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幻想省活動記録  作者: 長野原
正義のプロセス

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12/14

ep4

テロ行為が起きたと連絡を受けた松野と笠原の2人は駅の直前でタクシーを降りて走っていた



「ちょ!清美ちゃ、ま、まって、はぁはぁ」



息を切らさずに走っている松野と違い笠原は肩で息をしながらギリギリ走っていた。

振り向いた松野は立ち止まり、笠原を待つ



「紅羽さん、早くしないと」


「はぁ、はぁ、久しぶりに走ってるからぁ」



笠原も立ち止まり息を整える。

異能力者が公共の場で暴れる事件は大きく分けて三つに分けられる

一つ目は発現した異能力を制御できなく暴走させてしまう事故。

二つ目は個人が異能力を意図的に犯罪に使用すること。

三つ目は人工神の教会の様な何かしらの目的を持って異能力を使用して事件を起こすこと。

一つ目の異能力者は粛清対象ではなく保護対象になる。笠原の場合は異能力を犯罪に使用していないため粛清対象にはならなかった。

今回は三つ目の意図的に大勢の人工神の教会を名乗る異能力者が目的不明で暴れているテロ行為であり、今回のような事件は滅多に起こらない。すでに駅周辺は一般人の避難が進んでおり、多くのハンターが対処にあたっている



「行きましょう!」



笠原の手を引き走る松野、2人は完全に出遅れており、ほとんど事態は収束していると予想しているが可能性を信じて走る。

現場にたどり着くと、地鳴りと共に15メートル程の大きさの人間が倒れ駅ビルを破壊していた



「うわっ!何これ」


「これは…予想よりも被害が大きい」



空を見上げると高速で空を飛ぶ人間に札が張り付き制御を失い地面に激突したり、急に空が曇り無数の雷が落ちてきたりと、街が壊滅的な被害を受けていた。松野の予想では数名の異能力者が軽いデモをやっている程度と思っていたが被害はかなり大きかった



「こんなの戦争じゃん…」


「紅羽さん!」



笠原がそう呟き動けずに固まっていると、近くで爆発音が聞こえ、松野は笠原を引っ張り物陰に隠れる。



「壊す、殺す、暴れる!」



目の焦点があっていない男が同じ言葉を繰り返しながら、ポケットから大量の手榴弾を投げて暴れていて、松野はその様子を観察していた



(ありえない容量のポケット…何が出てきてもおかしくないですね…)



手榴弾を投げている男の異能力を無尽蔵のポケットと仮定して、どうするかと考えている時、上空から声が聞こえてくる



「どっせぇぇぇぇ!」


「わ!今度は何!」



上から何かが降ってきて強い衝撃で地面が割れ、あたり一面が土煙で覆われる。笠原が伏せて隠れ、松野は何かが降ってきた場所を警戒すると、強い風と共に土煙が晴れる。そこには2メートルはある黒い棍棒を肩に担いだ、眼鏡をかけ髪をオールバックにした身長が高い男が不機嫌そうに立っていた。手榴弾を持っている男は衝撃で倒れたがすぐに起き上がり、ポケットに手を突っ込み何かを取り出そうとする



「殺す!」


「ちっ!クソが!めんどくせぇんだよ!ゴミがァァァァ!」



しかしその前に背の高い男が棍棒で地面を叩くと、地面のコンクリートが割れ地中から植物が伸び、暴れていた異能力者を拘束する



「が!壊す!ころ!」



植物で拘束され、喚いている異能力者の頭を棍棒で砕く男、その様子を見た笠原は警戒してその場を動こうとしなかったが、松野はその男が誰か知っていて物陰から出て男に声をかける



「お疲れ様です。木崎(きざき)さん」


「あぁ⁉︎松野か⁉︎ちょっと待ってろ!」



木崎と呼ばれた男は怒りながら松野の方を向くと胸に手を当て、目を閉じて深呼吸をする



「すぅー、はぁー、黄色…黄色…」



松野が話しかけたのを見て笠原も恐る恐る物陰から出て、松野の後ろに隠れ、木崎の様子を観察する



「ねえ、これ何やってんの?」


「切り替えてるんですよ」



笠原はよくわからないまま木崎を見ていると、木崎のオーラが急に変わり驚く。

異様に尖った青いオーラが黄色く変わり色濃く広がった。

木崎は目が目を開けると、その表情に怒りは感じられなく。むしろ笑顔だった



「ふぅー!松野っちじゃん!応援に来てくれた系?助かるんば!俺っち整地しながら暴れてるの片付けていくからさ!撃ち漏らしがないようにここら辺警戒しといてぇ!シクヨロ!」


