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サマーバケーション!前編

「暑い・・・」


ついに高校生活初めての夏休みが始まった。

始まったのはいいんだけど、夏休み開始と同時に一気に暑くなったような気がする。


いくら夏だといってもこれほどの暑さはやりすぎだ。



そして現在俺はエアコンの壊れてしまったリビングでソファーに横になって扇風機にあたっていた。

ちなみに俺の部屋にはエアコンはついてない。


「ごめんね~空君。まさかエアコンが壊れてるなんて気づかなかったから・・・」

「姉さんのせいじゃないよ。俺だって気づかなかったんだしさ」

「うん、ありがとう空君。修理屋さん明日には来るらしいから」


明日か・・・。今はまだ昼をちょっと過ぎたところ。明日まで俺が溶けずにもつだろうか・・・。


「とりあえずこのままじゃ暑いし、涼しいところでも行ってくるよ」

「うん、お姉ちゃんも茜ちゃんと約束してるから行くね~。空君も晩御飯までには帰ってきてね」

俺は姉さんに行くことを言ってから先に家を出た。


それにしても涼しいところに行くって家を出たのはいいんだがどこに行こうか・・・。

図書館・・・。確かに涼しいっていえば涼しいのだが明らかに俺には似合わない場所だろう。

デパートは今日は休日ということもあり人がいっぱいだろう。

人がいっぱい居るところは苦手だし・・・。


さて、どうしようかな・・・。


「おーい、空」


暑い中家の前で行くところを考えていると俺の家の前の家から声が聞こえてきた。

ちなみに朝倉家の前の家は神沢家だ。

神沢家の方を見ると2階の窓から体を乗り出している渚が居た。


「なんだよ、渚?」

「海の行く予定決めたよー」


そういえば前回のテストで賭けて見事に俺が負けて渚がなんでも俺に命令をするということができるということで一緒に海に行くことになったんだよな。


「そのことを言おうと電話しようと思ったんだけど窓から空が見えて声かけたの。でもどこか行こうとしてたの?」

「いや、家のエアコンが壊れててさ。それでどこか涼しいところでも行こうかなと考えてたところ」

「ふーん、じゃあ私の家で海の事話そうよ」

「そうだな。特に行くところもないし」

渚に招かれて俺は家の前の神沢家にお邪魔することにした。

渚の家に入ると家の中は外の暑さ以上の暑さだった。


「空、早く上来なよー」


2階の部屋から顔を出して手招いた。今日はおじさんとおばさんはいないのかな?

俺は階段を上がって渚の部屋へと入っていった。

「おぉ、涼しい・・・」

渚の部屋はちゃんとエアコンが効いており涼しく今さっきまでの暑さが嘘のようだった。


「なんか、お前の部屋来るの久しぶりだな」

「そうだよー。空、昔と比べると全然来なくなったんだもん」

確かに昔からと比べると渚の部屋に来ることは少なくなった。

小学生の頃はよく遊びに来ていたんだが歳を重ねていくごとに来ることは減っていった。

まぁ、幼馴染だからといっても一応渚は女性なんだし女性の部屋に来るのはこの歳では恥ずかしくなってきていた。


「それより海行く日決まったんだろ?教えてくれ」

「うん、そのことなんだけど・・・」


渚は海へ行く日を事細かに教えてくれた。

行く日は今日から1週間後で1泊2日で泊まる旅館は予約しているらしい。


「って、旅館に泊まるのかよ!?」

「そうだけど。というかそうじゃないと寝るところないでしょ?」

「それはわかってるけど・・・。さすがに男女ふたりで旅館っていうのは・・・」


渚にそう伝えると急に渚は顔を真っ赤にしてどこか慌てだした。


「な、何言ってるのよ!私たちの部屋は別々に決まってるじゃない!」

「なるほど。それもそうだな」

「全く、もぅ!変な勘違いはやめてよね・・・」

渚はまだぶつぶつと何か言っていたが俺としては一緒に泊まることは問題だったので心配していたのだが部屋がわかれているのなら安心した。


「ちなみに空、わかってると思うけど他の人には海へ行くってこと内緒にしておいてよね!」

「え、なんでだよ?別にいいじゃん」

「よくないの!!もし聞かれたとしても旅行って答えてよね!わかった!?」

「う・・・。わかったよ・・・」

俺は渚の迫力に負けて返事をしてしまったがなんでこんなに渚は必死なのだろうか?


「とりあえず海行く日ぐらいは寝坊するなよ渚」

「ちょっとーその言い方じゃ私が毎日寝坊してるみたいじゃない!」

「いや、してるだろ?」

「してないってば!もし遅刻しててもそれは時計のせいだから!」


明らかに嘘だろう。こいつは遠足の日でも当たり前のように寝坊していたのだから。


「んじゃまぁ予定も決まったことだし俺はこの辺で帰るわ」

「えっ、もう帰るの?」

「あぁ。することも終わったし。それに長くここにいてもな・・・」

何故か昔と違って女の子の部屋に長時間居るというのは照れるんだよな・・・。


「空の家エアコン壊れてて暑いんでしょ?だったらここに居る方が涼しいと思うけど」

「でもなぁ・・・」

「それに、それに!空に味見してほしいお菓子があるの!だから、そのぅ・・・」

何故か渚は言葉を濁らせていたが、ちょうど腹も減ってたし渚のお菓子を食べていくのもいいかもしれない。何より渚の料理の腕が上がったのかが気になる。


「わかったよ。じゃあ渚のお菓子いただいていくよ」

「本当!?じゃあちょっと待っててね!」

そう言うと渚は立ち上がり部屋から出て行った。

一人部屋に残された俺は特にすることもないので漫画でも読もうと本棚を見ていたらひとつだけ分厚い本があったのでそれを取り出してみるとそれはアルバムだった。見た感じ最近のアルバムではなさそうなのだが俺はそれを開いてみてみることにした。


「うわ、懐かしい・・・」

アルバムを開いてみると写真には小学生時代の俺と渚が公園で仲よさそうに遊んでいる姿が写っていた。

たぶんこの写真を撮ったのは渚のお母さんかお父さんだろう。

それにしても写真の中には見事に俺と渚のツーショットが多かった。たまにその中には姉さんが写っている。

昔はよく3人で遊んだりしていたからな。特に俺と渚は一緒に居る時間が長かった。

まぁそれだけ仲がよかったってことだろう。



「懐かしいの見てるね」

俺がしばらくの間アルバムを見ているといつの間にか手作りのお菓子と紅茶を持った渚が戻ってきていた。渚がその場に座るとお菓子と紅茶を俺に渡してくれた。


「今さらだけど俺とお前って付き合い長いよな」

「確かにそうだねぇ。空と出会って8年ぐらいかな?小学校から今までずっとクラスも変わらず一緒だったもんね」

「それって、やっぱ腐れ縁って言うのかな?」

「腐れ縁ってなによ~。もっと良い言い方あるでしょー!」

そう言われてもな・・・。渚と俺との関係を表すにはこれ以外に表せる言葉が出てこない。


「でもさ、これからもずっとこういう関係のままでいきたいよな」

「ずっと、このまま?」

「ああ。腐れ縁・・・じゃなくて幼馴染としてさ」

「幼馴染かぁ」

渚が何か言ったような気がするが俺は気にせず渚が作ってくれたクッキーを食べた。

クッキーの味は・・・まぁ昔よりはレベルは上がっていた。とりあえず食べられるぐらいにはなっている。



この後クッキーとジュースを頂いた俺は渚の家を出て自分家へと戻った。

相変わらず家の中は暑いが文句も言ってられない。何より明日までの我慢だ。

俺はそう考えつつ暑い中眠りにつくのだった。







次の日からはエアコンが直りやっと家の中が涼しくなった。

ただ、直ったのはいいが海へ行く日まで特にすることもないので時間がもったいないと思いつつも毎日リビングで昼寝という繰返しをしていた。



そして海へ行く日前日。準備をするために俺は桜川の町のデパートへとやってきていた。


「水着は毎年着てるのでいいとして、他に買うものは・・・」

海でいるものといえばなんだろう?浮輪は渚が持ってくるとか言ってたし明日の昼の弁当も渚が作ってくるって言ってたしなぁ。あいつの弁当は色々と信用できないからなにか家にある非常食を持っていくとして。


