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ハーシェルに集まった転生者達

俺はそれからサラの刀を背に次の目的地を目指した

ヒルデの話によると、現在ハーシェルという街に何人かの転生者がいる

もしかしたら、サラもその情報を掴んでいる可能性がある


ハーシェルは、出発地点の街であるカルダーノから考えると、ロワイエのさらに先にあると言える

道中、立ち寄った街でサラらしき人物を見かけなかったかと聞いたが、曖昧な情報しか得られなかった

見かけたような”気がする”程度だ

それでも、そんな人は来ていないという情報ではないから、可能性は十分にあることだ



ハーシェルの街に入ると、まずは他の転生者と合流しようとした

この街に転生者が集っている場所があるという話は聞いたんだが

とにかくまずはヒルデと交信しなくてはならない


しかし、宿を探している時にいきなり知らない男に声を掛けられた


「おい」


見ると、長身の男が立っていた

少し逆立った短い黒髪

歳は20代後半といったところか

少なくとも年上には思えた


「お前、バカか!?」


いきなり怒鳴られた


「あなたは一体?」


思わず問いかける

その男は俺を路地裏に引っ張り込むと呆れるように答えた


「あのな、神器を出したまま街中をうろつく奴がどこにいる?その背中の刀、お前の神器なんだろ?」


ああ、そういうことか

ということはこの男も転生者ってことだな


俺が事情を説明すると


「・・・なるほど、事情はわかった」


納得はしてくれたようだ


「しかし、お前をアジトに連れていくわけにはいかないぞ。そんな物を背負って周辺をうろつかれたらたまったものではない」


アジトって・・・

なんか、こっちが悪者みたいだ


彼の名は新條(しんじょう)ハルヤ

28歳とのことだ

神器は両刃のロングソード

この街には現在3人の転生者がいる

そのリーダー格とのことだ


そう言えば、この世界に転生者はあと何人いるのだろうか

聞いてみたところ、全部で6人とのことだ

俺とサラに、この街にいる3人

では、もう一人は?


