サマーバケーション!後編
8月13日夏休みもそろそろ後半へと入ろうとしてた。
相変わらず今年の夏は毎日暑い。
俺は今日も家のリビングのソファーでごろごろとしていた。
ちなみにこの前壊れていたエアコンは直っているので部屋の中は外の気温と比べると段違いの差で涼しい。
「空も飽きないね。毎日同じ事の繰り返しで」
いつの間にか渚が家に来ていたが、こいつはわざわざ嫌味でも言いに来たのだろうか。
「なんだ渚来てたのか。というかなんで来たんだ?」
「ちょっとーなんか私が来たらダメみたいな言い方しないでよ。私は瑞穂先輩に用事があって来ただけよ。別に空なんかに用はないからね」
「さいですか。でも、姉さんなら居ないぞ」
「そうなの?せっかく料理習いにきたのに…」
「茜先輩と遊びに行ったし帰りは夕方くらいになるとは思うけど」
姉さんと茜先輩のコンビは買い物に行くと結構時間かかるんだよな。まぁ女性はそんなものかもしれないけど。
「そっかぁ。それじゃあせっかくここに来たんだし私が空の宿題手伝ってあげるよ」
「いや、それは結構」
「断るの早いよ!」
「この後部長と天文部のことで会うことになってるんだよ。だからもう行かなきゃ」
別に勉強をするということが嫌で逃げるというわけでは決してない。
「千穂ちゃんと会うの!?」
「ああ。そういうことだから留守番よろしく~」
「え、ちょっと待ちなさいよー!
俺は渚に留守番を任せて家を出て行った。
何か渚が叫んでいた気がするがこれはいつもの聞かなかったことにしてと。
さて、この暑い日が差すなか学校まで行くとするか。
15分ほどで学校に着いたのだがそれまでに着ていたシャツはすっかり汗ばんでいた。
学校に入り部室に向かう途中窓から外を見てみると野球部や陸上部が練習を行っていたがよくこの暑さでがんばっていられるなとつくづく思ってしまう。
「こんちわ」
「空さん待ってましたよ!」
天文部の部室に入ると先に来ていた部長が扇風機で涼しみながら椅子に座っていた。ちなみに当たり前のようだけどこの部室にはエアコンはない。
そしてテーブルには久しぶりの部長お手製の飲み物が置いてあった。
「お、今日はアイスティーなんだね」
「はい。やっぱり暑いときは冷たい飲み物に限りますね!」
俺は椅子に腰かけると早速部長が入れていくれていたアイスティーを飲んだ。
部長お手製のアイスティーは普通においしく乾ききった喉を潤してくれた。
「さてと、空さんが来てくれたことですし夏休み第1回目の部活を始めましょうか!」
他の部活はこの夏休みに何回も部活を行っているだろうけど天文部はまだ1回目。
つくづくのんびりした部活だなぁと思ってしまうんだけど、そこが俺にあっているのだと思う。
「今回は星を見にいきたいと思います!」
「やっと天文部らしい活動だね。だけどまたなんで急に星を見に行くなんて?」
いつもの天文部ならお喋りだけして終わりのはずなんだけど…。
「これです!これを見てください」
部長は自分のカバンから新聞を取り出してそれを俺に見せてきた。
俺はそれを読んでみると新聞には「ペルセウス座流星群が今夜から明日早朝にかけてピーク」と書いてあった。
「ペルセウス座はわからないけどとりあえず流星群が今夜から見えるってことかな?」
「そういうことです!だから今夜流星群を見にいきましょう」
「それはいいけどどこで見るの?」
「そのことなら既に決めてるんですよ。桜川学園の裏山です」
「裏山かぁ」
裏山といえばその名の通り桜川学園の裏にある山である。確かに裏山から星を観測するならば適している場所だとは思うけど…。
「確かにいいと思うけど、登らないといけないよね」
観測するとなったらやはりあの山を登らないと星を見ることはできないだろう。
普通の山と比べるとそこまで高くない山と言っても夜登るとなるとさすがに迷ったりするかもしれない。
「ちょっと俺達だけじゃあ心配だよな…」
「大丈夫ですよ。常盤先生が一緒に行ってくれることになりましたから」
「え…先生が来るの…」
「ほぅ、朝倉。そんなに私に来てほしくないのか?」
急に後ろから声がしたので振り返ってみると後ろのドアの方にいつの間に来たのか常盤先生が居た。
「せ、先生いつの間に…」
「あんたらが流星群を見にいくという話をし始めたあたりからかな」
そんなに前から…。
「それで朝倉。私にそんなに来てほしくないのかい?」
先生が少しずつ俺に近づいてきているが、めっちゃ怖いぞ…。
「いえいえ!そんなこと全然思ってもませんし、むしろ先生には是非来てほしいですよ!」
俺はおもってもないことを先生に言ったがもちろんこれは助かるために言っただけだ。
「ふん。最初からそう言いなさい」
どうやら俺の命は助かったようだ。それにしても未だに常盤先生は苦手だ…。
俺の事まだ目つけてるらしいし。
「それにあんた等は高校生と言ってもまだ子供なわけだし大人な私が必要だろう」
まぁ確かにその通りだ。下手したら補導されるかもしれないし。