「今思えば特に買うものなんてないのかもしれないなぁ」

いるものといえば渚が揃えてくれるらしいし、俺は水着を忘れないようにしておけばいいか。



「あ!空さん!」

日用品コーナーで物色していると後ろから声をかけられたがこの声は・・・。


「部長、久しぶり」

「こちらこそお久しぶりです」

振り返ると天文部の部長、永倉千穂居た。終業式以来会ってなかったから本当に久しぶりだ。


「空君は何をしていたんですか?」

「ああ、ちょっと明日から出かけるから必要なもの買おうと思ってね」

「空さんも明日から出かけるんですね。私も明日から1泊2日ほどお出かけするんですよ」

「部長も?へぇ奇遇だね」

出かける期間も一緒なんて。まさか一緒の海に・・・?いや、さすがにそれはないよなぁ。


「それよりも空さん。部活の方ですが夏休みも活動しようかなって考えているんですけどどうですか?」

「俺は別にいいよ。じゃあまたお互い旅行から帰って来た時にってことでいいかな?」

「はい!お願いしますね」


部長と少しだけ喋った後は部長はまだデパート内で見たいものがあるらしく俺達はここでわかれた。

俺は特に買うものもなくデパートを出て家に帰ることにした。


デパートから出たのがデパートの中の涼しさとは違い外はギラギラと陽がさして半端なく暑かった。



「あれ、空君じゃない」

夏の太陽に嫌気がさしているとまたしても俺の名前を呼ぶ声がした。


「円香か。久しぶりだね」

そこには桜川学園の副会長こと橘茜の妹橘円香が居た。


「ほんとだよー!最近全然見ないからどうしたかと思ってたところだよー!」

「いやぁ、ここ最近色々とあったからな」

夏休み入ってからは特になにもなかったけど、夏休み入る前はテストという悪夢の期間があったからな。


「それじゃあ仕方ないねぇ。でもメールとかはしてよね」

「ごめんごめん。それにしても円香はどこか行ってたのか?」

円香を見てみると両手には買い物袋がぶらさがっているのだが何かの買い出しだろうか?


「うん!明日から少しだけど旅行行くからお菓子とか花火とか買いにコンビニ寄ってたんだー」

「え?円香も明日から旅行に行くの?」

「そうだけど。「も」ってことは空君もどこか旅行に行くの?」

「ああ。俺も明日からちょっと行くんだけど」

まさか部長だけでなく円香も明日から旅行だなんてこんな偶然あるのか?


「そうなんだぁ。じゃあ旅行先で会えるといいね!」

「あはは、それはないだろ」

さすがに行くところは違うだろう。というよりそうあってほしい。


「あ、私お姉ちゃんに早く帰るって言ってるから帰るね」

「うん、わかった。気をつけて帰れよ」

「ありがとう空君。それじゃあ今度またゆっくり話そうねー!」

円香と別れて俺は再び暑い中家へと足を進めていった。






なんとか暑い中家へ帰るとエアコンのあるリビングへと入って行った。

姉さんがリビングに居たこともありすでにリビングは涼しくなっており快適であった。


「姉さんこの前言ったと思うけど明日から出かけるから」

「わかったよ。明後日には戻ってくるんだよね~?」

「うん。お土産買ってくるから楽しみにしててよ」

「お土産なんかいいのに~。空君のその気持ちがあれば私は十分だよ☆」

姉さんはそう言うと何故か体をくねくねさせていたがいつもの発作みたいなものだろう。


「あ、空君。言い忘れてたけど私も明日からちょっと出かけるよ~」

「え?姉さんも?」

「小旅行みたいなものだよ~。ちなみに帰ってくる日は空君と一緒の日だよ」

なんだろう、最近旅行がブームになってるとかないよな?

というか何故だか嫌な予感がするのは気のせいだろうか・・・。


「そうなんだ・・・」

「うん♪」

とりあえず今深く考えておくのはやめよう。余計に疲れるだけだ。


まぁ明日からの1泊2日は楽しくなるといいんだけどな。









そして翌日。俺は海へ行くために早朝からバス停へと来ていた。

そう、無事に渚も遅刻せず既に来ており後はバスが来るのを待つだけになっているはずなのだが・・・。


「空君と海に行けるなんてお姉ちゃん嬉しいな♪」

「朝倉君と水無月さんがまた居るなんて・・・不安だわ」

「空君よろしくね」

「フフ、ハーレムね朝倉」

「朝倉先輩と旅行なんて私幸せです!」

「空さんと私が居るとなんだか天文部の合宿みたいですね」


なぜかバス停に皆が勢ぞろいだった。


「ねぇ空。これはどういうことかな?」

隣に居る渚からとてつもないオーラが見えているのだが、これはヤバい。何故かはわからないが怒っている・・・。

「ちょっと待て、俺皆に何も言ってないからな!?」

「じゃあどうして・・・?」

「フフ、私が言ったのよ」

俺と渚が話していると随分荷物を持った水無月が俺の前へとやってきた


「凄い荷物だな・・・。それよりなんでお前が俺と渚が海へ行くってこと知ってたんだよ?」

「朝倉私をなめないでほしいわね。そんな情報私の手にかかれば簡単に手に入れることができるのよ」

「いや、だからその情報はどこで手に入れたんだよ」

「それは企業秘密よ」

やっぱり秘密か。相変わらずこいつは謎が多いやつだな。


「お姉ちゃん、空君が渚ちゃんと海に行くって言ってほしかったなぁ」

「そうですよ朝倉先輩!私たち言ってくれるのを待ってたんですよ」

ん?なんかおかしいぞ・・・。


「もしかして皆俺と渚が海へ行くってこと知ってたのか?」

「そうだよー。夏休み入る前に水無月さんが教えてくれたんだよ」

「私も彩音さんから教えてもらいました。昨日会った時本当は一緒に行くって喋りたかったんですけどなんとか喋らず秘密に出来ました!」

そうか、夏休み入る前から知ってたのか。しかも皆今日まで隠し通しているなんて。


「まぁいいか、皆で行った方が楽しいだろ。な、渚?

「そ、そうだね・・・」

渚は何故かまだ納得してない感じなのだがやっぱり俺としては人が多い方が楽しいと思う。



しばらくするとバスがやってきた。早朝ということもあってバスの中は誰も人がおらず貸切バスのような状態となっていた。


「…い!…おー……!!」

バスが出発したころ外から何か声が聞こえた気がしたがきっと気のせいだろう。

とにかくこうして俺たちの海の旅行が始まったわけなのだが、始まったばかりだというのに相変わらず俺の隣に座っている渚の機嫌は悪いように見えた。


「なぁ、渚何怒ってるんだ?」

「別に怒ってなんかないよ。ただ私は・・・」

「私は?」

「なんでもない!空、お菓子頂戴!」

そう言うと渚は俺のカバンを無理やり奪い取って中に入れてあるお菓子を取ってしまった。

まぁお菓子で少しは機嫌がなおってくれるなら別にいいか。



「朝倉せんぱーい!皆でトランプしましょうよ!私持って来たんですよ!」

早朝ということもあり眠たかったので着くまで2時間ほどあるので寝ようと思ったのだがそんな俺とは対称な美琴が元気にトランプを持ってやってきた。


「トランプか、そうだな暇だしやろうか」

こんな笑顔な美琴の気持ちを裏切るわけにもいかず俺はトランプをやることを承諾した。


「本当ですか!?それじゃあ早速やりましょー!ほら、渚先輩も!」

「え、私も!?」

「当たり前ですよ!ほらほら先輩!」

俺のお菓子を食べていた渚を無理やりに美琴は引っ張ってバスの後ろの方へと連れて行った。



この後俺たちはしばらくの間トランプで盛り上がっていたがやはり眠たさもあり途中から何度も意識が飛びそうになっていた。

渚も最初は渋々やっていたけど段々やっていく内に楽しくなったのか声も張り上げトランプに夢中になっていた。

少しは渚の機嫌が治ってくれたようでよかった。




そして2時間ほどするとバスは目的地の海へと到着した。


「空君、見て見て~海きれいだよ~!」

姉さんはさっさとバスから降りると海を見てえらくはしゃいでいた。まるで小さな子供のようだ。


「姉さん落ち着いて。海は後でいくらでも拝めるから先に旅館の方へ行くよ」

そう、まずは俺たちの荷物を置くために予約しておいた旅館に先に行かなければならない。ちなみにバスの中で水無月が言っていたが水無月たちも同じ旅館に予約しているらしい。


