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第16話

あれから3週間の月日が流れた。


俺は解決したあの日に、自宅を襲撃してきた男達を放り込んでいた港の倉庫で男達共々田口を処分した。署長と冴子さん立ち会いのもとで。死体の処理等後の処理は警察がしてくれた。


鹿児組はというと、溝口さんを組長とし極東会と片岡組を吸収しこの辺りの都市最大の暴力団となった。もちろん鹿児組に吸収されるのが嫌で去っていった者も少なからずいた。そして俺は鹿児組と関わることが原則禁止となり携帯電話も没収となった。溝口さんが最後に言ったのは「すまなかった」だった。後から冴子さんから聞くことになったが、俺を利用して日本最大の暴力団児玉組を潰す計画だったらしい。そのために人殺しを日常的にさせ罪悪感を無くし良心を鈍感にさせたとのこと。俺は権力や地位や名声に拘る組長だったことに驚いた。俺にとって組長は充穂さんのお客であり父親みたいな存在だったからだ。感謝はしても恨みなどあるわけがない。



一方俺は、田口を殺した後、とりあえず冴子さんと共に家に帰って事の顛末を充穂さんと光希ちゃんに報告し、これから警察の管理下になることを告げた。最初は吃驚していたが、冴子さんが生活は普段通りであること、学校へは普通に通えることを告げると納得しているようだった。次の日冴子さんと警察庁へ行き取り調べを受けた。生い立ちや交遊関係、鹿児組との関係など質問は多岐にわたった。それに加え精神鑑定も受けた。取り調べと精神鑑定と射撃や剣術や格闘技術等の熟練度も調べられ、結局3週間も警察庁にいた。




さて3週間ぶりに学校に行くと、もう風邪は治ったのか、休んでる間こんなことがあったなど今までと変わらない平和な会話がそこにはあった。


さらに1週間が過ぎた頃、平和な毎日にも慣れ、充穂さんや光希ちゃんと家で寛いでいると山下さんと冴子さんが訪ねてきた。

「桜くん久し振り。元気にしてたかい?」

「あぁ!山下さん!もう怪我大丈夫なんですか?」

「あぁ、まだ少し痛むけど仕事に支障はないよ」

「桜くん、今日は結果報告よ」

「結果報告…って何の?」

「あれっ?言ってなかった?この前の取り調べとかの結果を踏まえて日本の治安維持に貢献してもらうの」

「えぇ~!?聞いてない!てか嫌!」

「まぁそう言わずに引き受けてよ」

「そもそも俺殺人狂ですよ?治安維持どころか治安崩壊しますよ」

「ところが鑑定結果はそうではないのよ。というわけでまた警察庁に来てくれるかな?」

冴子さんはキラキラした目で見つめてくる。多感な中学男子を手玉に取る美人刑事。嫌とは言わせない雰囲気がまたドキッとさせる。後ろで山下さんは両手を広げ首を振っている。俺が治安維持?警察管理下とはこういうことだったのか?そんな疑問が頭を過るが答えは1つ。

「……わかりました」





次の日2度目の警察庁訪問。冴子さんに連れられ今回は会議室に通された。そこには制服を着た人が5人。

「桜くん座って」

1番偉いであろう人が手を差し伸べ椅子に座るように勧めるのでそれに従った。

「今日はわざわざありがとう。早速だが、来てもらった理由から話そう。野崎くんから話は聞いてるとは思うんだが、君に犯罪を取り締まる側の立場に就いて欲しいんだ。現行の法律では、警察官は未成年者の取締りが難しい。そして凶器を持っている犯罪者に対しても拳銃の発砲が難しいが故逮捕が難しい。それに田口の件の通り信頼出来る人材が不足している。日本の警察はそんな問題を今抱えているんだ。そこで君の類い稀な能力に頼るに至ったわけなんだ。精神鑑定の結果を踏まえて言うと、正義感が強い、いや強過ぎる傾向にある。いいことではあるが、きみの場合殺人能力がある故に悪人を処罰、つまり殺すことに直結してしまう。法治国家としてそれは許されないことだ。だから当面仕事としては公安のような潜入捜査や要人警護に当たってもらう。精神が安定し成熟すれば将来的には犯罪を未然に防止するのに暗殺もしてもらうことになるだろう。対象は、他国の潜入捜査官、いわばスパイ。それとテロリスト。これは非合法であるので極秘事項扱いとなるがね。あと極秘ついでにいえば、自衛隊も君に興味があり1度会ってみたいと言っている。とまぁ私からはこんなところだよ。何か質問あるかい?」

…質問だらけだろ。そもそも中学生に手伝ってもらわないといけないほど困ってるのか?潜入捜査って…俺学生…。まぁ暗殺はしたいけどね。頭の中には色んな疑問があるが、どれも少し考えれば正当な答えが自分で出せてしまう。これからの自分と家族のことを考えてみると………。



時間にして約10分。この間大人達はさぞかし居心地が悪かっただろう。質問もせずただ考え込む殺人狂を前にしているのだから。そして俺は答えを出す。



「わかりました。」



「そうか。国の為、国民の為力を貸してくれるか。ありがとう」

「1つお願いがあります」

「なんなりと」

「家族の安全です」

「勿論だ。最大限の努力を尽くして君の家族の安全を保証しよう」

「お願いします。俺からは以上です。自衛隊についてはそちらにお任せします」

「わかった。精神鑑定の結果を送り向こうの判断に任せることにするよ。それと、所属は公安でチームは野崎くんと組んでもらう」




とうとう俺は警察組織の一部になってしまった。だからといって俺は俺なんだが。殺人技術に秀でた殺人狂、これが俺。これから先何が起こるか分からないが、自分の基準を見失わず家族や友人知人を守っていこうと思う。その為なら俺は何にでもなる。


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