「はい。ということでよろしくお願いしますね常盤先生」
「ああ。ところで今日のいつ集合予定なんだ?」
「そうですね。今夜8時に桜川学園の門の前で集合でどうですか?」
「わかった。それじゃあふたりとも遅れるなよ。特に朝倉!わかってるな?」
「わかってますよ」
どうも先生には全然信用されてないな。
「それじゃあな。私は職員室に帰るぞ」
そう言うと先生は部室から出て行った。
「ふぅ。なんか言いたいことだけ言って帰っていったな…」
「ふふ。本当に仲がいいですね」
部長は笑いながらこう言ってるがどこをどう見れば仲良く見えるのだろうか。
この後部長と今夜のことについてしばらく喋った後一旦解散した。
時間も全然あるので俺は今夜のために支度をするため一度家に帰ることにした。それに渚を留守番に使ってるし。
帰宅するとしっかりと渚が留守番をしてくれていた。
まぁ留守番させていたことについてはいつも以上に渚に怒られたけど…。
「へぇ、この後流星群の観測に行くんだぁ」
予想通り姉さんは茜先輩との買い物でいつもより遅い帰宅だったがちゃんといつもの時間と同じ時間帯に晩飯を作ってくれた。
そして今はこの後流星群を天文部で見に行くという会話中だ。
「やっと天文部らしい活動なんだよね」
「いいなぁ。お姉ちゃんも一緒に行きたいけどやっぱり天文部の初めてのちゃんとした活動だし邪魔するのも悪いからな~」
「別にいいと思うけど。なんなら部長に聞いてみようか?」
「今回は遠慮しておくよ~。今度またあるときにお願いするね」
「わかったよ」
どうやら姉さんは気を使ってくれているらしい。俺としては全然よかったんだけどな。
「ということだから今日は帰り遅くなるから」
「うん。お姉ちゃんは先に寝ちゃうけど気をつけて行って来てね~」
集合時間まで1時間を切っていたので俺は急いで残りのご飯を食べるとあまり荷物はないけど一応リュックだけ背負って姉さんに見送られながら家を出た。
昼間と違って夜はそんなに暑くなかったので走ってもそこまで汗はかかなかった。
校門が見えてくると校門の前には部長と先生それに何故か水無月が来ていた。
「ギリギリセーフだな…」
「こんばんは、空さん」
「朝倉遅れなかったか。せっかく罰を考えていたんだがな」
罰というのが凄い気になるけど本当に遅刻しなくてよかった…。
「というかなんで水無月が居るんだ?」
「フフ、私も部活動よ」
一体なんの部活に入っているんだと聞こうと思ったのだがいつもの掛け合いになるので聞くのは辞めておいた。
「それでは全員揃いましたので出発しましょー!常盤先生案内よろしくお願いします」
「はぁ…やれやれ。朝倉と水無月の組み合わせが居るのに裏山の案内とはこれは半端なく疲れそうだな。アンタらはぐれないようにちゃんとついてきなさいよ」
少々やる気のない先生を先頭に俺たちは裏山の頂上目指して歩きだした。
裏山に入ると予想以上に暗く道も複雑で少し心配になったがここは迷わないように先生についていくしかない。
それよりも山ということだけあって虫も多い…。
「虫よけスプレー持ってくるべきだったな」
「フフ、朝倉。私が貸してあげるわよ」
「ああ。それにしてもお前用意いいな」
「当たり前よ。これぐらいいつでも持っておくのが常識よ」
虫よけスプレーを常備している方が珍しいと思うけど。そんなことを思いながらも俺は水無月から借りた虫よけスプレーを使った。
「そういえばここの山は蛇やら猪が居るから気を付けなよ」
突如先生がそんなことを言いだしたが急にそんなこと言われても…
「先生そういうことは先に言ってくださいよ」
「ああ、すっかり言うこと忘れていてね」
この先生本当に適当だな。
「大丈夫ですよ朝倉君。水無月さんが居るから安心です」
「フフ、そういうこと。私が居るんだから大船に乗ったつもりでいなさい」
何故か部長は水無月のことを信用して居るけど何か悪いことでも吹きこまれたのかな…?
というか水無月が居たら何かあるんだろうか?本当に水無月って不思議な奴だな。
こんな感じで皆と雑談をしながら山を少しずつ登って行った。
皆は特に問題もなく登っていっていたけれど俺は夏休みでだらだら過ごしていたということもありやはり登山はきつかった。
体力が限界を迎えそうになっていた時ようやく頂上に辿りついた。
裏山を久しぶりに登ったけどこんなに道のりあったんだな。
裏山について空を見上げてみるとたくさんの星はあったが流星群はまだのようだ。
「皆さんお疲れさまでした。まだ流星群まで少し時間があるので休憩をしましょう」
「登るだけでここまで疲れるとは…」
俺は地面だろうとおかまいなしにその場に倒れこんだ。そして腕時計を見てみると既に時刻は9時となっていた。ここまで登ってくるのに約1時間ほどかかったらしい。
「それにしてもここからだと桜川の町が一望できますね」
部長は少しはしゃぎながら桜川の町を見ていた。部長は疲れていないのだろうか?