「朝倉君。旅館は海からすぐ近くでしたよね?」

「はい。なので荷物置いた後旅館で着替えて直接海に行きましょう」

「それじゃあ朝倉先輩、早速旅館へ行きましょー!」

そう言い美琴は俺の手を取り旅館の方へと歩き出した。


「ちょっと美琴、手が・・・」

「えへへ~先輩と海~♪」

どうやら美琴はかなりご機嫌で俺の言葉が耳に届いてないようだ。


「空何デレデレしてるのよ!待ちなさーい!」

後ろから凄いオーラを出しながら渚が怒っているような気がするが今後ろを向いたら怖いので聞かなかったことにしよう。そもそも俺はデレデレなんてしていない。





旅館は本当に海からすぐ近くにあった。渚が激安だからと頼んだ旅館であまり期待はしていなかったのだが外観を見る限り予想を反してそこそこよい旅館の様だ。建物は普通の旅館と同じくらいの大きさで何より見た目が綺麗だ。


「意外と立派な旅館だな」

「当たり前でしょ。私が選んだんだから」

といっても激安だから選んだだけのくせに。まぁ決して口に出しては言えないけど・・・。


「朝倉、こんなところで話してても仕方ないし早く中に入りましょ」

「そうだな。入口はあっちか」


入口を見つけて旅館の中に入るとそこには女将さんと思われる人が玄関のところで立っていた。


「ようこそおいでくださいました」

女将さんと思われる人がが出迎えて挨拶をしてくれたので俺たちも女将さんと思われる人に軽く頭を下げて挨拶を返した。

それにしてもこの旅館外観も綺麗だったが中の方も掃除がよくできているのかまわりを見ても埃ひとつ落ちていない。値段で心配していたがこれなら安心して泊まれそうだ。


「予約していた神沢ですけど」

「それと水無月よ」

「神沢様に水無月様御一行ですね。お待ちしておりました。お部屋の方はご用意できていますので案内いたしますね」


女将さんは俺たちを部屋の方まで案内してくれたがどうやら渚は一人で部屋を使うのは勿体ないということで水無月たちグループと同じ部屋を使うことにしてもらったらしい。

まぁそれはいいのだがここには男は俺一人というわけで・・・。


「朝倉様のお部屋はこちらの方になります」

女将さんに紹介された部屋の名前は「桜の間」。当然俺一人が使う部屋だ。


「えーっ!朝倉先輩はひとりなんですか!?」

「当たり前だろ・・・。男は俺一人なんだし」

「フフ、渚が朝倉と一緒の部屋にはしなかったからね」

「ちょっと、彩音ちゃん!なに言ってるのよぉ」

「当たり前です。男女が一緒に部屋で寝るなんて考えれません」

茜先輩が言ってる通りだな。というよりそういうことになったら俺がやばい・・・。


「大丈夫ですよ。他の皆さまの部屋は隣のふたつになりますので」

隣の部屋は「椿の間」と「楓の間」と書いてある。たぶん水無月たちは3人3人で分かれて部屋を使うのだろう。


「それじゃあ皆着替えたらまた海で」

皆にそう言うと俺は「桜の間」へと入った。


「これは想像以上だな・・・」

部屋に入ると俺が想像していた以上に部屋は広かった。部屋は和風で長いテーブルが置いてあり他にはチューナーがついてある古いアナログのテレビに小さな冷蔵庫が置いてあった。

それにしもてこれは3、4人ぐらいは余裕で寝れるんじゃないだろうか?

とにかくこの広い部屋に一人だと寂しく感じてしまう・・・。


俺はそんなことを考えながらも畳にカバンを置いて早速海へ行く準備をすることにした。

海に行くといっても俺は着替えるだけで他に持っていくものはないのだが皆は何か持っていくのかな?

まぁ日焼け対策のためにパラソルだけでも持っていくか。



俺は海水パンツに着替えてその上に軽く半袖の上着を着て部屋を出た。

さすがに俺の着替えが早かったのか廊下には誰も出てきてはいなかった。姉さんと一緒に遊びに行く時もそうだったのだけど女性は着替えるのに結構時間がかかるんだよな・・・。

ということなので俺は先に海に行くことにした。





海に行ってみるとまだ10時になる手前だというのに海には結構な人数の家族連れやカップルなどの団体さん達が来ていた。


俺は人があまり集まっていないところを見つけてそこにパラソルを設置した。

なんか、こうパラソルの下に一人っていうのも結構寂しいものだな・・・早く姉さん達来ないかな。



「あ、空君じゃないですか!?」


パラソルの下で皆を待っているとやっと誰か来てくれたようだ。


「ちょっと、皆遅いよ・・・。結構待った・・・」

俺が後ろを振り返ってみると何故かそこにはあの人が居た・・・。


「こんなところで会えるなんて偶然ですね!?あっ!もしかしたら私たちは運命の赤い糸で結ばれてるかもしれませんよ!」

そう言うと俺に声をかけてきたロリ体系の人物は俺に抱きついてきた。


「ちょっ、何でここに菜穂先輩が居るんですか!?」

ロリ体系の人物とは菜穂先輩のことである。ここは海であるからもちろん先輩は水着を着ているわけなのだが何故この人はスクール水着を着ているのだろうか?

いや、まずはそんなことよりこの状況やばいぞ・・・。いくら先輩がロリ体系だと言ってもこんな抱きつかれていたら俺の胸らへんに何か柔らかな感触が・・・。



「あの、朝倉君何をしているんですか?」

この状況に困っているとき、いつの間にか水着を着た茜先輩がやってきていた。


「茜先輩助けてください!」

「あれ?茜ちゃんも来てたの?」

「えっ、菜穂先輩!?なんでここに菜穂先輩が?」

茜先輩も菜穂先輩がどうしてここに居るのかと驚いているようだがまずは俺を助けてほしい。






「というわけで近くに伯父さんの家があるので夏休みを利用して遊びに来ているのですよ」

「なるほど、だからついでに海にも来たってことですか」

「そういうことです!」

あれからしばらくすると他の皆も水着を来てやって来たのだが来てからが色々と大変だった。

姉さんはいつも通り説教するし渚も余計に機嫌悪くなるし、美琴も何か騒いでいたし・・・。まぁ水無月達は笑っていただけなんだけど俺としては助けてほしかった。


「それにしてもひどいですよ空君。それに茜ちゃんも!私も誘ってくれたらよかったじゃないですか・・・」

「すいません菜穂先輩。水無月さん達が急に海に行くと言ってきたのでお誘いする時間がなくて・・・」

「俺もちょっと忙しくて菜穂先輩に伝えるの忘れてて」

まぁ俺の場合は渚とふたりで行くということになってたからしょうがないけど。もし最初から皆で行くということになってても菜穂先輩だけは誘えないよなぁ・・・。


「全くぅ。これからは気をつけてくださいよ!」

どうやら菜穂先輩は納得してくれたのだけれどもしかして菜穂先輩は今から俺たちと行動を共にするつもりなのだろうか。


「それよりー空君!私たちの水着見て感想とかないのかな?」

そう言うと円香が俺の前に来て少しポーズをとりはじめた。

「感想って言われてもな・・・」

「ほらほら、可愛いとか綺麗だとか色々あるじゃない」

皆を見てみると確かに円香が言っている通り水着を着ていることもありいつもより皆が輝いている気がする。

といってもこれは俺から見た感想なんだけどね。

とにかく正直に口に出すのは恥ずかしいのだけど・・・


「えっと、その、皆似会ってるよ」

恥ずかしさでうまく言えなかったけどとりあえず俺は自分の素直な感想を伝えることができた。


「うーん、もう少しがんばって言ってほしかったけど空君はがんばったほうかぁ」

「それだけでもお姉ちゃん嬉しいよ~」

「朝倉先輩ありがとうございます!」

「さすが天文部副部長ですね空さん」

「やっぱり空君は私が見込んだだけのことがありましたね!どんどん感想言ってくれていいんですよ空君」

喜んでくれるのはいいんだけど俺の前ではしゃぐのは勘弁してほしい・・・。目をどこに向けたらいいのか困る。


「フフ、朝倉。高感度アップね」

「朝倉君。あまり羽目を外さないようにね」

「また鼻の下のばしちゃって・・・。空のバカ」

水無月は相変わらず何を言いたいのかわからないが先輩どれだけ俺のこと用心してるんだろう。

というか別に俺は鼻の下なんてのばした覚えはない。


「さてと、話しててもしょうがないしそろそろ海に入ろうか」

「賛成です!それでは行きましょう朝倉先輩!」

またしても美琴が俺の手をとって走り出そうとしているけど、今日の美琴はなんか積極的だな。


「ちょっと待ってください朝倉君、相沢さん!海に入る前にまずは準備体操です!」

海に入ろうとしている俺たちを茜先輩が止めてきたけど、やっぱり茜先輩は真面目だなぁ。

俺たちは渋々茜先輩に従って軽く準備体操をすることにした。




そして軽く準備体操をした後は今度こそ俺たちは海へと入って行った。


「うっ・・・意外と冷たいな」

「そんなの最初だけですよ朝倉先輩。ほらっ!」

海に入って数秒なのにはしゃぎながらも美琴は俺に水をかけてきた。


「お、おぃ美琴冷たいって!」

「えへへ~油断大敵ですよ♪」

美琴は冷たくないのだろうか。そんなことよりやられたからにはここはやり返しとかないとな。

俺は油断している美琴にめがけて水をかけ返した。


「きゃっ・・・朝倉先輩ひどいですよぉ」

「美琴が言ったんだろ油断大敵って」

「ん~こうなったら勝負です朝倉先輩!」

そう言うと美琴は再び俺に水をかけてきた。俺はおもいっきり美琴からの水をかかったが今度はそこまで冷たいとは感じなかった。そろそろ慣れてきたかな?