「わかりました」



つい先ほどまでブチギレていた木崎が人が変わったかのようにハイテンションになったのを見て笠原がドン引きしていると、木崎が地面に手を触れる。すると砕けてボコボコになった地面が動き始め平らな地面に戻った



「え!すご」


「そんじゃー!」



木崎はそのまま走り去っていった。笠原は松野の後ろに隠れながら松野に聞く



「今のイケメン眼鏡さん誰?」


「あの方は星6ハンターの木崎桃矢(とうや)さんで、異能力の関係で性格が変わってしまうんです。最初に怒ってたのは植物を操る異能力で元気になった時は土を操る異能力ですね」


「変な異能力だね」



木崎は異能力関係なく、2メートルある棍棒を軽く振り回せる力があり、5つの異能力を持っている。ただその異能力を切り替えるのに少し時間がかかるのと性格が変わってしまうデメリットもあるが、全て強力な異能力でかなりの実力者だ



「木崎さんの指示通り私たちはこの場所を固めましょう。一応これを」



松野は笠原に手のひらサイズの黒い筒を手渡し、自身も同じものを手に持つ



「なにこれ?」


「警棒です」



松野が黒い筒を軽く振ると、棒が伸び警棒になる。笠原も真似して警棒を構える



「ありがと、でもこれ」


「心許ないのはわかりますけど、私が持ち歩く武器はこれぐらいしかないんですよ」



異能力者の大暴れを見た後だと警棒だけだとかなり心許ないが、準備もせずに来たため、武器らしいものはなかった。

2人はその場で待機し、木崎が向かった方を見ると、爆発が起きたり、人が吹き飛んだり、地獄絵図で松野も素人の笠原を連れて中心に行くのは無理だと悟る



「チャンスだと思ったんですけど、この規模の戦闘だと厳しいですね」


「うん、うちミンチになると思う」



2人は諦めて辺りを警戒し、しばらくすると中心の戦闘音も大人しくなった



「そろそろ終わりましたかね?」


「結局何もできなかったなあ、ん?」



笠原が辺りを見渡すと、路地裏に逃げ込むような人影を見つける、そしてその人影には薄いがオーラがあった



「清美ちゃん!あの路地に入ったの異能力者だ!」


「追いかけます!」



松野は笠原が指差した路地に向かって踏み込み跳躍し手のひらから高火力の炎を出して機動力を上げ一瞬で路地裏に辿り着く、遅れて笠原も走り出し松野を追う



「はっや!かっこいー」



松野が路地裏を見ると走る人影を発見しスピードを緩めずに走る。

松野が路地裏に入った瞬間、笠原は歩道の影に小さい人影を発見する。よく見ると意識を失った子供が倒れていた



「な!大丈夫⁉︎」



笠原は逃げた異能力者を追うのをやめ、倒れた子供に駆け寄る。松野も笠原の声を聞き振り返る。

笠原は安全な場所へ運ぼうと、子供を抱き抱える。その時遠くで爆発音が響き、笠原と子供の元に大きな瓦礫が飛んでくる



「きゃ!あわわわわ!」



笠原が爆発音に驚き、瓦礫を避けようと走る。

松野は逃げる異能力者の背中を見てから、笠原たちを助けるために飛び出す



「紅羽さん!」


「あー!ぶな!」



松野が笠原と子供を突き飛ばし、なんとか瓦礫を避ける。松野は地面に転がり、すぐに立ち上がり笠原の元に駆け寄る



「無事ですか!」


「なんとかぁ」



笠原は子供を庇うように抱き抱え、擦り傷だらけになったが、無事だった



「ありがとう清美ちゃん」



立ち上がった笠原は笑顔で松野に礼を言う。笠原が守った子供に怪我はなく、その様子を見た松野は絞り出すように答える



「…いえ」



その後、処理班が現れ、笠原は子供を任せ、松野と傷の手当てをする。松野は軽い擦り傷だけだが、笠原は全身に擦り傷だらけだった



「いたっ!すごい痛い!」


「すいません、見つけた異能力者を逃してしまって、こんな怪我まで…」


「何言ってんの?清美ちゃんいなかったらうち死んでるよ?清美ちゃんが謝ることないよ、むしろうちが足引っ張ったから」



明らかに落ち込んでいる松野に笠原は明るく返すが松野の表情は暗いままだった。

笠原がどう元気づけようかと考えていると、安倍が手を振りながら近づく



「2人とも生きとるな、ごめんな、思ったより大規模なテロで余裕なかったわ」


「いえ、私が何もできなかっただけです」



無傷の安倍が半笑いで謝る、早く騒ぎを鎮める必要があったため、安倍は松野達に気を使うことができなかった。結果テロはすぐに治ったが目的は分からずに調査中ということだった。