でも確かにここからだと綺麗に桜川の町が見渡せることができる。
「それより部長。今さらだけど望遠鏡とかって持ってきてないのかな?」
やはり星を観測するんだし望遠鏡くらいは持ってきているだろう。
「望遠鏡ですか?」
だが部長は頭をかしげて何を言っているんだろうというような顔をした。
「え、もしかしてないの?」
「はい、ありませんよ」
部長はきっぱりと俺の質問を否定した。
「フフ、大丈夫よ朝倉。望遠鏡なんてなくてもちゃんと流星群はみえるわよ」
「俺が言いたいのはそういうことじゃないんだけど」
まさか星を観測するのに望遠鏡を持ってきていないとは…。天文部としていいんだろうか。
でもこの部活は本当に適当…じゃなくて自由だからいいのかもしれないな。
「朝倉は意外とそういうところは真面目なんだなー」
「あの、先生何してるんですか?」
先生の声が今さっきまでと少し違ったので見てみると先生はレジャーシートを敷いてビールを勢いよく飲んでいた。
「あぁ?見りゃあわかるでしょ!ビール飲んでるのよ!」
「それはわかるんですけど…。何故にここで?」
「いやぁなぁ流星群を見ながらのビールは合うと思ってな!持って来たんだ」
わざわざこんな裏山まで大量のビール缶を持って来たのか…。妙にカバンが膨らんでると思ってたけどまさかこれだったとは。
それに先生は流星群見る前から既に酔ってるしようだし。
「あ、皆さん見てください!流星群ですよ!!」
部長は少し声を荒げて叫んだ。俺も空を見上げてみた。
すると夜空にたくさんあった星が流れ星となって降って来ていた。
「これが流星群か…」
「フフ、ペルセウス座流星群なんて初めて見るわね」
流れ星は1回だけ見たことあるけどまさかこんなにたくさんの星が降ってくるとは。
こんなに絶景ポイントから見ることなんてそんなにあるけとじゃないし今回は苦労してここまで来たかいがあったかもしれない。
「本当に、綺麗ですね…」
部長も口を開けてまで呆然と星を見ていた。
部長もこの流星群が見れて喜んでいることだしやっぱり本当にここに来てよかった。
「いやぁ、やっぱり私の思った通り酒を飲みながらの流星群は合うわぁ!」
若干一名このムードをぶち壊しな人がいるけど…。
この後も続けて流星群は降り続けてた。1時間ほど見ていたが大体50個は流れていただろうか?
「今日は流星群が見れて本当によかったです!」
「ああ。俺もだよ」
「フフ、私も悪くはなかったわ」
「次回もまた流星群見に来ましょうね」
今回の活動は成功で終わってよかった。だけど次の流星群を観測する場所は裏山以外で願いたい。
「それでは帰りましょうか」
「そうだな。でも、その前に…」
俺たちはある一つの方向を一斉に見た。
「あの人どうしようか?」
そこにはレジャーシートの上で飲んだビール缶を散らかして寝転がっている先生が居た。
「水無月ひとりで大丈夫か?」
「大丈夫よ。それに私意外と力あるのよ」
俺達は裏山を下って学校前に戻って来た。
そして時刻は既に10時半を過ぎようとしていた。
酔っていて千鳥足な先生を水無月はひとりで送っていくと言っているが大丈夫かな?
「それよりも朝倉は千穂を送っていきなさい。こんな夜中に美少女が一人で帰るのは危ないでしょ」
「確かにそうだけど、お前だって一応女なんだしさ…」
「あら、私を美少女と思ってくれてるのかしら?」
「俺は別にそう言ったつもりはないんだけど」
まぁでもこいつの場合はもし変質者と会ったとしてもなんとかしそうだし大丈夫か。
「じゃあ先生の事頼むな」
「フフ、任せなさい。朝倉と千穂も気をつけて帰りなさいよ」
そう言って水無月は歩いて帰って行った。
それにしても水無月はなんで先生の家を知っているんだろう。
「朝倉さん。私たちも帰りましょうか」
「そうだね。行こうか」
部長を送りに家まで向かっているがやっぱり夜は静かだ。
俺と部長以外に歩いている人はちらほらと少しぐらいしか見ず車に限っては全然見かけない。
話声なんて俺と部長の声、それに虫の鳴き声しか聞こえてこない。
まぁこれだけ静かなのは桜川の町だからこそなんだろうな。
「空さん。私は大丈夫ですのでお家に帰ってください」
「いや、ちょうど散歩したい気分なんだよ。だからついでにね」
部長は遠慮しているがやはりこんな夜中にひとりにさせるわけにもいかない。
「やっぱり優しいですね」
「別にそうでもないけど…」
「あはは、謙遜しないでくださいよ」
別に謙遜しているわけじゃないんだけど。自分が優しいなんてさすがに思わないだけだ。
「こんなに楽しく毎日が遅れているなんて1年前の私は思ってもいなかっただろうなぁ…」
「どういうこと?」
「そのまんまの意味ですよ。1年前の私は親しい友達も居ずただ平凡な毎日を過ごしていました。けれど今は空さん達とお喋りしたり海へ行ったり、こうやって流星群を観測もしました。私本当に毎日が楽しくなりました。これもすべて空さんのおかげですね!」
「え、俺の?」
「そうです。空さんが天文部に入ってくれたおかげで私の全てが変わりましたしお友達もできました。だから空さんに感謝してます」
部長は俺の方を振り返り笑顔でそう言った。
なんていうか今までこんなこと言われたことないから照れてしまう。
「でも、俺だって楽しいんだからお互い様だよ」
俺も部長と同じ気持ちだった。なにより部長と居ると何故か落ち着ける。
う~ん、部長は癒し系と言った方がいいのかな?