「やるな、美琴。よしっ!俺だって」

俺も美琴に水をかけようとした時何故か俺の背中に強い衝撃で水が当たった。


「うわっ!う、後ろからっ!?」

後ろを振り返ってみるとそこには水鉄砲を持った円香と渚それに菜穂先輩が居た。

「ほらほら、後ろがガラ空きだよ空君!」

「ちょっと3人とも後ろからってさすがに卑怯じゃないか?」

「これも戦略のうちよ。それにまだ鼻の下伸ばしてる空は成敗しなきゃ」

「空君、覚悟してくださいねぇ」

これは遊びだというのにこの3人明らかに本気だ・・・。

それにしても水鉄砲なんか持ってきてたんだ。


「朝倉先輩、こっちにも居るんですから忘れないでくださいね」

そうだ、後ろには美琴もいる。さて、挟まれたこの状態どうやって切り抜けるか・・・。


「戦略的撤退だ!」

俺は水に潜り、泳いで逃げることにした。この場合逃げることしか思い浮かばない。


「空、卑怯だよ!待ちなさーい!」

「へぇ、空君って泳ぐのうまいんだね。よし、私も」

「私だって先輩方には負けませんよー」

泳ぎながら後ろを見てみると渚、円香、美琴も泳いで追ってきていた。それに3人とも意外と速いし・・・。

なんで海に入って早々こんなに疲れなきゃいけないんだろう。


「皆さん待ってくださーい」

ちなみに菜穂先輩だけは遅れながらも微妙な泳ぎでついてきていた。

これは先輩のためにできるだけ先輩が足のつきそうなところを泳いであげていた方がいいのかもしれない。







「はぁ、疲れた・・・」

結局あの後皆に捕まって水鉄砲で撃たれ嫌なぐらい水をかけられた。

皆はかなり楽しそうだったんだけど俺としては嫌な思い出になりそうだ。


「空さん疲れてますね?」

ピンクの水玉模様の水着を着た部長はパラソルの下に座り込んでペットボトルの水を飲みながら聞いてきた。


「色々とあってね。それより部長は泳がないの?」

「う~ん、私カナヅチなんですよ。それに水が苦手っていうのもあって・・・」

「え、そうなの?じゃあなんで海なんかに?」

「はい。海や川が好きじゃないというか苦手なんですけど皆さんが楽しそうにしていたから付いてきたというか」

なるほど。水無月に誘われたのもあるんだろうけどやっぱり皆と遊びたかったていうのが強いんだろうな。部長は今まで友達居なかったって言ってたし・・・。


それだったらやっぱり部長にも海で楽しんでいってほしい。


「よし、部長!俺が泳ぎ方教えてあげるよ」

「泳ぎ方を?」

「うん。この前は部長が勉強を教えてくれただろ?だから今回は俺が部長に泳ぎ方を教えるってこと」

「でも、空さんに迷惑では?」

「迷惑なわけないだろ。むしろ俺が教えたいって思ってるんだから」

この前のテストの時には部長にかなりお世話になったし俺としては少しぐらい部長の手助けをしてやりたい。


「それじゃあお願いできますか空さん」

「任せてよ!」

こうして俺の教えのもと部長の泳ぎの特訓が始まった。




「それじゃあまずは水に潜って目開けてみようか」

「え!最初からそんなにとばしていくんですか!?」

「いや、とばしていくって言っても潜らないと泳ぎに繋がらないしさ、それに初歩の初歩だし・・・。というか学校の体育のプールの授業の時は一体どうしてたの?」

「体育のときは、そのぉ・・・見学してました」

なるほど。見学という手があったか。

というより今さっきから部長の様子を見ていてわかったけどだいぶ水に恐怖心を抱いているな。本人も海や川以前に水が苦手って言ってたしな。

もしかしたらその水に対する恐怖心を取り除いてあげればどうにか泳げるようになるかもしれない。


「そうか。だったら来年体育のプールの授業に参加できるようにならないとな」

「はい!私がんばります!」

「うん、じゃあ早速潜ろうか。俺も潜って部長を見てるからね」

「は、はい・・・」

潜る準備はできているのだがやはりまだ部長は潜るのを躊躇っているという感じがでていた。

俺はその部長の様子を見ると部長の右手をしっかりと握った。


「大丈夫だよ。俺が手握ってるから何かあっても助けるから」

「え、あ・・・空さん・・・。あ、ありがとうごじゃいます!」

部長は喋り方もおかしくなりさらに何故か顔を赤くして俯いてしまったが手を握って安心させてあげようという行為は逆効果だったかな?


「よーし!私潜りますよ。空さんお願いします」

今さっきまでとは違い少し気合いが入ったようだ。とにかく逆効果じゃなくてよかった。


「それじゃあいくよ・・・。せーの!」

部長に合図を出すと俺と部長は一斉に海の中へと潜った。

俺は先に海の中で目を開けて部長の様子を見てみたがまだ目を開けてはいなかったが必死に目を開けようとしている姿だけは確認できた。

俺は部長がんばってくれている姿を見れたことだけでも嬉しかったがやはりここまで潜れているんだから最後までがんばってほしい。

俺は部長に自分はちゃんとここに居るということを伝えたかったので部長と握っている手を少しだけ強く握った。

それに答えるかのように部長も手を少しだけ強く握り返してくれた。


そしてその手を握り返してくれたあと部長はゆっくりだけど少しずつ水の中で目を開いていった。

俺は部長が水の中で目を開けたことを確認すると部長と視線を合わしてから海から外へと戻って行った。



「部長できたじゃないですか!」

「はい、私できました!空さんのおかげです」

「俺は別になにもしてないよ。部長ががんばったからだよ」

「そんなことありませんよ。ありがとうございます」

別に感謝されるようなことは何もしていないけれで部長に感謝されてちょっと照れてしまった。

それにしても部長が潜って目を開けることができてよかった。たった数秒間だけだったけど部長ができたことが自分のことのように嬉しい。


「でも、最初に言ったようにこれは初歩の初歩だからね。次は泳ぎをがんばろう!」

「はい!よろしくお願いしますね」

「ねぇ、喜び合ってるのはいいんだけどいつまでふたりは手を繋いでるの?」

次のステップへ移ろうとしているといつの間にか渚がやって来て俺達を見ながらそう言ってきた。


「うわっ、ごめん部長」

渚が言ったことに俺はやっとのことで気づいて部長と握っていた手を離した。


「え、その私は気にしてないので。その、むしろ握ってくれていた方が・・・」

なんだか妙な空気になってしまったが部長の方を見ると顔を少し赤くしていた。まぁ俺もたぶん真っ赤なのだろうけど。


「それよりもなんで渚がここにいるんだよ?」

「空がまた鼻の下伸ばしてないか見回りに来たんだけど、やっぱりなにかしてたから」

「だから、鼻の下なんか伸ばしてないって。それに俺は部長に泳ぎ方を教えてただけだよ」

「本当に~?なんか怪しいな?」

ジロジロと渚が俺を見てくるが俺は潔白だ。


「あの、空さんは本当に私に泳ぎ方教えてくれてただけなんですよ」

渚に怪しまれていると今さっきまで恥ずかしそうにしていた部長が助け舟をだしてくれた。


「うーん。千穂ちゃんがそう言うなら信じるけど・・・。それじゃあここからは私が千穂ちゃんに泳ぎ方教えるから」

「ちょっと待て。なんでお前が教えることになるんだよ!?」

「だって泳ぎ方教えるならフォームとかちゃんと指導しないと。男の空がそれを教えられる?」

確かに渚の言ってる通りだ。フォームを教えるなら部長の体を触らないといけなくなる。

男にとっては凄いおいしいことなんだろうけどさすがにそれはセクハラだろう。

ここは名残惜しいけど渚に任せるしかない・・・。


「わかった。後の事は頼んだよ渚」

「任せなさい!」

「ということだからごめんね部長」

「そうですか・・・。ここまでありがとうございました」

俺は部長のことを渚に任せると再びパラソルの方へと戻っていった。



パラソルの方へ戻ってみると姉さんと茜先輩がシートの上で横になっていた。


「姉さんに茜先輩なにしてるの?」

「あ、空君いいところに~。オイル塗ってほしいんだけどお願いできないかな?」

「ちょっと瑞穂!なんで空君に任せるのよ!?」

「だって~私たちふたりだとどっちかが塗った後乾くの待たないといけないから効率悪いでしょ~?だから空君が私たちふたりをやってくれた方が早いと思うよ。それに空君なら優しくやってくれると思うし~」

