起きたことに付いていけず呆然としている。


冴子さんは、手錠が外れた手首を擦りながら優希さんの元に歩いて行った。

「優希ちゃん大丈夫?」

「え…あ…はい…」

「あいつらの組織は警察が潰すから私達に協力してくれない?」

「は…はい…」

冴子さんが話し掛けてもやはり唖然として頭が回っていない返事が返ってくる。

とりあえず優希さんの手を取り斜め後ろになるように庇いながら俺と男の傍にやって来た。

俺は、右手を押さえ呻いている男を見下ろし刀を構えつつ冴子さんが来るのを待った。


「浩志くん、外の警戒よろしく。あと応援呼んでくれる?」

「了解」

「さて、形勢逆転ね。これからどうする?仲間でも呼ぶ?探す手間が省けて助かるんだけど」

「…くそっ!何なんだあのガキ!俺を殺しても優希は自由にならないぞ」

「この状況でそうくるのね。浩志くん、軽くやっちゃって」

言い終わるか終わらないかぐらいで俺は動き、今度は左腕を肩から切り落とす。またも男は呆然とし腕が落ちていくのを見ていた。全く状況判断がなってない男だ。このことからも男が組織の下っ端にいることが伺い知れる。

「もう1回尋ねるわ。仲間呼ぶ?それとも自分で喋る?」



俺は、無線で片桐さんに応援を頼むと「3分で行く」との答え。それ以外も、周囲敵索班を残し数名が周りを固めつつ来てくれるらしい。その事を冴子さんに報告する。冴子さんは頷き優希さんのガードと警戒を頼んできた。

俺は、3歩下がり周りを警戒しつつ冴子さんと男にも注意を向ける。



「話す気になったかしら?」

「…何が知りたい…?」

「組織の規模は?」

「…俺も下っ端だ。詳しくは知らんが50人ぐらいだと思う」

「軍用銃の入手方法は?」

「知らない。俺は受け渡しのパイプ役でしかない。」

「じゃあ今日銃を受け取ったとして、そのあとどうする予定だった?」

「鍵を……ある場所に……持って行く…ことに…」

「ある場所?」

「それだけは言えない」

「そう、わかった。じゃあ、最後の質問。優希ちゃんはこっちで預かるけど、あなたは…今死ぬ?後で死ぬ?」




冴子さんが最後通告とも言える言葉を投げ掛けた時に、俺は2階へ通じる階段方向、というより2階から違和感を感じた。

と同時に無線が入る。


「2階通路に2名発見。装備不明。注意されたし」


俺は優希さんを左側にし右側の階段方向に注意を向け、いつでも斬りかかれる準備をする。


冴子さんは俺の様子を横目で確認しつつ男の答えを待つ。


と、その時銃声が鳴り男の側頭部から血が弾ける。俺達は自然と近かった階段へ逃げる。しかしそこは……。





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