「だから、これからもよろしくね部長」
「はい!こちらこそよろしくお願いします、空さん!」
自意識過剰化もしれないが、今日だけで部長とまたちょっと距離が縮んだような気がした。
そして流星群を観測してからしばらく経ち気づけば夏休みも残り2日となった8月30日。
「休みが終わって行くのって早いな…」
「そんなこと言う暇あるなら早く宿題終わらせなよ」
只今、朝倉家では俺の溜まりに溜まった宿題を渚と共に消化中だった。
渚には頼みこんで宿題を手伝ってもらっている。
「こんなに長い夏休みだったのに何で宿題やってないのよー」
「俺は一気にやるタイプなんだよ」
「その理由毎年聞いてるよ。それで後悔してんじゃないのよ…。全く、毎年手伝わされる私の身にもなってよね」
さすがに渚の言うとおりであり何も言い返せない。
「はいはい、すいません。ちゃんとやりますから」
俺は嫌々ながらもシャーペンを持ち直し再び宿題に取りかかろうとした時俺の携帯が鳴り出した。
携帯の画面を見てみると円香からの電話のようだ。
「もしもし」
「はろー空君。久しぶり」
「海以来だよね?それより電話なんて珍しいけどどうしたの?」
円香とはメールはよくするけど電話は今まで1、2回ほどしかしたことはなかった。
電話ということはよっぽどの理由があるのだろう。
「空君は宿題とか終わったりしてる?」
「まだ終わってないよ。今ちょうどしてるところ」
「それはグッドタイミング!私もね全然宿題終わってないんだよ。よかったら一緒に宿題終わらせない?」
「俺は全然構わないんだけど円香と学校も違うから宿題とか全然違うよね」
円香は俺たちと違って桜川学園から結構離れた学校に通っている。学校が違うから習っている勉強も色々違うと思うけどな。
「それでも全然問題ないよ。それに一人でやっても全然はかどらないんだよ~」
「円香がいいなら俺は全然いいけど」
それに宿題をやってない同志が増えるのは俺としては嬉しい。
「本当に!?やったー!それじゃ今から空君の家いくね」
「わかった。それじゃあ後で」
そう言うと円香が電話を切った。今から円香が家まで来るとした20分くらいかな?
「円香ちゃんどうしたの?」
「ああ。宿題やってないから一緒にやろうってことで今からここに来るらしい」
「そっか、円香ちゃん来るんだ」
「ん、なんか問題でもあるのか?」
「ううん!そういうことじゃないよ。それより空も早く宿題やりなさいよね」
「わかってるよ…。さぁて次は英語をやるか」
俺は渚に言われるので再びしょうがなく宿題をすることにした。
それからしばらくしてから円香が家にやってきた。
「空君、渚ちゃん。宿題がんばろうね!」
「ああ、そうだな。今日中に頑張って終わらせるか」
「私はとっくに終わってるんだけどね」
「それで、円香はどれだけ宿題残ってるんだ?」
「えーっと、私はねぇ…」
円香は肩にさげていたかばんから宿題であるノートや問題集を取り出していた。
「俺と同じくらい宿題残ってるな…」
「そうだね。でも、円香ちゃんって空と違って宿題早くやるタイプだと思ったんだけどな」
渚の奴俺と違ってってどういう意味だよ…。
「私的には宿題は一気にやるタイプなんだよね」
「そうだよな。やっぱり夏休みの宿題は一気にやるよな!」
「あ、空君も?へぇ私たち変な所で気が合うね♪」
微妙な所で気が合った俺と円香はわかりあったように手を握り合った。
「はいはい!そんなこと言う暇あるならふたりともさっさと宿題やりましょうね!」
何故か渚は苛立っているが渚の言っている通り時間も限られているので俺と円香は早速宿題をすることにした。
「ん~、わっかんないよぉ」
円香が来てからしばらく経ったがなかなか宿題が進まない。
円香も同様で今さっきからあまり進んでないように見える。
渚は教えてくれるのだけれとやはり2人居ると教えるのにも時間がかかってしまう。
ここは救援要請を出した方がいいのかもしれない。
「空君、誰かに電話?」
「ちょっと助けてもらおうと思ってね」
俺は携帯を取り出してある人たちに電話をすることにした。
電話をしてから数十分ほどするとふたりは家へと来てくれた。
「フフ、来てあげたわよ」
「お友達の家に招待されるなんて初めてです…」
俺が家へ呼んだのは水無月と部長だ。
この二人なら成績もいいし宿題も終わっているはずだろう。正直水無月に電話をするのは迷ってしまったのだけど…。
「ふたりとも残り少ない夏休みのところ悪いんだけど今日はよろしく」
「よろしくね、水無月さんに永倉さん」
「フフ、私に任せなさい」
「任せてください!ふたりともがんばりましょうね!」
こうして心強い仲間も増えたところで再び宿題へと戻った。
ちなみに水無月は円香を教えて部長は俺を教えるという形だ。渚は今さっきまでずっと教えてもらっていたので休憩してもらっている。
「さすがです空さん。その問題正解ですよ!」