少し遅れて木崎が2人の前に現れる



「お!つ!か!れ!俺っち登場!さっきは挨拶できなかったからな!笠原っち!安倍っちから聞いてるぜ!」


「おつかれです!笠原紅羽です!」


「元気いーね!子供を保護したの見てたよ!いい子じゃん君!気に入ったよ俺っち!」


「ありがとうございます!なんとかあの子無事みたいで!」



木崎のハイテンションに当てられたのか笠原の声もデカくなる。そんな会話をしていると安倍の携帯に電話がかかってくる。安倍は少し離れて電話に出た



「はいもしもし……そういうことか、わかったわほなすぐ向かうわ」



安倍は電話を切り、木崎に声をかける



「木崎さん、ちょっと自分別件できたわ、2人のこと頼むで」


「りょー!かい!安倍っちの代わりに松野っちの近くで待機してればいいだけっしょ?」


「そうやね、松野ちゃんもごめんけど木崎さんに頼んでな」


「わかりました」



そのまま安倍は空を飛び慌ただしくその場から去っていった



「あんなに急いでどうしたんだろ?」


「安倍っち実は忙しい人だからな!これからは俺っちを頼ってくれ!」


「よろしくお願いします。木崎さん」


「任せろ!じゃあ!困ったらいつでも呼んでな!俺っちは処理班の手伝いしてくる!」



木崎も離れていく、そのタイミングで笠原の怪我の手当ても終わり立ち上がる



「うちらも何か手伝えることないか聞いてこようか」


「そうですね」



2人は手伝いとして、一般人が現場に入ってこないように塞いでいる警備員に扮した管理課の職員の近くで瓦礫を掃除した。その時に地下に埋まっていた不発弾が爆発し、建物が倒壊したという風に誤魔化したことを知った。