「優しくって・・・。でも、確かに瑞穂の言うとおりね。朝倉君頼める?」

このふたりでだいぶ話進んでいるんだけど・・・。


「でも、俺オイルとか塗ったことないからわからないし・・・」

「大丈夫だよ~。お姉ちゃんがちゃんと指示するから」

「そうですね。変なことさえ起こさなければ問題ありません」

結構茜先輩には警戒されていそうだな・・・。

拒否できそうもないしここは一発気合いを入れて塗るしかないようだな


「わかったよ。最初はどっちから塗る?」

「瑞穂から塗ってあげてください」

「じゃあ先行かせてもらうね~。お願いね空君」

俺は姉さんの傍に行き座ると近くにあったサンオイルを手につけた。


「姉さんどうすればいいのかな?」

「う~ん、とりあえず足のほうからお願いしようかな」

俺は姉さんが言った通りに足の方を少しずつオイルを塗り上げていった。


「あははっ!、空君くすぐったいよ~」

「あ、姉さん動かないでよ」


姉さんが動いてオイルを塗るのが難しかったがなんとか足の方はオイルを塗ることができた。


「次は背中お願いね~」

姉さんの指示通りに今度は背中の方にオイルを少しずつ塗っていった。

姉さんの肌ってこんなに柔らかいんだな。というより女性の肌って皆こんなものなんだろうか?



駄目だ!駄目だ!血は繋がってないといっても一応姉である姉さんにこんな風に考えては・・・。

危うく余計なことを考えてしまうところだった。


「姉さん終わったよ」

「うん、ありがと~。腕の方は自分でするから次は茜ちゃんをやってあげて」

「了解。茜先輩いいですか?」

「はい、お願いします。どうやら意外とうまくできていたようなので瑞穂と同じようにお願いします」

そう言うと茜先輩は俺の近くに来て横になった。

今思えば茜先輩は姉さんに先にオイルをやらせて理由は俺を信じてなかったから様子見するためではなかったんだろうか?

茜先輩ならありえる・・・。


「朝倉君どうしたんですか?私は準備できてますよ」

「あ、すいません。それじゃあ足のほうから塗っていきますね」

今さっきと同じで足から塗っていくのだが、それにしても姉さんの時とは違ってなんかドキドキしてしまう。

というかオイルを塗っている俺の手が軽く震えてしまっている。


「あ、あの、朝倉君?少しこそばいのですが・・・」

「え?すいません!あ、でも足のほうはもう少しなんで」

普通に塗ってるつもりなんだけどやっぱり姉さんと一緒で足の方はこそばいようだ。

まぁ姉さんの時より大人しくしてくれているのでこっちとしては助かる。




「次は背中塗っていきますね」

足を塗り終えた俺は今度は茜先輩の背中の方へと移った。

それにしても茜先輩ってモデルのようにプロポーションいいよな。今日の水着は黄色いパンツタイプの水着だけどそのプロポーションもあってよく似会っている。



「あ、あの・・・朝倉君?ちょっと・・・そこまではやらなくてもいいんですけど?」

「え?」

茜先輩の声で俺は我にかえりオイルを塗っている手を見てみると俺の手は茜先輩の右の脇近くつまり胸近くのところまで手を進めていた。


「わぁっ!えっと、あのあの・・・すいません先輩!俺そんなつもりじゃ・・・」

「あ、あぅ・・・謝るのは後でいいですから手を動かさないでください!こそばいです!」

「そ、そうですよね!すいません」

なんか海に来て茜先輩には誤ってばっかりだな・・・。






「トラブルはありましたがちゃんとオイルを塗ってくれたので今回の事は目を瞑っておきます」

「はい、俺としては凄い助かります」

オイルを塗った後怒られると思ったが意外と茜先輩は許してくれた。


「これで茜ちゃんも空君も仲良しだね~」

「そういうことじゃないんだけど・・・」

この微妙な空気の中でも相変わらず姉さんは天然だ。




「3人ともここに居ましたか」

息を切らせながら菜穂先輩が俺たちのところへとやってきた。


「菜穂先輩どうしたんですか?」

「もうお昼になりましたのでそろそろ昼食をとろうと皆さんを誘いにきたんですよ」

菜穂先輩に言われてから浜辺にある時計を見てみるとすでに時刻は12時を過ぎていた。


「そうですね。じゃあ昼食にしましょうか。姉さんと茜先輩もいいよね?」

「うん、いいよ~」

「そうですね。ちょうどお腹もすいてきましたし」

「決まりですね!それでは他の皆さんも待っていますし海の家の方にいきましょー!」

そう言うと菜穂先輩は俺の手をとって走り出した。

俺は結構疲れてるというのに菜穂先輩はまだまだ元気そうだな・・・。




海の家に行くと既に他の皆が揃っており注文した料理を食べていた。


「空遅いよー」

「ごめんごめん。それにしてもお腹ぺこぺこだよ」

後から来た俺たちは渚達がとっておいてくれた席に座って注文をとった。


「それよりも部長。あの後は無事泳げるようになった?」

「はい。渚さんが優しく教えてくれたおかげでなんとか少しだけなら・・・。今度は空さんにも見てほしいです」

「少しでも泳げるようになったなら上等だよ。是非後で見せてもらうね」

「空君私たちの事も忘れないでよー」

「そうですよ空君!今度は私たちとビーチバレーです!」

「朝倉先輩私とチーム組みましょう」

「あはは・・・そうだな」

円香に菜穂先輩それに美琴とビーチバレーか。これは午後からも疲れそうだな。


「フフ、朝倉モテモテね」

「別にそういうわけじゃないんだけど・・・。ていうかお前午前中はどこに居たんだよ?」

「朝倉私の事知りたい?」

「いや、やっぱり知らなくていい」

「フフ、本当は知りたいくせに」

こいつの場合絶対なにか見返りを求めてくるはずだ。



そんなわけで昼食は皆で雑談をしながら昼食を食べた。


食べた後は昼食中話していた通りまずは渚とともに部長が泳げるようになった様子を見にいった。

部長が言った通りバタ足で10mほどしかいけなかったけど少しでも泳げるようになった部長が俺にとっては嬉しかった。喜んでいる俺の隣で渚がない胸をはって偉そうに言っていたのは気にしない。


次に円香、菜穂先輩、美琴それに茜先輩と姉さんを加えてビーチバレーをした。

俺は美琴と菜穂先輩というハイテンションな二人組のチームに入ってしまったおかげで試合の途中から半端なく体が悲鳴をあげていた。

それとは逆にこの2人は終始元気なままだった。それと向こうのチームの3人も元気そうだった。

女性って疲れを知らないのかな?


ちなみに試合の方はギリギリのところで負けてしまった。





こんな感じで午後はやはり疲れるという結果になってしまったけどそれでも楽しかったといえば楽しかった。

それにしても水無月は海でなにをしていたんだろうか?