「いや、部長が丁寧に教えてくれたおかげだからだよ」
テストの時から部長に勉強を教えてもらっていたけどやっぱり部長の教え方は上手だ。
「千穂ちゃん、空を甘やかしたら駄目だよ。ダメなときはガツンと言わなくちゃ」
せっかく問題が解けたと思ったら横で休んでいた渚がどこか不満そうに言ってきた。
「空さんはよくできていますよ。それに空さんが問題解けたら私も嬉しいですし」
やっぱり部長は優しい。いつもガミガミ言っている渚とは天と地の差があるな。
「む~。空も鼻の下伸ばして教えてもらっちゃって…」
「ありもしないことを言うな。お前は何も言わずに休んでろって。部長次の問題よろしく」
「はい!任せてください」
「空のばか…」
俺の方は部長のおかげもあり調子がよく一気に宿題のペースが早くなった。
円香の方も水無月の手伝いがあり進み具合はなかなかのようだ。
この調子なら晩飯までには終わらすことができるはずだ。
「皆お疲れ様~。ジュースとお菓子持ってきたよ~」
俺たちが勉強しているところに姉さんが差し入れを持ってきてくれた。
「ありがとう姉さん。丁度いいし休憩しようか」
「あーづがれだー」
円香はかなり疲れがたまってた様で机にペンを置いてその場で横になった。
お昼からずっとぶっ続けでやってるしさすがに疲れるよな。
「空君、宿題の方は終わりそう?」
「ああ、夜までにはなんとか終わらすことはできると思うよ」
「そっか~。だったらよかった。今日は夏祭りがあるもんね」
「夏祭り?」
夏休みももう少しで終わるのに夏祭りがあるのか?でも、去年はもっと早かったような気がするけど。
「あれ、空知らないの?今日夏祭りあるんだよ。本当はもっと早くやる予定だったけど雨が続いて今日まで延期したんだよ」
なるほど。だからあまり情報がなかったのか。
「フフ、私は今日行く気満々でここに来たんだけど」
「夏祭りかぁ。ねぇねぇ空君、宿題終わったら夏祭り行こうよ!」
「私も賛成です。皆さんと夏祭り行きたいです」
「そうだな。宿題をさっさと終わらせていこうか」
「やった~!だったら茜ちゃんと菜穂先輩も誘うね」
「そうですね。お姉ちゃん誘わなかったら後でぐちぐち言いそうですし」
「フフ、だったら私は美琴を誘ってあげようかしら」
夏祭りが俺たちの夏休み最後のイベントとなるだろう。ここはやっぱり楽しみたいな。
そう俺が思っていると携帯が鳴りだした。相手は相馬からだ。
「おい、空!夏祭り行くぞ!!」
こいつはいつも絶妙なタイミングで登場するな…。
なんとか言った通り夜までには宿題が終わった。
宿題が終わると皆は夏祭りの準備があると言ってそれぞれ自分の家へと帰って行った。
夏祭り行くだけなのに準備とかあるんだろうか…。
そして何故か俺だけ夏祭りの場所に先に行けと皆に言われたので現在夏祭りが行われる河川敷の方でひとり皆が来るのを待っていた。
それにしても祭りということだけあって人がたくさん来ている。家族連れ、友達、恋人同士など様々な人で祭りは賑わっていた。
出店も様々なものが出ていて特に焼き鳥や焼きそばなどの匂いで食欲が注がれてしまう。
「待たせたな、空!」
入口で待っていると最初に現れたのは何故か機嫌が良さそうな相馬だった。
「凄い笑顔だけどなんかいい事でもあったのか?」
「これからあるんだよ!美女たちの浴衣姿が見えるんだぞ!?興奮するに決まってるだろう」
なるほど。だからこんなにテンションが高いのか。
だけど相馬が言ってる通り姉さんたちが言ってた準備ってもしかすると…。
「空君おっまたせー♪」
近くから円香の声の高い声が聞こえてきた。俺はその声が聞こえた方向を見てみるとそこには浴衣を着た皆が居た。
「おい空!!あれだ!!俺が期待していたのはアレなんだ!いやぁ俺は生きててよかったぜぇ!」
皆の浴衣姿を見ただけで相馬は更に今さっきよりもテンションが高くなっていた。
でも、確かに皆の浴衣姿は綺麗だな。
「空君、お久しぶりです。どうですか私の浴衣姿」
「あぁ、会長ずるいですよ!朝倉先輩、私の浴衣姿もどうですか?」
菜穂先輩と美琴がずいずいと俺に近寄って浴衣姿の感想を聞いてくる。
二人の浴衣姿は綺麗と言うより可愛い方だ。だけどどうも面と向かっては言いづらい。
ここは2人だけじゃなくて皆の感想をひとまとめで言った方が効率的だろう。
「えっと、皆凄く似合ってるよ」
「あ、あの。ありがとうございます空さん」
「えへへ~お姉ちゃん嬉しいよ~」
「嬉しいけどもうちょっと空君にはがんばってほしかったなぁ」
「フフ、それが朝倉らしくていいのよ。照れてるところとか」
皆それぞれに言っているがうまく感想が言えてよかった。
「また、鼻伸ばしちゃってるよ」
「だから、伸ばしてなんかないって。それにお前も似会ってるぞ」
「ちょ、な、なに言ってる!?」
普通に感想を言ったつもりなのだけど渚はおろおろし始めた。一体どうしたんだろう?