野次馬も集まり、スーツを着ている松野とスカジャンを着た笠原は作業員に見えないため少し目立った



「ねえ!君ら!なんで中にいんの⁉︎」



野次馬の1人に声をかけられた笠原はどうするか松野を見る



「離れた方がいいですね」


「返事はしない方がいいよね?」


「そうですね、幻想省の隠蔽の邪魔になってしまいますから」



夕方頃に手伝いが終わり、2人は現場を後にする。駅の封鎖も夜には解除された。

この日はもう捜索する気が起きずに松野は笠原のホテルをどうするか考え始める。

笠原はずっと落ち込んでいる松野のことを気にかけていた。そして歩いていると笠原はご飯を食べてないことを思い出し、目の前に居酒屋があることに気がつく



「ねえ、清美ちゃん!ご飯たべよう!」


「そう、ですね。そういえばお昼も食べてないですね」


「そして、落ち込んでる時は飲むに限るよね」



有無も言わさずに松野の手を引き、笠原は居酒屋に入る



「私あまりお酒は飲まないですよ?」


「大丈夫!ここはご飯が多いところだから!」


「いらっしゃいませー!何名様ですか⁉︎」



居酒屋らしい活気のある男の店員に声をかけられ、笠原は指を2本立てて答える



「2人でーす!」


「2名様ですね、ご案内します!」



2人は流れる様に席に案内する店員に着いて行き座敷の半個室になっている席に案内される



「お決まりになりましたら、タッチパネルから注文をお願いいたします」


「はーい」



店員が去ると笠原は慣れた手つきでメニューを開く



「飲み放題でいいよね?あ、うちのご飯経費で落ちるんだよね?」


「一応そうですけど、お酒は…」


「大丈夫、大丈夫。うち聞いたことあるもん、商品名書かれてない領収書もらえば、詳しくはわかんないから飲んでもいいって、よし、注文!最初何飲む?」



松野の言葉を聞かずに飲み放題を注文した笠原、松野は少し悩み答える



「…レモンサワーを」


「おっけー、うちも同じのにしよ」



経費で酒を飲むというやり方は褒められたものではないが笠原なりに落ち込んでいる自分を元気づけようとしているのだと思い、松野は無粋なことは言わずに楽しもうと決めた。

注文して直ぐに店員が酒を持ってくる



「お待たせしましたー!レモンサワー2つです!」


「ありがとうございます」


「どうもー、あ、店員さん!おすすめのご飯とかあります?」



笠原が聞くと店員はテーブルにある、メニューを指す



「これとかおすすめですよ、新商品なんですけどめっちゃうまいです」


「めっちゃうまいならこれください!」


「ありがとうございます!」



店員が去り、2人はグラスを持つ



「それじゃ、今日はお疲れかんぱーい!」


「お疲れ様です」



その後、2人とも空腹だったので食事をメインにしながらも、水の代わりに酒を飲み続けたせいで早めに酒が回っていく



「やっぱりぃ、お酒は飲んでよかったです。飲むのを避けなくてよかったです」


「あははは!お酒だけに!」


「ふふっ、今日の私は調子いいです」



2人ともアルコールが入り、雰囲気が緩くなる。ダジャレで笑い合っていると、急に松野の表情が曇る



「紅羽さん、正義ってなんだと思いますかぁ?」


「正義?んー」



急な問いだったが、松野の表情で笠原なりに真剣に答えようと悩むが答えが見つからずに、黙り込む。松野は笠原の答えを待たずに話し始める



「私もわかんなくなっちゃって、さっき紅羽さんが見つけた異能力者を追いかけたじゃないですか。でも私が仕事のために人を殺そうと追いかけてる時、紅羽さんは立ち止まって子供を助けて…」



松野はグラスを両手で包み少し残ったグラスの中身を見ながら話しているのを見て笠原は松野が急に落ち込んだ理由がわかった。しかし笠原が口を挟む前に松野が続けて話す



「私、あの時直ぐ動けなかったんです。目の前の命を殺すか助けるか、悩んでしまったんです。それなのに紅羽さんは迷わずに助ける方を選んですごいなーって」



グラスの残りを飲み干す松野。

松野は笠原の行動を尊敬し、嫉妬した。最初、粛清は正しいことだと信じていた、しかし粛清を、人を殺していくうちに松野は迷い始めた。今殺した人間にも人生があり、大切な人がいるかもしれない。殺す以外の道もあるかもしれないと。今回の依頼を受けたのも松野なりに別の道を模索した結果だった。

酒の力もあるがそんな相談をしてくれた松野に自分なりに真剣に向き合いたいと思った笠原は答える



「うちは、弱いだけだよ。助ける方が殺すことよりも心が楽だから。うちも死にたくないから粛清しないといけないのに、殺すって選択肢が出てこなかった」



笠原なりのフォローを聞き松野は過去を思い出し呟く



「…私の父は警察官だったんです。正義の味方みたいで憧れでした」



松野は呟きに笠原は反応する



「だったって」


「私が7歳の頃事件に巻き込まれて殉職したと聞きました。後から分かったのは事件を起こした犯人は異能力者だったということでした」



松野の発言に笠原は言葉を失うが松野は構わず続ける



「高校生の時私にも異能力があることがわかり、その時に幻想省の方から全てを聞きました。父を殺した異能力者はその時すでに粛清されていることも…私は父の様な被害者を出さないために異能力者を粛清する仕事に志願しました。これが正義だと信じて」



今、松野の中で揺らいでいる正義。最初から復讐のために異能力者を殺していたら悩むことはなかったかもしれないが、恨むことも正当化されずに正しいと思ってする人殺しはまともな感性を持っているなら当然耐えられなくなる日が来る。だからこそ松野は仕事を続けるために、自分の行為を正当化するために正義という答えを求めていた。