「さてと、皆そろそろ旅館に戻ろうか」

時刻は既に17時になるところだった。昼にはたくさん居た人たちも少なくなってきていた。


「そうですね。それでは皆さん戻りましょうか。菜穂先輩は伯父さんの家に行くんでしたっけ?」

「いえいえ!せっかくですし私も皆さんが泊まっている旅館で泊まろうと思います!」

「え、でも伯父さんの家はいいんですか?」

「伯父さんには既に電話をしましたし大丈夫です。それにこちらの方にはしばらく居ますし。だから朝倉君今日は1日一緒ですよ!」

「はは、そうですか・・・」

まさかここまで先輩が準備していたなんて。うまく笑えない・・・・。


「それでは旅館の方へいきましょー」



旅館までの距離は短いのですぐに旅館へと着き各自自分の部屋へと戻って着替えることにした。

俺は水着から服へと着替えると疲れがたまっていたので畳のところで横になった。海では色々あったからなぁ・・・。


「朝倉様、ちょっとよろしいでしょうか?」

少し寝ようかと目を瞑ろうとしたときノックをしてから女将さんと思われる人の声が聞こえてきた。


「大丈夫ですよ。どうぞ」

返事をすると女将さんが一礼をして入って来た。


「どうしたんですか?」

「お休みだったところすいません。先ほど朝倉さまの知り合いという方が訪ねて来たのですが」

「知り合い?」

「はい。今下のロビーのところでお待ちしております」

知り合いと言われても全然思いつかない。しかも旅館まで尋ねてくる知り合いとか居るだろうか?


「とにかく行ってみます。わざわざすいません」

「いえ。では私がご案内いたしますね」


知り合いは全然思い浮かばないけどとりあえず女将さんに案内してもらってロビーの方に行ってみた。




ロビーの方に着くとそこには考えられない人物が椅子に座っていた。


「おぉ!空!」

「相馬!お前なんでここに居るんだよ!?」

知り合いという人物は大きな荷物を背負った相馬だった。


「なんでだって?それは皆の水着を見るために決まってるだろう!?」

「はぁ?」

「ここに来るまでは大変だったぜ・・・。まさかこの暑い中歩いてくることになろうとはな。空!何故バスにお前達が乗っているときに外に居た俺の声にこたえなかった!?」

そういえばバス乗っているとき何か聞こえたとは思ったけど相馬の声だったのか。

わざわざ歩いて来なくても次のバス待てばよかったのに・・・。


「外の声とか聞こえるはずないじゃないか。というかなんでお前俺達が海に行くこと知ってたんだよ?」

「水無月が他の皆に海に誘っているところをたまたま見かけてな。俺もさすがに誘われるだろうと期待していたがまさか誘われなかったとは・・・。だが誘っているときの喋っている内容を覚えていたから俺はここまで来れたというわけさ!」

「でもバスには乗れなかったじゃん」

「ふっ、俺もたまには寝坊ぐらいするさ・・・。だが俺は女性陣の水着見たさのためにここまで歩いて来たんだ!どうだたまげただろう空!?」

違う意味でたまげるけど・・・これはさすがにあきれるな。


「あのさ相馬ちょっと言いにくいことなんだけど」

「なんだ?俺の水着姿が見たいのか?」

別に俺はそんなものは見たくもない。そんなことよりも少しかわいそうだけ言ってやらないといけない・・・。


「もう海行って帰って来たところなんだけど・・・」

「そんなのわかってるに決まってるじゃないか!だが明日があるだろう。俺はその時ゆっくり堪能するさ!!ハハハ!」

「明日はもう海行かないんだ・・・」

「は?」

そう、俺たちの予定としては今日1日中海で遊んどいて明日はゆっくり昼食を食べて帰るという予定にしていたのだ。


「ちょっと待て何を言っているんだ空?お前だって皆の水着姿みたいだろう?それにお前もまだ遊び足りないだろう?」

皆の水着は今日1日中いいぐらい見せてもらったし遊びも疲れるほど遊んだ。だから俺としては後は旅館でゆっくりしたい。


「すまん。決まってることだから俺はなんとも言えん」

「待て待て待て!だったら俺は何故ここに来た!何のために俺はここまで歩いてきたというのだ!What!?」

相馬の気持ちは痛いほどわかるが、俺としてはなにもできない。というよりこいつが勝手に歩いてきたわけだし。

相馬は疲れているだろうに俺の前でジタバタしながらえらく取り乱していた。


「あら、榎本じゃない?なんでアンタがここに居るのかしら?」

相馬の対応に困っているとロビーの方に水着から着替えシャツにスカートと黒系で統一されたラフな格好をした水無月がやってきた。


「水無月、貴様!よくも俺を海に誘わなかったな!」

「フフ、何かいけないかしら?」

「ダメに決まってるだろう!俺が居ないと女性陣も寂しがるだろう!?」

「頭おかしいんじゃないの?アナタが居なくても私たちは楽しくやってたわよ。ねぇ朝倉?」

「えっと、その、まぁそうだな・・・」

「ぐっ・・・。それはいいとして水無月!明日もお前達海行くよな?まだまだ泳ぎたいよな!?」

「朝倉に聞かなかったのかしら?私たちは明日は旅館でゆっくりしてからそのまま帰るわよ」

「ぐはぁっ!!そんなバカな・・・」

そう言うと相馬は崩れるように床に手をついて倒れた。


「フフ、こんなバカは放っておいて。朝倉私たちは少し休んだ後温泉入るけどあなたはどうするの?」

「そうだな。俺もそうしようかな」

「わかったわ。じゃあ私は部屋に戻ってるわね」

そういえば小さいけどここには温泉があったな。大浴場って言ったほうがいいのかな?



「ふふふ・・・」

急に倒れている相馬が笑い始めた。


「なんだよ相馬。不気味だぞ」

「朝倉。どうやら神はまだ俺を見捨てていなかったようだ!」

「はぁ?何言ってるんだよ」

「とにかく神は俺の味方だということさ。そんなことより風呂の時間まで作戦会議だ。まずは部屋に行くぞ」

相馬が何を言っているのかはわからなかったが俺たちは自分の部屋へと戻って行った。

それはそうといつの間にか相馬は俺と一緒の部屋で泊まるということで女将さんに話をつけていた。



部屋に戻ると相馬は持ってきた荷物を置いてから畳に座った。


「さて、朝倉今回は絶対にミスらないようにするぞ」

「ミス?お前なんのこと言ってるんだ?」

「何って温泉に決まってるだろう!?そして俺の唯一残された楽しみ!」

「お前ってそんなに温泉好きだったのか?」

「どうやら本当にわかっていないようだな。勿論俺は温泉は好きさ。だがな、それには理由がちゃんとあるのさ」

相馬がそこまで温泉が好きだったなんて。だけど理由ってなんだろうか?

前回ゴールデンウィークの時に行った温泉ではそんなこと言わなかったはずなんだけど・・・。

あの時は確か・・・温泉に入って体洗って、ゆっくりお湯につかってからそれで・・・。


「あ・・・」

そういえばあの時にできた嫌な思い出を思い出した。


「どうやら思い出したようだな」

「まさかお前のぞきをするとか言わないよな?」

そう、前回のゴールデンウィークの時に相馬は女湯をのぞいたのだ。

まぁ俺もこいつに無理やり一緒にのぞかされたのだけど・・・。


「するに決まってるだろう!むしろやらない方がおかしいぞ!」

「待て待て!やる方がおかしいに決まってるだろ!?」

「何を言うか!?のぞきは男のロマン!俺は必ず成功させるぞ」

相馬の言っていることがいまいち理解できない・・・。


「それに俺は今日女性陣の水着姿を見ることができなかった!俺は海に来たのに何もしないで帰るわけにはいかない!だから俺はなんとしてもやり遂げる!」

やばい、相馬の奴また暴走し始めた。こうなったら止めることは難しいだろう。



「よし、女性陣は温泉に行くとき必ず声を掛けていくはずだ。それと同時に俺たちも温泉に行くぞ」

俺は後の時間ゆっくり過ごしたかっただけなのに。

まさか相馬が来てこんなことになるとは。ほんと疲れる・・・。




それからしばらくして相馬の予想通り部屋に姉さんが来て、温泉へ入ると俺たちに声を掛けていった。


「それでは出陣じゃ!空!」

完全にこいつやる気だ・・・。ここは皆のためにも止めてあげたいのだがどうしようもできない。





脱衣所の方に着くと相馬は驚異の速さで服を脱いで温泉もとい大浴場へと入って行った。

皆の水着が見えないと絶望していた時の相馬とえらい違いだな・・・。

そう思いながらも俺は重い体を動かし服を脱いで大浴場へと入って行った。


大浴場の中へ入ると相馬は女子風呂に繋がっている壁に耳をつけていた。


「空!女性陣の声が聞こえるぞ!お前も早く来い!」

やっぱりそういうことだろうと思ったが別に壁に耳をつけなくても女性陣の声は聞こえてきていた。

そしてそのほかにもこの旅館に泊まっているであろう人たちの声もしていた。ちなみに男風呂の方には俺と相馬以外の人はいない。


俺は相馬のことは放っておいて先に体を洗うことにした。

今日は疲れたからいつもよりもお湯が気持ちよく感じる・・・。


俺が体を洗っている間も相馬は壁に耳をつけて何やら興奮をしているようだった。


体と頭を一通り洗い終わると広いスペースの風呂につかったが適度な温度のお湯だったので本当に気持ちがいい。



「おぃ、相馬もそんなことしてないで早く入れよ」

「そんなこととはなんだ!?この壁を上れば桃源郷が見えるんだぞ!?」

確かに相馬の言っている通り男風呂と女風呂を繋ぐ壁の一番上のところは少し隙間が空いてある。そこを上ったらあっち側の女子風呂が見えるがさすがにこの高い壁を上るのは無理だろう。というか上っている途中落ちたりしたらたまらない・・・。