「皆さん、こんなところでお喋りもなんですしそろそろ行きませんか?」
薄ピンクに花と蝶という浴衣姿の茜先輩がそう言うと出店の方に先に行こうとしていた。それにしても先輩スタイルいいよな。
「そうですね。それじゃあ行きましょう」
「うわ~、朝倉先輩見てください!いっぱい屋台が出てますよ!」
「ああ、そうだな。というか美琴迷子にならないようにな」
美琴ははしゃいで勝手に先へ進んでいっている。美琴を見失わないようにしないと…。
「じゃあ朝倉先輩手繋いでください!」
そういうと美琴は俺の手を取り握ってきた。俺の返事なしに握るんだな…。
「あー!美琴ちゃん先駆け禁止ですよ!」
俺と美琴が手を握っているのを見た菜穂先輩が美琴と繋いでいる逆の方の手を取って握ってきた。
なんだか海行った時のこと思い出すな。
「くっそぉ!空のやつ、うらやましすぎるぜぇっ!!」
「全く、空ってばデレデレしちゃって…」
勝手に言ってくれるがこんな状況になっている俺だって正直厳しい状況だ。
「それよりも空君。まずは腹ごしらえです!なにか食べましょう」
確かにお腹は空いているんだけど、さて何から食べようか。
「おいしそう…」
ふと後ろから声が聞こえたので振り返ってみると部長が綿菓子を見つめていた。
「部長。わたあめ食べてみますか?」
「え、そ、その私は…」
部長はどこか言いづらいようだ。
まぁ最初から綿菓子は微妙だけど部長が食べたそうにしてるし別にいいか。
「俺も丁度食べたかったんですよ。だから部長の分もついでに買ってきますよ」
「いいんですか?」
「はい。もちろんです」
「ありがとうございます空さん。そのぅ、それではお願いします」
「フフ、さすがね朝倉」
俺は部長の分もついでということで綿菓子を買いにいった。
子供の頃はよく食べていたけど最近は全然綿菓子とか食べてなかったな。
そうそう食べるもんでもないしな。
綿菓子を作っているおっちゃんに二つ分のお金を渡して俺は部長達の元へと戻って行った。
「あれ、なんか減ってるな」
皆の元へ戻ると部長と美琴、円香の3人しか居なかった。
「先輩おかえりなさいです」
「なぁ美琴。他の皆はどうしたんだ?」
「茜先輩と瑞穂先輩と渚先輩は菜穂先輩に連れていかれちゃいましたけど」
「空さんが居ない間菜穂先輩お腹すいたって言ってたから皆さんを連れていったんですよ」
なるほど。そこまで菜穂先輩はお腹すいてたのか。
「それじゃあ水無月と相馬は?」
「水無月さんと榎本君はいつの間にか居なくなってたよ」
迷子じゃないといいんだけど…。
まぁでもあの二人に限ったらそういうことはなさそうだな。
それに相馬のやつは今頃ナンパでもしてそうだし。水無月は謎だけど。
「それより部長。これどうぞ」
俺は手に持っている綿菓子を部長に渡した。
「ありがとうございます空さん。いくらでしたか?」
「お金はいいよ。だから気にせず食べてよ」
「え、でも。それは駄目ですよ。やっぱりそこのところはちゃんとしないと…」
「気にしないでよ。俺は全然気にしてないから」
「でもぉ…」
「ほらほら、そんなことより食べて食べて!」
俺はお金を払おうとしている部長を無視して無理やりにでも部長に綿菓子を食べさせようとした。
「前の時もそうですけどほんとに空さんは強引ですね」
部長は何か言っていたが結局部長は折れてくれて綿菓子を食べてくれた。
それを見た俺も自分の分の綿菓子を食べることにした。
「うわぁ、おいしいです。綿菓子なんて久しぶりです」
「ほんとだ。たまには綿菓子もいいね」
綿菓子のふわふわした感じとこの甘さがなんとも言えない。
「あぁ!空君いいなぁ。私もちょうだい」
そう言うと隣に居た円香は俺の綿菓子を少しだけ食べた。
「う~ん。おいしぃ」
「円香先輩卑怯ですよ!私だって!」
円香だけ食べたのが気に入らなかったのか美琴まで俺の綿菓子を少し食べてしまった。
「おいしいです♪」
ふたりともそんなに綿菓子を食べたかったのか。
俺の分の綿菓子が…。
「それにしても空君。これって間接キスだよね」
「は?」
「そうですよ朝倉先輩!間接キスです!」
確かに俺が食べてたところを円香と美琴が食べてしまっていた。
俺はそのことを改めて考えるとなんだか恥ずかしくなってきてしまった。
「空君かわいい♪顔赤くなってるよ~」
「本当です!朝倉先輩真っ赤です」
「からかうなよ…。それにおかしなこと言ってきたのお前らだろ」
円香と美琴は普通に笑っているが恥ずかしいという気持ちはないんだろうか。
「お二人ともうらやましいです」
「何か言った部長?」
「いえ!なんでもありません。それより皆さんを捜しにいきましょう」
「そうだね。店を見ながら皆を探してみよう」
皆を捜しながら店をまわっているとまず最初に射的の店で姉さんと渚を見つけた。
「ふたりともここに居たのか」
「空君!やっと見つけた~」
「どこ行ってたのよ空」
「そう言われても居なくなったのはふたりだろ。それよりも茜先輩と菜穂先輩はどうしたの?」
「わかんない。いつの間にかふたりとも居なくなってたから…」
いつの間にか居なくなったか。たぶんふたりは一緒に居ると思うけど心配だな…。
「何にせよふたりとも見つかってよかったよ」
「ねぇねぇ空君。私射的やってみたいの」
「射的?姉さんにしては珍しいものやりたがるね」
「瑞穂先輩あれがほしいらしいよ」
渚は射的の店にある商品の方を指さした。渚が指をさしたその先には星の形をした可愛らしいペンダントがあった。
「あれがほしいの?」
「うん!だからお姉ちゃんがんばっちゃうね~」
姉さんは気合いを入れてから受付のおじさんにお金を払い射的の銃を受け取った。
「瑞穂先輩がんばってください!」
「よーし。いっくよ~」
