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35話「出発の準備は完了! クヴェルたんからの贈り物」





三日後の早朝。


初日は落ち込んだり、ちょっとだけクヴェルとイチャイチャしたりで、作業が進まなかった。


だけど残りの二日間、めちゃくちゃ頑張った!


早朝から深夜まで魔石にルーン文字を彫った!


そしてついに昨日、千個目の魔石を無事に彫り終えた!


クヴェルがルーンを彫った魔石が九百七十個。私がルーンを彫った魔石が三十個……。 


ほとんどクヴェルたんに彫ってもらったけど、私だって頑張ったし、少しは彫るのが早くなったんだから!


クヴェルたんだって「上手だよ」「アデリナは上達が早いね」って褒めてくれたんだから。


時々、私の魔力が切れそうになってクヴェルたんに魔力の補給をしてもらった……。補給方法は……ゴニョゴニョ。


と、とにかく……! 魔石の準備は整ったわ!

 完成した魔石はクヴェルたんがアイテムボックスにしまった。


国王がお弁当とお菓子とジュース、それと大量の保存食と水を用意してくれたので、それもアイテムボックスにしまった。


大量の保存食は、途中で王太子を見つけたら渡してほしいという意味で託されたのだと思う。


ミドガルズオルムの浄化の前に、リスベルンの王太子テオドリック様と合流して、彼を保護しないとね!


そう言えばテオドリック様の部下が五十人ほど一緒なんだったわ。


やることが多いけど、頑張りましょう! この国の平和、いえ、この大陸の平和は私達の肩にかかっているんだから!




◇◇◇◇◇




私達はいつもの旅の衣装に着替えて、お城の屋上に向かった。


昇ったばかりの朝日が横から射してきて、眩しかった。


人払いをしてあるので屋上には私とクヴェルたんしかいない。


クヴェルたんは今日も子供の姿だ。クヴェルたんはこの国の人達の前では子供の姿で通すようだ。


クヴェルたんが大人の姿に戻るのは、寝室で私と二人きりになったときだけ。


大人の姿のクヴェルたんとは、適度にイチャイチャを……ごほん、ごほん! 出発の前に考えることではなかったわ。


「クヴェルたん、私達は北の湿原に向かうのよね?

 どうして屋上に来たの?」


てっきり城門へ向かうものだと思っていた。


「馬車やカヌーより早く目的地に着く方法があるんだよ。

 それには屋上から行くのが最適なんだ」


「馬車やカヌーより早い移動手段……?」


そんな方法があるのかしら?


「その前に、アデリナに渡しておきたい物があるんだ。

 手を出してくれる?」


「うん」


クヴェルたんに言われるままに掌を上にして彼の前で待機した。


クヴェルたんは腰に付けた袋から何かを取り出していた。


「これをアデリナにプレゼントしたくて」


クヴェルたんは頬を少し紅潮させ、少し伏し目がちに私の手に何かを乗せた。


ひんやりとした感覚があり、じゃらっという音がした。


「クヴェルたん、これって……?」


「アデリナの為に作ったんだ。

 お守りにして」


クヴェルたんは優しい目で私を見つめ、少しはにかんだ。

 

(ラグ)魔除け(ソーン)が彫られた魔石が輪っかになっていた。


大きな輪っかがネックレスで、小さな輪っかがブレスレットだろう。


私に内緒でこれを作ってたの? 胸がキューンと音を立てる。彼に大切にされているのが伝わってきた。


「これから挑む相手は強敵だ。

 だからアデリナにはそれで自分の身を守ってほしいんだ」


クヴェルたんは私を真っ直ぐに見つめ、真剣な表情でそう囁いた。


「うん、ありがとう」


クヴェルたんはワームやオークが束になってかかっても相手にならないくらい強い。


そのクヴェルたんが「強敵」と言うくらいだから、ミドガルズオルムは油断ならない相手なのだろう。

 

私は改めて気を引き締めた。


「クヴェルたんが着けてくれる?」


「うん、いいよ」


私が少し屈むと、クヴェルたんがネックレスを着けてくれた。


腕にもブレスレットを着けてくれた。


ネックレスとブレスレットからクヴェルたんの思いが伝わってきた。


ミドガルズオルムの元に向かうのは本当は凄く怖かった。


だけど、ネックレスとブレスレットを身に着けたら不安と緊張が解けてなくなったわ。


「クヴェルたんからのプレゼントのお陰で勇気が湧いてきたよ!

 今なら『ミドガルズオルムでも何でもかかってこい!』って言えちゃう」


「それは頼もしいね」


クヴェルは眉尻を下げ、困ったように笑う。


「クヴェルたんはお守りがなくても平気なの?」


ブレスレットかネックレス、どちらか彼に渡した方が……。


「僕にはこれがあるから平気」


クヴェルたんがポケットから取り出したのは、下手っぴな(ラグ)のルーンが彫られた魔石だった。


それは、ギルドで私が最初に彫った魔石……!


「クヴェルたん、悪いことは言わないから今からでも別の魔石に変えた方が……」


そんな不格好なルーンにお守りとしての効果があるのか心配になってしまう。


「これがいいの。

 なんたって、この魔石にはアデリナの愛が籠もっているからね!」


クヴェルたんはいたずらっぽい表情でウィンクをした。


可愛い! ショタ美少年の目配せ最高か……!! 危うく昇天するところだったわ!


お守りについてとやかく言うのは止めよう。クヴェルたんならきっと大丈夫。


そう信じましょう。





読んで下さりありがとうございます。

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