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第1話

拾ったのは40代半ばの綺麗な女性だった。俺が物心ついたのは小学校4年生頃だった。これはきっと遅いだろう。名前は桜浩志…らしい。らしい、というのは、捨てられたときに名前が書いた紙があったのだ。拾ってくれた女性は、将来本当の親と再会出来るかもしれないから、とその名前を使っている。…と後に教えてくれた。結果から言うと親は現れることはなかったが。まぁ俺としては子供を捨てるような親に付けられた名前なんて願下げ、会うなんて真っ平ごめんだ。

さて、俺を拾い育ててくれた40代の綺麗な女性は高崎充穂さんという。とある小さな町でスナックのママをしている。ちなみに充穂さんは未婚だ。そもそも何故厄介この上ない赤ん坊を拾ったのだろうか。ちょうどその日充穂さんはある男性と会った帰りだった。昔愛し合い結婚を考えた唯一の男性だ。彼との間に3度子供を妊娠した。しかし3度とも生まれてくることはなかった。それから彼の両親からきつく当たられ結婚することもなく別れてしまった。そんな彼と久々に会った帰りに俺を見つけたのだ。放って置けなかったのと昔子供が欲しかった若かりし自分の思いが重なり拾ったのだと言う。それ以来一緒に暮らしている。俺から見て充穂さんは凄い良くしてくれる自慢の母親で尊敬している。スナックのママをしているので化粧は濃いめだがかなりの美人さんで友達には人気があった気がする。

小学校高学年にもなると充穂さんの店を手伝うことがたまにあった。お客さんからすれば女の子の方がいいとは思うが男の俺でも「ありがとう」とか「一緒に座って話しよう」と気さくに声をかけてくれる人が多かった。いい人達だ。常連さんの中にビルというアメリカ人がいた。彼も充穂ファンらしくよく店を訪れては俺と話をしてくれた。そんな彼を俺は慕い英語を習った。半年もするとビルとは全て英語でやり取り出来るようになり充穂さんや常連のおじさん達を驚かせた。

また常連さんの中に暴力団関係者もいた。ただ店ではそんな雰囲気を出さず“いいおじさん”だった。彼は俺に「男は強くならなきゃダメだ!」といつも言っていた。そんな彼に、1度学校帰りに会ったことがあった。その時は黒い車から出て来るところだった。周りにはスーツを来た人達が数十人いて皆一様に頭を下げていた。彼は俺に気がつくと「おぉ、浩志君か。学校の帰りかい?1度おじさんとこ来るか?」と聞いて来た。俺は「うん♪」と答えておじさんに付いて行った。この選択が自分の人生に大きな影響を与えることはまだ知らない。

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