姉さんは目標のペンダントに向けて銃を構えたのだが何故か腰が引いている。
あの姉さんの構えだと当たらないような気がするけど…
「えいっ!」
姉さんはそのままの格好でペンダントを狙い銃を撃ったのだがやはり俺の予想通り当たらなかった。
「う~ん、あたらなかったよ。よーしもう一回!」
姉さんは再び銃を構え撃ったがこれも外れてしまった。
この後も姉さんはお金を払って何回もチャレンジしたのだが全てかすりもしなかった。
「全然当たらないなぁ。玉も後一発だよ…」
本気で姉さんは悔しそうにしているが、仕方ないここは少し助けてやるとするか。
「ちょっと姉さんいいかな?」
「空君どうしたの?」
「構え方がそもそもおかしいんだよ。ほらしっかり銃持って」
俺は姉さんの手を左手でぎゅっと握り銃を固定した。
「ちょ、ちょっと空君。手が…」
「ごめん、痛かった?」
「ううん!そういうことじゃないけど…なんでもないよ~」
そして俺は空いている右手で腰が引けている姉さんの腰を支えた。
「あう~…」
「どうしたの姉さん?」
「べ、別になんでもないよ。よ~し空君ペンダント当てるよ」
「うん!そのまま狙いを定めて」
姉さんの持っている銃を誘導してよく狙いを定めた。
「そこだよ姉さん!」
合図を出してそれを聞いた姉さんは玉を放った。
玉が早すぎてどのように飛んで行ったかまではわからなかったが姉さんが放った玉は目標の星のペンダントに当たって見事に星のペンダントを落とした。
「やったぁ!当たったよ空君!」
当たったのがよほど嬉しかったのか姉さんは勢いよく俺に抱きついてきた。
「うわっ!ちょっと姉さん恥ずかしいって!」
喜んでいる姉さんはどうやら俺の言葉が聞こえてないらしい。
恥ずかしいというよりそろそろ苦しくなってきた。
「瑞穂先輩何してるんですか!空も離れなさい!」
後ろに居た渚は力いっぱいに俺と姉さんを引き離してくれた。
今回だけは渚に助けられた。
「ねえちゃん達仲いいねぇ。ほら商品だ!」
射的の店のおじさんが商品の星のペンダントを姉さんに渡した。
「ありがとうございます、おじさん!」
星のペンダントを受け取った姉さんはペンダントを見て今さっき以上に嬉しがっているがそんなにこれが欲しかったのか。
だけど本当に取れてよかった。
「ありがとうね空君。これがとれたのは空君のおかげだよ~」
「あはは。別に大したことしてないからいいよ」
「やっぱり空君が私の弟でよかったよ~」
そこまでのことはしてないけど、ここまで言われたらさすがに照れてしまう。
「ねぇねぇ空君。このペンダントつけてくれない?」
「ああ、いいよ」
俺は姉さんにペンダントを受け取り姉さんの後ろの首の方から髪を少しかきあげ星のペンダントを付けてあげた。
「できたよ姉さん」
「ありがとう空君。どうかな似合ってるかな?」
前に行って姉さんを見てみると結構いい感じで似合っていた。
着物とペンダントの組み合わせって意外といけるんだな。
「凄く似合ってるよ」
「本当?ありがとうね空君!」
姉さんは褒められたことが嬉しかったのかまたしてもテンションが上がっていた。
「それより朝倉先輩。そろそろ茜先輩たちを探さないといけないことないですか?」
「あっ!そうだったな」
射的のことで集中していて本来の目的を忘れてしまうところだった。
「ここは効率良く分かれて捜索しよう。俺と円香、美琴と部長それと姉さんと渚で。ひとりでも見つかったら電話すること。いいかな?」
「「はーい」」
こうして再び俺たちは菜穂先輩、茜先輩、水無月、相馬の捜索を再開した。
早く見つかるといいんだけど…。
「茜先輩たち居ないな」
「そうだね。お姉ちゃんたちどこ歩いてるんだろう?」
俺と円香は屋台を細かく見ながら捜しているのだが1人として見つけられてない状態だった。
「早くしないと花火が始まっちゃうよ」
「え、花火あるのか?」
「空君知らなかったの?8時から花火あるんだよ」
8時まであと30分ほどしかないな…。
「だったら早く見つけないとな。やっぱり花火は皆で見たいし」
「うん!そうだね。全く~お姉ちゃん達どこ行ったんだろう?」
円香の言ってる通り茜先輩たちは本当にどこに居るんだろうか…。
俺たちは次に屋台の方から外れて神社へと続く道へと行ってみることにした。
ここら辺は屋台がないので屋台のあるところと比べるとかなり静かだ。
そして神社へと続く道を円香と歩いているとその道の途中しゃがんでいるよく見知った女性を見つけた。
「茜先輩ここに居たんですか」
「朝倉君。それはこちらの台詞ですよ」
やっと茜先輩を見つけたのだけど茜先輩はしゃがんで何かをしているようだ。
「お姉ちゃんなにしてるの?」
「ちょっと草履が壊れちゃっって…」
茜先輩の草履を見てみると草履の鼻緒が途中で見事にぶっつりと切れていた。
だけどこれならなんとかなるかもしれない。
「茜先輩。草履貸してくれますか?」
「いいですけど。どうするんですか」
「はっ!!まさか空君、お姉ちゃんの草履の匂いを嗅ぐ…」
「何言ってるんだよ!鼻緒を直すんだよ!」
「あはは。冗談だよ~」
円香が言うと冗談に言ってるように聞こえないから怖いんだよな…。
「朝倉君直せるんですか?」
「完全には直せませんけど応急処置程度には。とりあえずここじゃなんですし神社の方へ行きましょう」
「でも、お姉ちゃん裸足だよ?」
「そうだったな。だったら…」
俺はそう言うと茜先輩の前に行ってしゃがんみ腕を後ろに向けた。
「あの…朝倉君これはなんでしょうか?」
「おんぶですよ。さぁどうぞ」
「ええ!!その、朝倉君。おんぶはどうかと…」
茜先輩は恥ずかしいのか声を震わせておろおろしている。やっぱり恥ずかしいのかな?
