異世界の普通の家庭に転生、短い命だけど僕は幸せな人生を生きる
曹洞宗×異世界転生
少年が望んでいた、普通の生活。
だけど、『ソレ』は残酷にも伝えてくる。
「…はあ、やれやれ」
相変わらず、コレか。
僕は鏡を見るのをやめ、リビングに戻る。
そして、
「いってらっしゃい、お母さん、お父さん」
玄関で、2人を見送る。
お母さんは、ギルドの裏方。職員の食事を作る。お父さんは、人助け。困っている人を助ける。本当は、無償で助けたいらしいけど、人徳か、決まって何かお礼をもらう。本当は、城に勤めてもおかしくない実力者らしいけど。
そして、おばあちゃんもいる。70歳、魔法使い、だったらしい。今は魔法を使えなくて、13歳の僕とお留守番。たまに自分の過去を書いている、見せてもらったことはない。
「また、誰か助けてくるよ」
「美味しいご飯を作ってくるからね、母さんとお留守番よろしく」
「今日は、僕の夕食を楽しみにしていて下さい」
笑顔で僕は2人に言う。
キョトン、とされるけど、すぐに笑顔になり、僕の頭をわしわしと撫でて、出掛けていった。
「よし。
七草粥を作ろう」
七草粥。
新年になり、大体今くらいの日に。
元の世界であった文化。
なずな、はこべら、などで作る雑炊。
ありがたいことに、この世界にも米はある。
『ほら、七草粥たくさん作ったよ!』
『わあっ、いっぱい食べよう!』
顔はなんとか思い出さずに済んだ。
声だけ。
元、前の世界の。
今あるものに感謝しない、欲しい服を買って、旅行で贅沢して、食べたいものを食べきれないくらいまで買って、腐らせて捨てる。
「だから、この世界のお母さんとお父さんとおばあちゃんには感謝しないと」
今あるものに感謝し、欲を張らない3人に。
僕の望んでいた、普通の生活。赴粥飯法のような、感謝する。
よし、頑張ろう。
だが、
「七草粥って、なずな、はこべら、あと、何があったっけ」
探す以前の問題。
七草粥、七つの草なんだろうけど、何が使われているのかわからない。
テレビって、前の世界では、あって当たり前だったけど、作り方はわからなかったし、わからない。
そんな感じ。
「七草粥、七草粥。
僕は3人に感謝したいんだ、今日だけは欲張りになりたいんだ、この世界にはないものを」
考える、考える。
ど、どくだみ?
おばあちゃんに聞いても、困らせるだけだろう、ないものの作り方を教えてって、禅じゃないか。禅問答。
もう少し勉強していれば。
18歳で死んだけど、七草粥くらいは、なんとかできたはずだ。
「…ダメだ」
はあ。
約束が。
夕食のときが来てしまった。
「すみません、美味しいお粥を作ろうと思ったけど、できませんでした。約束を破ってごめんなさい」
僕は3人に頭を下げる。
『何で約束を破るのっ、折角楽しみにしてたのにっ』
『じゃあ作るなよ』
前の世界だったら。
きっと、この世界の、この人たちも。
だけど、
「息子が作ってくれた食事がある。
これ以上、何を望めばいいんだい?」
「ご飯作るの上手だね、凄いじゃん」
「これが、美味しいご飯」
心から、微笑んでそう言ってくれる。
そして、感謝しながら食べてくれる。
お粥を作った僕と、お米を作った人たちに、感謝しながら。
これは、僕の望んでいた普通の生活。
だけど、本当に、暖かい。
食後、鏡を見て僕は思った。
せめて、もっと長生きできないだろうか?
18歳で死に、異世界の貧乏だけど、望んでいた家庭の子に転生した。
今は、13歳。
あと、2年後に僕は何らかの形で死ぬ。
『相手の寿命が見える眼』
特別な眼が、それを知らせてくる。
ありがとうございました。