「よし、行くか!!」

俺の思っていることの裏腹にどうやら相馬は上る決意をしたようだ。


「相馬辞めとけって!!落ちたら危ないぞ!?」

「ふん!危険は承知の上だ!」

そう言うと相馬は風呂場にある洗面器と椅子をあるだけ集めてそれをひとつずつ上に重ねていった。

たぶん、こいつは洗面器といすを重ねたやつの上に乗ってのぞくつもりだろう・・・。

女子風呂をのぞくだけにここまでするこいつはある意味本物の「漢」なのかもしれない。



「もう少し、桃源郷までもう少しなんだ!」

なんだろう、ここまでやってるとなんだか少しだけ応援をしてやりたくもなってくる。

相馬は必死に叫びながらもひとつずつ洗面器といすを上に重ねていった。



何分かかったかわからないがついに上の隙間までの高さまでいすと洗面器を積み重ねることができたようだ。


「空、俺は今から最高の物を目にしてくる。だから俺の土産話を楽しみにしてろ!」

いつもより相馬が輝いて見えるような気もしないが相馬はそう言って一番上に積み上げてある小さな洗面器の上にバランスを取りながら乗り始めた。


この高さから落ちたら怪我するだろうなぁ・・・。


「ビバ桃源郷ー!!」

そして相馬は洗面器の上に立った・・・と思ったのだが。


「ごふぁっ!!」

突如相馬の悲痛な叫び声が大浴場に響いた。どうやら女風呂から洗面器が吹っ飛んできてそれに相馬が当たったようだ。

叫び声と同時に相馬は上から落下してきもちろん相馬が時間をかけて積み重ねた洗面器といすのタワーは崩れていった。


「大丈夫か相馬!?」

「大丈夫じゃない・・・」

まぁ先に予想はしていたけどあんな高さから落ちてきたら普通は大丈夫じゃないよな。


「それにしてもなんで女風呂から洗面器が・・・」


「空くーん。榎本君はどうなったの~?」

突如向こうから響きのいい姉さんの声が聞こえてきた。


「いや、死んでる」

「フフ、当然の報いね」

「のぞきなんて最低です榎本先輩!」


女風呂から女性陣が怒っているような声が聞こえてくる。


「もしかして相馬がしようとしていたこと皆知ってたのか?」

「当たり前です!あんなに大きな声で叫んでたらこっちまで嫌でも聞こえてきます!」

それはそうか。相馬いつの間にか興奮してきて声がでかくなってたもんな。

男風呂に女性陣の声が聞こえるように女風呂にも男風呂の声聞こえるよな・・・。

そこんところすっかり忘れていた。


「あのさ皆。ひとつだけ言っておくけど俺は無関係だからな」

「わかっていますよ。空君は天文部の部員なんですから信じていますよ」

信じてもらえるのは嬉しいのだけど部長が言っていることはやっぱり何かズレている。


「それじゃあ俺は先出てるから・・・」

俺は女風呂の方にそう告げて風呂を出ることにした。

相馬はここに残しておくのも可哀そうだし脱衣所までは連れて行ってやるか・・・。

俺は倒れてほとんど意識のない相馬をひきずっていくことにした。


着替えは持ってきたシャツとジャージに着替えてその後にひきずってきた相馬を長椅子に置いてから俺は脱衣所を出て行った。



「あれ、水無月も出てたのか」

「ええ。私はそこまで長風呂じゃないから。フフ、だけど湯上りの私はどうかしら?」

「どうって言われてもな・・・」

「色気がムンムンとかそういうことよ」

「悪いがなんとも思わん」

相手が水無月ということもあり俺としては正直に何も思わなかった。


「フフ、照れちゃって」

「別に照れてるわけじゃないんだけど。それより俺は先に飯食べる部屋行くけどお前はどうする?」

「そうね。待つのも長くなりそうだし先に行ってましょうか」

そう言うと俺と水無月は晩飯を食べる部屋へと向かっていった。


安い旅館だからといってもグループで食べる部屋は用意をされていた。他のお客さんのグループも何組か部屋を使っていた。

部屋の中に入ると部屋の中は広く俺達の人数分の料理が女将さんたちによって運ばれていた。


しばらく水無月と談笑しながら待っていると他の皆たちがぞろぞろと部屋に入って来た。

それにしても皆の入浴時間って結構長いんだな・・・。


「それじゃあ皆も揃ったし食べるとするか」

「そうですね。皆さん号令といきましょうか」

俺の横に座っている菜穂先輩が号令をするらしいがやはりここは生徒会長の出番というとこだろう。


「それでは皆さん楽しい晩御飯としましょう。乾杯です」

「「乾杯ーー!」」

菜穂先輩が号令をすると皆は一斉に号令をしコップに入っているジュースで乾杯をした。



テーブルに並んでいる料理に箸を伸ばし料理を一品ずつ食べていったがどれもおいしかった。

特になんの魚かわからないけど刺身がおいしい。海でとれたものなのかな?


「それにしても榎本君には困ったものですねぇ」

「本当ですね。菜穂先輩これは生徒会役員として放っておいていいことではありませんよ」

どうやら相馬の奴も生徒会のふたりに目をつけられたっぽいな。まぁ相馬の場合は自業自得だよな。


「そういえば空。榎本君のことはどうしたの?」

「完全にバテてたから脱衣所の方に置いてきた]

そろそろ目を覚ましてもいい頃だけど、あの高さから落ちたんだし結構ダメージ大きいよな。


「榎本君の事はもうどうでもいいですね。そんなことより朝倉君。そろそろ生徒会に入ってくれる決意はできましたか?」

相馬の存在って最近になってかなりひどくなってるよな。


「いや、前にも言った通り俺天文部に入ってて忙しいですし・・・」

「そうです!空さんは既に天文部の部員なんですよ!」

「生徒会は部活との掛け持ちは全然オッケーです!そうですよね茜ちゃん!?」

「確かにそうですけど。本当に朝倉君を生徒会に入れる気ですか?」

「当たり前です!朝倉君なら私のことをしっかりと手取り足取りサポートしてくれるはずです!」

「だから空さんは天文部で忙しいんですって!」

珍しく部長が熱くなり菜穂先輩と言い争いを始めたのだけれど俺は間に入れそうにないな。

ここは逃げるが勝ちだ。


俺は残りの料理を一気に食べてこそこそと部屋を出て行った。



桜の間へ戻ったがどうやら相馬は部屋には戻ってきてないようだ。まだ目を覚ましていないのだろう。

部屋に帰って来たのはいいんだけど特にすることもない。

ちょっと何もすることもないし外に出てみるか。




外に出てみると昼間の暑さなんて嘘だと思うぐらい涼しかった。



「先輩何してるんですか?」

玄関のところから声がしたので振り返ってみるとそこに居たのは美琴だった。

美琴はサンダルを履いて俺のところまでやってきた。


「特になにもしてないよ。なんとなく外に来てみただけさ。そういう美琴は?」

「朝倉先輩を見かけたのでついてきちゃいました」

美琴はいつもと変わらずニコニコしながら話していた。


「そういえば美琴とふたりで居ることってこれが始めてだな」

「そうですよ。私今凄いドキドキしてるんですよ」

美琴を見る限りそんな事ないと思うんだけどな・・・。


「そうだ!先輩、こんな機会滅多にないので少しお話させてもらってもいいですか?」

「別にいいけど」

「ありがとうございます。それでは・・・」

美琴は少しだけ息を吸って少しずつ喋り始めた。


「中等部の1年生の頃友達とよく食堂の方にお昼ご飯を食べに行っていたんですよ。あ、それは今もなんですけどね」

美琴に友達が多いことは俺もよく知っていた。友達と楽しそうに喋っているときをよく見かけるし食堂で何回も会ったことがある。

美琴と出会ってからは俺達とも昼食をとることも多くなってきていたが。


「その1年生の時のお昼御飯を取る前に私財布をなくして困っていたんですよ。それは相当困っていました。財布をなくしたことはもちろん友達を待たせちゃうことに対しても焦っていました」