「大丈夫ですよ。ここら辺人少ないですし、それに俺全然気にしてませんから」
「で、でもですね…」
「お姉ちゃん、おんぶしてもらいなよ。裸足のままじゃどうかと思うよ」
「確かにそうですけど…。仕方ありません、朝倉君お願いします」
茜先輩はやっと折れてくれて。俺の背中へと体を預けてきた。
茜先輩がちゃんとしがみついたのを確認すると俺は先輩の両膝の裏と背中に腕を回し立ち上がった。
「あの、朝倉君。重くないですか?」
「全然ですよ。むしろ軽すぎるぐらいです」
本当に茜先輩は軽かったので問題はなかったのだが茜先輩の柔らかな膨らみが背中に当たっているのと先輩のいい匂いで俺の頭がちょっとくらくらしてしまった。
これは早く神社の方へと行かないと…。
「いいなぁお姉ちゃん。朝倉君!今度は私もおんぶしてね!」
「機会があったらな…。そんなことより早く神社へ行こう」
円香の冗談は軽く流して俺は早足で神社へとむかうことにした。
神社に着くと寺の縁側のところへ行って早速鼻緒が切れた草履を直すことにした。
あんまり俺は器用ってわけじゃないんだけどこれぐらいならなんとかなるはず…。
「これでいいかな?」
しばらくちぎれた鼻緒と格闘すること10分ほど、なんとか軽くちぎれた鼻緒を結ぶことができた
「ありがとうございます、朝倉君」
「全然大丈夫ですよ。それより俺がやったのは応急処置みたいなものだから後でちゃんと修理してもらってください」
それにしてもなんとか直すことができてよかった。自分から言い出したのにできなかったら恥ずかしいだけだもんな…。
「空君ってやっぱり優しいね。ね、お姉ちゃん?」
「え、そ、そうですね…。正直朝倉君のこと見直しました」
「そんな、別に俺は大したことしてませんし」
まさか、いつも俺をにらんでいる茜先輩が俺のことをほめてくれるとは…。
嬉しいけど、見直すってことはやっぱり信じてなかったんだよ。
「…少しだけ、空君が皆から人気がある理由がわかる気がしました…」
「茜先輩何か言いました?」
「いえ。さて、そろそろ皆さんのところに戻りましょうか」
「そうですね。それじゃあ行きましょう」
茜先輩が何か言った気がするが気のせいか。それよりも皆のところへ行く前に渚達に茜先輩が見つかったことを電話しておこう。
皆の元へと戻ると既に水無月と菜穂先輩は戻って来ていた。
菜穂先輩は食べ物の屋台を中心にひとりで食べ歩いていたらしい。相馬は帰って来ていなかったが皆は心配してないようだ。
水無月の方は相変わらずいつもの笑い方をしただけで特に何も教えてくれなかった。
そして花火の時間も迫って来ていたので俺たちは急いで花火の見える川辺の方まで走って移動した。
花火がよく見えるというスポットだけあってか川辺の方に行くとやはり人がたくさん居た。
「これが夏休み最後のイベントかぁ」
「突然どうしたんだよ渚?」
「今年の夏休みは色々とあったなぁって思ってね」
「そうだな。今年の夏休みは特にいろんなことがあったな」
皆と海に行って、それに天文部で流星群見て、そのほかにもたくさんのことがあったな…。
「でも、楽しかったでしょ?」
「ああ。それも去年以上にね」
去年の夏休みももちろん楽しかった。でも、今年の夏休み、高校初めての夏休みはここに居る皆が居たから楽しかったと思う。
「空さん、花火始まりましたよ!」
夏休みのあったことを振り返っているといつの間にか花火が始まったらしい。
轟音の後、夜空を見てみれば巨大花火が打ちあがった後だった。
そしてその花火を合図にその後次々とたくさんの種類の花火が打ちあがり始めた。
「「たまやー!」」
横では美琴たちが花火でおなじみの掛け声を叫んでいた。
まぁ何にしても来年の夏休みも楽しい夏休みにしたい、もちろんここに居る皆とともに。
俺は花火を見ながらしみじみとそう思うのであった。