フィッツロイの異変
ヴェスパーレを倒した俺とサラはフィッツロイを目指した
フィッツロイの場所は、これまでに訪れた三つの街と違い、直線状の関係にはない
ロワイエとハーシェルからはほぼ等距離にあり、少し離れた場所にある
カルダーノからは2週間ほどはかかるだろう
その移動の間、俺達はフィッツロイの状況を逐一確認していた
そしてわかったのは、俺達がフィッツロイに近づくにつれて、状況は好転していっているとのことだった
ケイイチに3人が合流したことで、街にいた憑依者は次々と倒されていった
そして、俺達がフィッツロイまであと数日というところまで来た時には、すでにフィッツロイは平穏を取り戻しており、現在はケイイチを除く転生者3人が、町の住民達とかつての領主の屋敷に集まり、今後の計画を練っているという段階まで来ていた
どうやら、俺達の出る幕は無さそうだ
当初、女神によって依頼された憑依者の討伐
それは概ね完了したと言ってもいいのかもしれない
そんな事を考えていた
しかし、フィッツロイがもう見えようかというところまで近づいた時、異変が起こった
サラのところにヒルデから報告が入る
それを聞いたサラは俺に告げた
「ハルヤとフユキが殺害されたって・・・・」
その報告を聞いた俺は一瞬頭が真っ白になった
何も言葉が出てこなかった
しかし、すぐにハッとなった
「ナツミは?ナツミは無事なのか?」
サラが再びヒルデと交信する
その結果わかったのは
二人を殺害したのはナツミだということだった
今現在、ヒルデと交信しているのはケイイチだ
彼は今、フィッツロイの少し町はずれの場所にいるとのことだった
俺達はまずケイイチに合流することにした
初めて会ったケイイチは、聞いたとおり30代のシブい人物だった
整った顔に少し長めで整った髪、無精髭ですらよく似合っている
ケイイチは足を負傷していた
ナツミと戦ったことによる負傷とのことだった
「彼女は憑依されている」
そうケイイチは言った
続けて
「あらかた黒い影は葬ったと思ったんだがな。まだ残ってやがったんだ」
その黒い影がナツミに狙いを付けたということだ
この世界に現れてすぐの黒い影は女神の神器のことはまだよくわかっていない可能性がある
一見、丸腰の他の人達よりは目立つ武器をもっているほうを狙っても不思議じゃない
「ナツミは今どこに?」
俺が聞くと
「今はおそらく領主の屋敷にいるはずだ。そして住民を脅してこの街を支配しようとしている」
続けてケイイチは悔しそうに語った
「ここに至っては、もはや彼女を倒す以外に道はない・・・・」
俺は覚悟を決めきれないでいた
そんな俺を見てケイイチは言った
「彼女はもうナツミじゃない。一人の憑依者だ。そう考えられないのであれば死ぬのはお前達だぞ」
そしてケイイチは付け加えるように警告してきた
「ナツミの持っている弓な。あれはかなりヤバい。実際戦ったからわかったんだが、相手が撃つところが見えれば躱せるが、見えないところから撃ってこられたら回避は困難だ」
「・・・・・」
「あの武器は無力化しないといけない」
わかっている
俺の神器だ
ナツミを倒すとしても、少なくとも弓を無力化させることが必要になってくるだろう
俺が弓に触れれば収納することができる
そもそも弓を持った相手に近づくことも困難だが、いずれにせよ、これ以上、弓を悪用されるわけにはいかない
「これを持っていけ」
そう言って、ケイイチは神器を出現させた
小太刀が2本
「ナツミを倒せるのはこの小太刀か、サラの持っている太刀だけだ。悪いが俺はしばらくはまともに動くことも出来そうにない。お前達に任せるしかない」
そう言ったあと、最後にケイイチは付け加えた
「俺の報告を聞いてヒルデはどうやら邪神の居場所をほぼ特定できたみたいだ。だから、これが俺達転生者にとっては最後の仕事になるだろう。だからお前達でケリを付けてくれ」
俺は小太刀を受け取るとケイイチに対し頷いた
そしてサラと目が合うと彼女も俺に対して頷いた
どうやらサラも覚悟を決めてくれたみたいだった
俺達はナツミのいる屋敷に向けて歩を進めた




