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ユメオチ

作者: 休憩所


夢オチ、って知ってるだろうか? 


夢がまるで現実のように感じられる現象。 


それが悪夢だろうと、幸せな夢だろうと、起きた時に人は思う。 


「あ、夢か」と。 


それがもし、逆だとしたら? 


これは、俺が体験したちょっとおかしな物語ーー。




20××年、地球は目覚ましい進化を遂げていた。


20世紀初期に騒がれていた「地球温暖化」という問題も、今や歴史の教科書の隅にちらりと触れられる程度になっていた。 


オゾン層の代わりになる、所詮、「カーテン」と呼ばれるものが開発されてから地球は安全、安心な惑星になっていた。 


分からない事はすべてパソコンが請け負い、ノートなんて今や幻。 

すべてがパソコンで生活する世界へと、変化を遂げていた。 



そんな中、俺は世界でも珍しいくらいにアナログ派を突き通している。 


ノートもえんぴつも、消しゴムも、本も、すべてアナログ。 


なぜこんな行動をしているのかと問われれば、俺はこう答えよう。 



「世界はいつか終わるから。」



決して変人ではないし、いかれてもいない。 


世間では俺は「かわいそうな子」と疎まれているが、信じて欲しい。 


俺は、ウソなんてついていない。 

唯一、俺の家にある一台のパソコンから全世界にメッセージを発信した。 



信じられる人は、俺と一緒に生きてくれないか。



と。 

数日後、パソコンを立ち上げると、世界から返信が来ていた。それは、何万通もあったし、色んな言葉で書かれていた。 


俺は一年かけて、ひとつひとつ、丁寧に全てのメールを読み切った。 




その内の9割が、中傷や嘲り、興味から来る参加希望、疑問、マスコミからも何通か。 

予想通りの展開に、俺はふぅとため息をひとつついて、すっかり冷めたコーヒーを口に含んだ。 

わすがな苦味が優先する。 



先ほど厳選したメールは、全部で6通。 


そのうちの4人は自分と同じ日本人らしかった。 


彼らは日本語で平気だろうから、日本語で返事をしよう。 



書き出しは決まっている。 


「あなたは、ユメオチを知っていますか。」




なかなかインパクトのある書き出しただと思わないか? 

俺としては、この一年かけて考えた書き出しに最早絶対といえる自信を持っていた。 


「よし。」

 

パチパチとキーボードを打ちながら、この文字を打っていく。 


その冒頭部分以外は適当な挨拶と、「ユメオチ」についての説明。 

最後の一文は、メールの返信は本気で「信じられる」人だけでいいことを念押しして、宛先を4人分入力し一斉に送信した。 



残る2人は、それぞれの国の言葉でなんとか返信した。 



あとは、 


「あとは…変化を待つしか、ーーーー。」








ユメオチ。 

夢が現実のように感じられる現象の事。 


しかし俺は気付いてしまった。 

この<世界>は、リアルではないのだと。 

つまりは、ユメ。 

俺は、このユメの中で過ごした一年を何の感情もなく生活していた。 


働いても、食べても、感情が生まれる事はない。 

何故なら、俺はこの世界を生きるのがこれで10回目だからである。 


10回も同じ物、同じ動作、同じ会話、同じ食事…

いい加減嫌になってくる。 

欝状態など、確か五回目あたりで卒業した。 


そんな中、俺が唯一求めたモノ、それが…変化…であった。 


何でもよかった。 

事件でも、流行でも、会話でも、もっと言うなら犬の糞の位置とかそういう些細な事でも構わない。 


ただ、ただ変化を欲していた。 

だから、今こうして<変化>を起こそうと奮起していた。 


ただ…問題はこの目の前のパソコンである。 

先に述べたように、この世界はこの、「家庭用パソコン」によって終わる。 


原因は、「未知のウイルス*a sin」通常、罪と呼ばれるものによる。 


<罪>は人体に影響する未知のウイルスで、感染すると数時間で死に到らしめる恐怖のウイルスである。 

だから俺は10回の経験上、自分の身の回りに電化製品を置かないよう努力してきた。 


だが、周りの感染率が高すぎて回避出来るモノではないのだ。 



しかし、俺は感染して死んでもまた「戻る」だけなのである。 

<どこか>に。



ここで話を元に戻そうか。 


そう、<ユメオチ>の説明だ。 

俺が言うユメオチは、漢字で現すとしたら<夢堕ち>。そう。 

まさに言葉の意味通り。 

俺は今、夢に<堕ち>ているのだ。 



意味が分からない? そう言われても困る。 


俺だって何がなんだか未だに分かっていないのだから。 



ただひとつ、俺が自信を持って言える事はここは<リアル>ではないこと。 

それだけ。 


寝ている時の夢って<これは夢だ>と本能で感じたりするだろう? 

感覚はそれと一緒。 

ただ違うのは、この「ユメ」の中で怪我をすれば痛いし「死」にはそれなりの苦痛がもたらされる。 



それだけ。 


そう。 

「それだけ。」なのである。 

リアルに限りなく近いのは。 


後は人も自然も全てが決められた台本通りに動くのみ。 


さて。

メールの返信が届いたようだし、俺はそろそろ失礼しよう。


この日記を読んでいる貴方に願わくは会わない事を祈り、ここでサヨナラするとする。


見ず知らずの貴方が、リアルに戻れること願ってます。



あぁ、もうひとつ。

確か地球にいた時の慣用句で今のおれと、貴方にぴったりの言葉がありました。

これを、別れの詞にしましょうか。




「事実は小説よりも奇なり。」 ってね。

え? 

物語とか言いつつ日記じゃないか!! 

と、言いたい人も多い事でしょうね。 


連載にしてもよかったんですが、ね? 


連載…多いので…自重しました…。 



コメントなどにて、「誤字あるぞ、ばかー」や「こ、コメントしてやんよ!」等々随時受付中。 




主人公が脱出出来たかは、ご想像にお任せします(^ω^) 



では、読んでいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです! 確かに、これは夢だと分かっている夢ってありますよね。 しかも何度も見てしまったり。 もしそれが現実だと思っていた世界だったら…。 (そんなお話だったように感じましたが、…
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