紅き炎の介入者
「――あの女、小細工を……!」
ギルは魔導研究所の跡地を叩き壊し、
瓦礫を蹴散らしながら容易く地上へと飛び出した。
血走った眼で周囲を探る、その頭上。
突如、白い閃光が爆ぜる。
これはなんだと、
堪らず翼で顔を覆った刹那――。
夜空から赤い残影が舞い降りた。
カイトで滑空し、炎の尾を引きながら着地したのは、
赤い服の少女だった。
右目を覆う眼帯。
右腕と左足は、燃え盛る炎そのもの。
ギルが反応するより速く、
鞭のようにしなる炎が突き刺さる。
狙いは心臓。
だが、貫かれたはずの胸から、血は一滴も溢れない。
少女は眉ひとつ動かさず、
つまらなそうに吐き捨てた。
「やっぱり。心臓じゃ死なないのね。お坊っちゃん。
そんなに隙だらけじゃ――戦場で使い物にならないわ」
「なっ……何を……!」
怒号を上げようとした瞬間、
灼熱が喉を焼き切った。
声帯を焦がされ、
再生しようとすれば即座に炎に呑まれる。
こんなはずじゃなかった。
脳が、それを理解しようとしない。
無限に繰り返される苦痛。
ギルは、血を吐くような呻き声すら奪われた。
少女は初めて笑みを浮かべた。
冷酷で、愉悦に満ちた笑みだった。
「愚かね。――あなたの仲間の遺体は、
もう私の部隊が回収済み。
研究材料には事欠かないわ」
一拍置き、淡々と続ける。
「恨み骨髄だけど……
アビーさんに免じて、
あなたの処分はファイサル王子に譲ってあげる」
そう告げると、少女は青い信号弾を空へ撃ち上げた。
直後、別のカイトが滑空し、
彼女の体をさらうように引き上げる。
紅い満月が照らす夜空へ、
彼女はあっけなく消えていった。