黙って話を聞いていた笠原も松野が求める答えを持っていないため安易なことは言えずにいる



「人を殺すってことは、その後の選択肢に永遠に付き纏うものです。そんなのは強さなんかじゃないですよ。弱いままでいることが正しいことなのかもしれないですね…」



松野はそう言い、グラスをテーブルの端に寄せる。笠原が口を開こうとした時松野はタッチパネルに手を伸ばす



「今日はお酒を飲むことが正しいです!赤ワイン頼みますねぇ」



真面目な話で酔いが覚めてきた笠原と違い、松野はずっと酔っぱらっていて情緒がおかしくなり、打って変わってノリノリで酒を追加する。その様子を見た笠原は笑う



「その通り!美味しいご飯とお酒は正しい!うちもおかわりしよー」


「なんか、今日いっぱい飲める日です」



真面目な話は一旦終わり、楽しい飲み会が再開した。松野の悩みを解消することは自分には言えないと笠原は今だけでも松野に苦しまずにいてほしいと願う



「この人最近よく見かけますねぇ」



松野が突然壁に貼ってあるポスターを指差す、それは若い女性が写った飲酒運転禁止のポスターだった



「え、清美ちゃん知らないの?日本一のインフルエンサー出会(であい)マキナ」


「あー、この人が今名前と顔が一致しました」


「清美ちゃん流行に疎い人?」


「そんなことはないですよ。運悪く知らなかっただけです。私も推し活してますもん」



幻想省と関係ない話を始め、お互い笑い合う。出会って間もないが2人はすっかり仲良くなっていた。

しかしその後



「ちょっと!清美ちゃん!ちゃんと立って!」


「たってますろ?みぎあしがかるいです」


「そりゃそうでしょ、うちの肩貸してるんだから!」



松野が立ってられないほどに酔っぱらい、笠原が必死に松野を運んでいた



「ほら!タクシー来たから!」


「そんな、せんたくしー…」


「ちょ、笑わせないでよ、ふふ!」



なんとか笠原は店を出て松野をタクシーに乗せる



「清美ちゃん!家の場所いえる?」


「よゆうですよ!」


「ならよかった…ちょっと心配だからうちもついてくね」



家に送り届けないと道端で寝そうな松野を心配して笠原もタクシーに乗り込む。多少時間はかかったが松野は運転手に住所を伝え、なんとか目的地に到着した



「ありがとうございましたー!ほら清美ちゃんもう少しだから」


「いえーい」


「ふは!き、清美ちゃんここでいいの?」



松野と表札がある立派な一軒家の前で松野に確認すると、おそらく肯定の返事が返ってきた。家の電気がついていて誰かいると判断して笠原はインターホンを押す。すると直ぐに扉が開く



「はーい、あら大変」



家の中から松野によく似た女性が出てきて笠原達に慌てて駆け寄る



「こんばんはー、清美ちゃんお届けに参りましたー」


「ただいまー」


「お帰りなさい。ありがとうねみーちゃんのお友達?」


「はい!家まで運びますよ」



笠原は家の中に入り、松野をリビングのソファに寝かせると直ぐに眠りについた



「わざわざありがとね、みーちゃんの母です」


「初めまして!笠原紅羽です!清美ちゃんの友達です!」


「紅羽ちゃんね、それにしてもこの子がこんなになるなんて初めてだわ」



松野の母親の言葉で笠原は若干の罪悪感を覚える。元気づけるためとは言えここまで飲ませてしまったのは笠原ミスだった



「いやー、ちょっと楽しくていっぱい飲んじゃいましたー」


「そうなの?ならいいんだけどね。紅羽ちゃんも今日は遅いから泊まって行きなさい」


「いいんですか?」


「いいのよ、みーちゃんはもう寝ちゃったから、紅羽ちゃんはお風呂入る?」


「はい!いただきます!」


「着替えは、これ使ってちょうだい」



松野の母は笠原にやたらギラギラしたジャージを手渡す。それを受け取り笠原は案内されて風呂に入る。

風呂上がり、酔いが少し覚めて渡されたギラギラしたジャージに違和感を覚えながらも着替えてリビングに戻る



「お風呂いただきましたー」


「お帰りなさい、早速で悪いのだけどみーちゃんを運ぶの手伝ってくれないかしら?」


「もちろんです!」



笠原は松野の母と協力して松野を部屋に運ぶ、部屋に入るとベットの隣に布団が敷いてあった。松野をベットに寝かせることに成功し一息つく



「ふぅー、ありがとね紅羽ちゃん。お布団ひいといたから、ここで寝てちょうだい」


「急にきたのに何から何までありがとうございます」


「これくらいいいのよ、みーちゃんを心配して送ってくれたんでしょ?」


「流石に置いていけませんよ。この時期凍死しかねませんし。何より、友達なので!」



友達という単語を嬉しそうに強調する笠原。

出会ったばかりだか松野は笠原を犯罪者と色眼鏡をかけて見ないし、話していて楽しい、さらに命も救ってもらった。笠原は松野と友達になりたいと心から思っており、本人に確認したわけではないが母親に友達と思われるのは嬉しかった。

そんな笠原を見て松野の母は嬉しそうに笑う



「紅羽ちゃんはいい人ね。みーちゃんのことよろしくね」


「はい!」



元気よく返事をする笠原、しかし話している最中もずっと、着ているジャージがギラギラとして気になり、さらに松野の部屋に同じ様なジャージが複数発見した。笠原は疑問をぶつける



「…このピアノロックのシンガーソングライターみたいなジャージは清美ちゃんのなんですか?」


「そうなの、うちの子服のセンスがちょっと尖ってるのよね」



松野の母は困った顔でそう言った


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