「なんか、30代のシブい奴だって話だ。なんでも女神の依頼で、俺達とは別の目的で行動しているって話だ」


そんな奴もいるんだな

ちなみに居場所はわからないらしい


俺はハーシェルで宿を取り、その宿での夕食の場に残りのメンバーを呼び、落ち合った

ハルヤの他に集まったメンバーは2人


名加(なか)フユキ、23歳で神器は手槍とロングスピアの二刀流

見た目には特に特徴は無いが、きっと企業の面接では好印象を受けるであろう雰囲気がある


寒河江(さかえ)ナツミ、22歳で神器は手榴弾

前世では体育選手をやっていたとのことで、身長は女子の平均よりは高め、細くしなやかそうな身体をしている


俺は3人にサラのことを聞いたが、ヒルデから聞いた情報と大差無かった

そして、今のところサラがこの街に来たという情報は無かった


次にこの街で起こっている不可解な事件について聞いた

それは、一言で言えば「圧政」だった


ある時期から、この街の領主であるヴェルニは逆らう者は全て捕えて処刑しているとのことだ

そして、何よりも重要なのは、過去に2人の転生者が見つかり公開処刑されたという話だ


「ヴェルニは転生者を恐れている」


そうハルヤは言った

続けて


「だから公開処刑などという手段に出ているんだ。おそらく助けに来た他の転生者もまとめて葬ろうとしているに違いない」


「つまり、俺達を誘い出そうとしているのか?」


俺が聞くと、ハルヤは頷いた


「実際のところ、助け出そうとした。しかし、領主に従う兵達を全て相手にするのは難しい。俺達は何も手を出せずに仲間が処刑されるのを見ているしかなかったんだ」


ハルヤは悔しそうにそう言った

なるほど、初めて会った時に神器を背負っている俺を見て怒鳴ったのはそういうことか

この街では、言ってしまえば転生者狩りが行われている

それに巻き込まれる形で無関係の人も捕えられている


「つまり、この街にいる憑依者ははっきりしているわけだな?」


俺はそう聞いた


「ああ、領主のヴェルニだ」


ハルヤは確信を持って答えた

それに続けて


「仮にその予想が間違っていたとしても、ヴェルニを討つことに何の躊躇いもない」


ならば話は早い

今、この場には4人の転生者がいる

ヴェルニを排除するべきだ

しかし、その俺の意見に対し


「いや、それがそう簡単ではない」


ハルヤは否定した


ヴェルニは滅多に姿を現さない

領主の屋敷の中で指示を出しているだけだ

そして、屋敷の守りは厳重だ

近づくのも難しい


つまり、ヴェルニを倒すにはいくつかの条件が必要になる

まず、領主を屋敷の外へ出すこと

そして、その数少ないチャンスに、警備をかいくぐって領主を倒すこと


ハルヤは俺を見て続けた


「どうやら、セイが加わったことで、この計画が現実的なものになったようだ」


「どういうことなんだ?」


「ヴェルニを倒すには、長距離からの攻撃が必要になる。しかし、俺達の中にそれが成せるものはいない」


フユキにしろ、ナツミにしろ、手で投げる距離くらいしか射程がない

それに対し、俺の弓はもっと遠くからの攻撃が可能になる

つまり、狙撃に適している


「セイ、お前がヴェルニを倒すんだ」


「・・・・・・」


すぐには答えることが出来ない

しかし確かにヴェルニを射程内に捕えることが出来ればチャンスはある

俺の弓は正確な軌道を計算して撃つことが出来る

止まっている的であればまず確実に当てられる


しかも今回は相手が憑依者であることがほとんど確定している

一気にケリを付けるのが話が早い


しかしこの作戦には大きな穴がある


「どうやって、ヴェルニを屋敷の外に誘い出すんだ?」


俺の当然の疑問にハルヤは答えた


「思い当たる中で、一つだけ方法がある」


一瞬の躊躇いのあと、ハルヤは続けた


「過去に奴の姿を実際に見たのは2回だけだ。つまり、転生者の公開処刑の場だ」


「なんだって?」


もしかして、ハルヤはとんでもないことを考えているのではないか

俺の中で疑念が浮かんだ

そして、その疑念はどうやら正しかったらしい


「次の公開処刑の場で奴を倒す」


そうハルヤは言い放った


それはつまり、俺達のうちの誰かがヴェルニに捕まる

そして公開処刑が決定する

その場でヴェルニを狙撃して倒す


「ちょっと待ってくれ。それはいくらなんでも危険すぎないか?」


俺にはギャンブルにしか思えない

ヴェルニが3度目も同じことをするとは限らない

思惑が外れれば確実にまた仲間が死ぬ


「しかし、時間は俺達の味方ではないんだ」


ハルヤは答える


転生者狩りは続いている

何かをする前に俺達が先に見つかる可能性だってある

動かないことは、死を待つことに等しい


「セイが加わったことで、こちらから仕掛けるという選択肢が生まれたんだ」


俺は考えを巡らせた

しかし、それ以外には現実的にヴェルニを倒せる方法を思いつかなかった

相手の思惑を逆手に取るのが一番現実的なのかもしれない


「この計画は俺が考えたものだ。だから当然、俺が捕まる」


ハルヤはそう表明した

俺は何も反論できなかった

少なくとも俺が代わりになることはできない

他の二人に押し付けるわけにもいかない


結局、俺はその計画を塗り替えるだけの何かを主張できなかった

そうして、この日の会合はお開きになった

この一か八かの作戦に賭けるという決定を持って



それでもなお、俺の中ではくすぶっている何かがある

もっと他に取れる手段があるのではないか


しかし、何も対案が出せないままその日が訪れた

ハルヤが領主の兵達に連行されていく


こうなると、後戻りは出来ない

このままハルヤが処刑されるのを見ているわけにはいかない


そして、事態はハルヤの思い描いていた通りの展開になった

処刑は十日後、街の広場で行われる

当然それは他の転生者を炙り出す意図があってのことだ

その場には領主のヴェルニも立ち会う


おそらくヴェルニもまた、ヴェスパーレのようにこういった処刑を快楽と感じる奴だ

だからこそ、自分に逆らおうとしている人達の死を楽しもうとしている

これはただの計算だけでなく、奴にとっての娯楽なんだ


俺はなんとしても公開処刑の場でヴェルニを倒さなくてはならない

そう思っていた


しかし、俺にとって、この重大な出来事と天秤にかけなくてはならない事が起きる

そう、俺はどちらかを選ばなくてはならなくなった

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