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第13話

自宅まで全力で走った。家には充穂さんと光希ちゃんがいるはず。田口の口振りからすると良からぬことが行われているに違いない。一分一秒を争う事態だ。しかし玄関が見えたところで2人組のスーツ姿の男に呼び止められた。がむしゃらに走っている俺を呼び止めるのに慌てて飛び出してきて声を掛けてきた。

「 ちょ、ちょっと!き、きみ、桜くんだね?急いでるとこ悪いがいいかい?」

暗闇から急に出てきて声を掛けられて俺も吃驚した。

「わ、わ!な、何?いきなり。片岡組か?」

いきなりでしかも状況も状況だったので確認もそこそこに斬りかかるために日本刀を鞘から抜いたところで、

「ち、ちょっと待った!!片岡組じゃない!け、警察!!」

今の俺は警察ですら信用していない。田口や上野のようなヤツがいるのだから。日本刀を構え斬りかかろうとしたところで

「た、田口と上野を洗うように極秘で署長から言われてここまで辿り着いたんだ。君のことも鹿児組組長から聞いてる。だからとりあえずその刀収めてくれるかな」

慌てている様子や組長のことに触れたこと、何より必死になって、信用してくれ、と目で訴えてくるので俺もこの2人を信用することにした。警察にもまともな大人はいるようだ。というより田口や上野みたいなヤツのが少なくてまともな大人の方が多いのだろう。ちなみに俺を呼び止めた人が山下さん、32歳。もう一人が川野さん、29歳。とりあえず話はわかったので3人で自宅へ入るための打ち合わせを軽くした。中には男達が10人いるらしい。家を見張っていた 山下さんが教えてくれた。全員知らない顔だったので組関係ではなくチンピラかヤンキーの類いらしい。

「まず、桜くんから入ってもらおうか。本当は私達から行くべきなんだろうが、情けない話だが我々は特殊部隊でもないからこういう訓練を受けていない。しかも銃も数えるほどしか撃ったこと無いんだ。君の戦闘能力は聞いてるからお願いしたいんだけどいいかな?」

「自分の家族ですから自分でカタ付けますよ。ただ相手のことは考えませんよ。つまり生死の保証はしませんよ」

「ああ。元よりそのつもりだ」



俺は山下さんたちから離れて玄関ではなくちょうど裏側にあたるスナックの入り口へ向かった。

うちは、1階にスナックがあり、あとキッチンやお風呂やトイレなど水回りがあった。そして2階が生活スペースになっており、階段上がって左手にリビングでみんなの憩いの場でテレビやソファーなどがあり、右手には充穂さんの部屋。廊下を進んで左手に俺の部屋、右手に客間で今は光希ちゃんの部屋、突き当たりにトイレがある間取りになっている。


まず、店舗入り口の鍵を開け扉を静かに開ける。店舗内には誰もいなかった。カウンター奥のキッチンやお風呂などの住居スペースと繋がってる扉の前に来て耳を扉に当てる。すると、男達の声に混じって充穂さんと光希ちゃんの声が聞こえる。まだ殺されてはいない。山下さんたちを呼び入れ状況を報告する。ここはスナックなので防音はばっちり大声でない限りバレる心配はない。音から1階には人はいないと判断し扉を静かに開ける。やはり誰もいなかった。見張りを立てないとは迂闊な奴らだ。3人で2階に上がる階段前に移動し上を窺う。階段の上にも見張りはおらず何だか拍子抜けした。山下さんたちを残し階段を静かに上がっていると、2階からの声や音が鮮明に聞こえだし何が行われているかはっきりわかるようになった。端的に言えばレイプである。しかも集団での輪姦。

階段を登りきり右手の充穂さんの部屋の前に立ち1階にいる山下さん達に上がってくるように、そして突入することを合図で伝えた。頷いたのを確認した俺は日本刀を握り締め部屋に突入する。


充穂さんの部屋は、扉を背にした状態なら、正面にベッド、左手にタンスや化粧台、右手に窓、扉の左側に押入、真ん中に小さなテーブルがあるようなシンプルな部屋だった。今は、男達が5人おり、ベッドで3人が充穂さんに群がり1人はカメラを回し1人は扉脇で傍観していた。 俺は、傍観していた男の首もとを日本刀の鞘で思いっきり殴ってやる。すると「グゲッ」と声を出し倒れこんで動かなくなった。と同時に他の4人にも斬りかかる。声を上げられると面倒なので叫ばれる前に日本刀を振るい峰打ちで意識を奪っていく。 何故峰打ちかというと、……自宅だから。血で汚れると掃除が大変だからね。


充穂さんはしきりに、

「ごめんね、ごめんね」

と言っていたが、俺がシーっと口に人差し指をあてると泣きながら頷いてくれた。充穂さんの頭を撫で、あとを山下さん達に任せて光希ちゃんの部屋へと向かった。


光希ちゃんの部屋は、扉を背にした状態なら、正面にベッド、左手に窓とタンス、右手にテレビや机やパソコンがあった。

もう音に気を遣わなくていいので勢いよく扉を開け中に飛び込んだ。中には5人の男がおり、全員がベッドにいる光希ちゃんに群がっていた。幸いなことに皆光希ちゃんに夢中で俺に背を向けて無防備な姿を晒していた。なのでこっちを向く前に気を失ってもらうことにした。男達が倒れると光希ちゃんは俺にすがり付きただ泣くだけだった。泣いている光希ちゃんを抱えたまま充穂さんの部屋に行き山下さん達にあっちも片付いたことを伝え男達を縛ってもらった。



俺は、両手両足を縛られ意識のない男10人を1階のスナックに運び終え2階リビングで充穂さんと光希ちゃんの相手をしていた。山下さん達は男達を運ぶ車を手配するために電話をしに1階に下りていた。すると1発の銃声と人が倒れる音、そして、

「やめろ!」

との悲鳴にも似た声が聞こえた。と同時にもう1発の銃声が。俺は2人にソファーの裏に隠れるように言い日本刀を掴み部屋を出ようとした。

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