美琴は優しいからやっぱり友達のことまでも考えてしまうんだろう。


「そんな私が困って財布を捜している時でした。ひとりの男性が私に声をかけてきてくれたんです。その男性は見ず知らずの私に「どうしたの?何か探し物?」と聞いて来たんです。私は知らない人に話すかどうか迷ったんですけど不思議とその男性に財布をなくしたことを言いました。その事を伝えたらその男性は一緒に探すと言って私と一緒に探してくれたんです」

今時そんな優しい男の子って居るんだな。


「しばらく男性と財布を探したんですけど結局私の財布は見つかりませんでした。けど一緒に探してくれた男性は私にお腹が減ってるだろうからと言って自分の持っているパンをわけてくれたんです。私は受け取れないから返そうとしましたがその男性は無理やり私にパンを押しつけて走っていっちゃいました」

「本当に優しい男の子だな・・・」

「はい、とってもいい人です!その時財布をなくしたことは私にとって物凄い痛いことでしたけどその男性に出会えたことは私にとってとても最高なことでした!それにその人が私にとって初恋の人ですし」

「初恋か。その男の子は今も学園に居るんだろ?」

「当たり前ですよ。もしかして朝倉先輩気づいてないのですか?」

「え、気づいてないって?」

「やっぱり忘れているんですね」

美琴はやれやれといった呆れた感じで再び俺の顔を見ながら口を開いた。


「その男性は朝倉先輩なんですよ?」

美琴が言ったことに俺は一瞬固まってしまった。今さっきまで俺が過大評価していた優しい男の子が俺?


「それって本当?」

「本当ですよ。だってその出会いがあったからこそこうやって朝倉先輩の事を好きになって告白だってしたんですから」

確かに4月に美琴は保健室で俺に告白をしてきたけどその前に美琴に出会ってた記憶というのが全くない。


「けれど朝倉先輩はあの出会った後に廊下とかで私の顔を見ても何も言ってくれなかったし私の事忘れているんだなとは思ってましたけど・・・。そのせいもあってなかなか朝倉先輩に喋れなくて私は朝倉先輩の追っかけになったんです!」

追っかけは別に誇れることではないんだけどな・・・。


「ごめん美琴。俺全然そんなことがあったなんて思い出せないや」

「いいんです。私がその事を覚えているだけで。それに今はこうやって朝倉先輩と喋れているんですしね」

そう言うと美琴は今日何回目かの俺の手をとり握ってきた。


「この事を喋ったからには今よりももっと積極的に攻めていきますよ朝倉先輩!」

「あはは・・・ほどほどにね」

美琴と俺にこんな出会いがあったなんて驚きだったけどなんで美琴が俺の事を好きになったのかが知れて本当によかった。

というか今さっきまで自分に過大評価していた自分が恥ずかしくなってきた・・・。





美琴としばらく外で喋った後俺は桜の間へと戻って来た。


「相馬目覚ましたんだね」

部屋に戻ると相馬が布団の上で横になっていた。


「空、俺は何故こんな仕打ちをうけなければならないんだ・・・」

「まぁ、普通に考えるとお前が悪いよな」

相馬は体がまだ痛いのかうまく体を動かせないでいた。




「空君、少しいいかな?」

相馬と会話をしているとドアを開けて円香が部屋にやってきた。


「別にいいけど。どうしたんだ?」

「今から海で皆で花火することになったんだけど空君もよかったら一緒に行こうよ」

「花火か。俺は全然いいんだけど、こいつがな・・・」

俺は円香にわかるように相馬に向けて指を指した。


「榎本君は別にいいよ。ほら、空君いこ!」

「あ、ああ。それじゃあ相馬俺たち行ってくるけどその間留守番よろしく」

「くっ、空ばっかりいい思いを・・・。怪我さえしてなけれべ俺だって・・・」




円香と海まで来ると砂浜の方で皆がすでに花火の準備をしていた。


「空遅いよー」

「ごめんごめん。それにしても花火なんて持ってきてたんだね」

「フフ、常に用意周到よ。どう私の事見直したでしょ?」

どうやら花火を持ってきていたのは水無月のようだった。

大量に花火を買ってくれたのは感謝するけど別に見直すことはない。



「それじゃー皆さん始めますよ。各自花火を持ってください」

菜穂先輩が言った通り花火を取ろうとしたがたくさんの種類の花火があってどれを取ろうか迷ってしまう。


「フフ、朝倉どれにするか迷っているわね」

「ああ。それにしてもこんなによく買ってきたな」

「楽しむにはこれぐらいは必要よ。それよりそんなに迷っているならこれから行きましょうか」

そう言うと水無月は何の花火をとったかはわからないが取った花火を地面に置いてライターで火をつけた。


「お前なんの花火とったんだ?」

「朝倉、あまり近づかないほうがいいわよ」


水無月が置いた花火の近くに行った途端地面に置いていた花火が勢いよく音を響かせ空に向かって放たれた。


空を見上げると少しだけ間が空いてから甲高い爆発音を出して花火は消えていった。


「ちょっと水無月さん!ロケット花火はもう少し後からする予定だったんですよ!なんで先にやっちゃったんですか!?」

「フフ、私の場合楽しみは先にやる方なのよ」

水無月は菜穂先輩が怒っているのを軽くあしらって次の花火を手に取りまたしても火をつけた。


水無月が用意した次の花火は急に地面でぐるぐると廻りはじめた。

「もしかしてこれって、ねずみ花火か」

「正解」

ねずみ花火はしばらく廻り続けてからある方向へと走り出した。


「どうしてこっちに来るんですか!?」

ねずみ花火が向かった方向は茜先輩のもとで茜先輩は悲鳴をあげながら逃げ始めたが不運にもねずみ花火に追い掛け回されている。



「フフ、次はどの花火にいこうかしら」

この後も水無月は適当に花火に火をつけていくのだった。






「はぁ、水無月には困ったもんだな」

「そうだね。でも面白かったじゃない」

しばらくして、だいぶ落ち着いてから俺と渚は線香花火を持って眺めていた。


「ねぇ空。今日は海どうだった?」

「そうだなぁ。とりあえず疲れたよ」

「なによそれ~」

「あはは、冗談だよ。まぁ疲れたのもあるけど、やっぱり楽しかったな。海はもちろんこうやって花火もしてさ。ほんと有意義な1日を過ごせたよ」

この1日でだいぶ皆とも仲良くなれた気がするし今日は楽しく過ごせることができた。


「そっかぁ。私も今日は楽しかったよ。本当に海に来てよかったよ」

どうらやら同じく渚も今日1日楽しく過ごせたようだった。


「なぁ、渚」

「ん、何?」

「海に誘ってくれてありがとうな」

「え、ちょ、ちょっと急になによ・・・」

「あの時テストに負けたおかげって言うのもあれだけどこうやって海を楽しく過ごせることができたからよかったかなぁって思ってさ。だからあの時海に誘ってくれてありがとう」

最初は少しめんどくさいと思っていたけど今回は本当に海に来てよかったと俺は思っていた。


「べ、別に私はそんなの全然いいけど・・・」

何故か渚は顔を赤くして俯いた。


「お前、顔赤いけど大丈夫か?」

俺は気になって渚の顔をのぞいてみたが何故か今さっきよりも渚の顔は顔を赤くなっていた。


「ちょ、ちょっと急に何してるのよ!」

「いや、お前の顔がだいぶ赤いから気になってさ」

渚は驚いたのか、俺から少しだけ離れていった。


「もう!だから大丈夫だって!」

「それならいいんだけど・・・」

「それよりも!空!今度のテストもがんばりなさいよ」

「わかってるって。今度こそお前に勝ってみせるさ」

「言ってくれるね。だったら次のテスト期待してるからね!」

次こそは渚には勝ってみせる。俺はまた再び心にそう誓うのだった。







そして次の日の朝。

俺たち一行は午前中はゆっくりしてから午後からバスに乗って桜川に戻って行った。

バスの中では行きの時と違って皆はまだ疲れが残っていたのかぐっすりと眠っていた。


海で過ごした1泊2日は疲れもあったけど本当に楽しいものだった。。

それに今年の夏に海に来れたことがよかった。



また来年もこのメンバーで来たいな。


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